視力の基準は意外にゆるい
「戦闘機に乗れないだろうか」
「またなんか言い出したこのおっさん」
安達家のリビングにて。
スマホを見ながらなんか言い出したグライオスさんと、このおっさんの好奇心に終わりはないのかと呆れてるカガトくん。
ちなみに作者は自衛隊の試験を受ける際に戦闘機のパイロットも視野に入れ航空自衛隊の試験も受けようかと軽く調べましたが、パイロット候補の年齢制限を越えていたため諦めました。
なお就職難な時代だったため、陸自すら定員を越える入隊志望者が集まっており、倍率が数倍になっていた空への入隊は元から難しかった模様。
陸の下っ端新隊員にすら「おまえなんで幹部候補じゃなくてこっち来ちゃったの?」という大卒がごろごろ居たので、マジで就職先がなかったことが伺い知れます。
「ほう。戦闘機ですか」
一方のん気に緑茶すすりながら言う久々の登場な家主の安達くん。
最近召喚も召喚返しもないし情勢も安定してるからね。仕方ないね。
「総理大臣の権限でなんとかならんかアダチ?」
「いやそんな無茶言われても安達さんも困るでしょ。そもそもイベントとかの自衛隊車の体験搭乗とはわけが違うんだから、一般人が戦闘機に乗れるわけが……」
「乗れますよ」
「乗れるの!?」
自衛隊最高指揮官のまさかの答えに普通にビックリするカガトくん。
大丈夫? ゲロ吐いたりしない?
「広報活動として有効と認められる場合などは一般人の搭乗も可能ですよ。たまに芸能人の方などが番組の企画で乗ったりしていますね」
「なるほど。つまりわしを戦闘機に乗せることにより広報効果があると認められればいいのだな!」
「どう考えてもあるでしょうよそりゃ」
異世界人な上に元皇帝様だからね。
広報効果抜群だね。
「ただし輸送機などならともかく、戦闘機となると体への負担も大きいですから。試験に合格した上で健康な方に限られますね」
「ふっ、わしの健康に問題があると思うてか」
むしろ万が一墜落して脱出できなくても普通に生きてそう。
いやそこは死んどこうよ人として。
「では連絡を入れておきましょうか。ちょっと取材などがうるさいかもしれませんが、そこは我慢してください」
「おう。わしの勇姿を全国のお茶の間に届けるためには仕方ないな」
「なんで報道されることにそんな乗り気なのこの人」
元皇帝だからね。注目されるのには慣れっこだからね。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「よくアニメとかで新型のロボットが敵陣営に奪われたりするけど、アレって戦闘機とかで起きる可能性はあるの?」
「ほぼないですね」
まさか表には出ないだけで実際にはアニメみたいな攻防が繰り広げられているのではと妄想するアマテラス様と、んなことあるわけねえだろとぶった切るツクヨミ様。
ただし戦場で鹵獲された武器や兵器をそのまま使うことは国によっては割とあるそうです。
「えーなんで? やっぱ鍵とかあけるの難しいの?」
「戦闘機には車などのような鍵はありませんよ」
「じゃあ警備が厳しいとか?」
「それもありますが、そもそも戦闘機に限らず航空機の類は機種ごとに操作感どころか操作そのものが違ったりするんですよ。それどころか起動方法すら違う場合もあるので、搭乗訓練をしていない機体を初見で動かすこと自体が難しいです」
「あー、そりゃどれでも同じような操縦なら、機種転換の訓練とか必要ないもんね」
つまり新型のロボットを奪取して勢いよく逃げようとした瞬間ずっこける可能性が……?
「まあ創作の人型ロボットなどは、姿勢制御などを補佐するシステムがあるでしょうし、操縦そのものが簡略化されている可能性もありますが。どちらにせよ育成に時間と金がかかるパイロットを潜入させて機体を奪うという作戦は、リスクが高すぎるかと」
「まあ創作だとろくに訓練してない少年でもいきなり実戦しちゃったりするしね」
ま、マニュアルを読んだから……。
ちなみに戦闘機のパイロットなどは単独行動をすることが多い上に高度な判断力が必要とされるため、基本的には幹部以上の階級になっています。
逆に言えば判断力の怪しい下っ端に単独行動や独自判断をさせたらアカンことになる可能性が高いのです。
「あー国境での対応とか下手すれば本当に戦争の引鉄になる判断を自分でしなきゃいけないもんね」
「毎日のように緊急発進しているので大変でしょうね」
ちなみに2023年度の自衛隊の緊急発進回数は669回で、2022年度の778回より100回以上少なくなっています。
少なくなっても多いな!?
「ええ……毎日どころか一日に何回も来てるじゃんそれ」
「まあ複数の方向から複数の国の機体が来ますからね」
なおその割合。
今日も日本は平和です。