むしろ打ち切り食らったのに何故この作品は続いているのか
「よく戦争が儲かるから商人が戦争を起こそうと暗躍してるっていう陰謀論ありますけど、ぶっちゃけ戦争で売れるものって限定的な上に、普段売れるものが売れないわ輸送が滞るわでむしろ損するんですよね」
「いきなり何の話だい」
フィッツガルドの帝都にて。
たまの休みなので喫茶店にて茶をしばいていたローマンさんと、当然のように同じ席に座り何か愚痴り始めたミィナさん。
まさかミィナさんは戦争が起きたら損をするので、戦争が起きないよう世界を裏で統一しようとしている……?
「いや魔界からの魔石の輸入がですね、ちょっと減らされちゃいそうなんですよね」
「ああ。この間うちの魔術師が『魔石の力を一時的に増幅させる!』とか言って、日本のコメディアニメみたいな大爆発起こしていたからね」
物的被害はともかく人的被害はギャグ補正でゼロになってそう。
そもそもこの作品で死人が出るという事態がまず想像できません。
死んでも黄泉でイザナミ様とだべってそう。
「アレのせいで魔石の管理体制と、兵器転用をしないという契約の遵守を疑問視されてしまったからね。そりゃ様子見のために減らされるだろう」
「すっごい他人事ですねローマンさん」
「私はもう骨はホムラに埋めるつもりだから」
仕事は真面目にやるけど愛国心は雀の涙ほども残ってないローマンさん。
割とホムラでも馬車馬のように働かされるフラグは立っているのですが、愛する人の国だから頑張れるのでしょう。多分。
「えーでも魔術師の管理くらいしっかりしてくださいよ。一応全員公務員なんでしょう」
「ふふ。確かにフィッツガルドでは魔術師はほぼ全員公務員だけれど、それは何故だか分かるかい?」
「え? 技術を独占するためじゃないんですか」
「首輪をつけてないと何やらかすか分からないからだよ」
「うわあ……」
つまり全力で監視してもやらかしたのが今回なので諦めろと遠回しに言うローマンさん。
カガト君が普通に生きてるだけでも評価が勝手に上がっていく原因がここに。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「え? 死の商人とか言われるし、兵器売ってるところは戦争で儲かるんじゃないの?」
「昔はどうだか知りませんが、少なくとも今は別に儲かりませんね」
戦争の裏に軍需企業がいるのはお約束ではないのかと首を傾げるアマテラス様と、いや別にそんな儲からねえしとぶっちゃげるツクヨミ様。
むしろ国相手の商売なので買い叩かれることも多く、アメリカの軍需企業すら「経営苦しいからもうやめたい」と言い出すくらいの罰ゲーム状態です。
「でも戦争になったら兵器がもっと必要になるから、しないよりは儲かるんじゃないの?」
「それはそれで軍需以外の企業が問題になるんですよ。軍需というのは経済全体で言えば弱小です。戦争になったら損をする他の大企業の面々が、戦争起そうとしているのを黙って見ていると思いますか」
むしろ袋叩き。
平和でなければ回らないものは多いのです。
「資本主義という場所で軍需企業は弱いんだね……」
「まあ政治家などと癒着していればあるいはとも言えますが、そのような癒着がまかり通る状態なら他の大企業の癒着力の方が強いでしょうし」
「癒着力て」
なんという嫌な力。
今日も高天原は平和です。