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ボーイ・ミーツ・ガール(30秒)


「ど、どこですかここ!? 誰ですか貴方たち!?」


 本日も紛糾していた国会に場違いな少女の声が響き渡ります。


 ――またか。


 いい加減議員たちも慣れてきました。


「えー、落ち着いてお嬢さん。私はこの日本国の総理大臣を務めております安達と申します。アマテラス様にお会いしませんでしたか?」


 いつの間にか議会のど真ん中に居たのは、ゆったりとした服を来た金髪の少女。

 その少女に、いつの間にか外務大臣から総理大臣にクラスチェンジした安達くんが、相変わらず腹の黒さの見えない紳士スマイルで話しかけます。

 前総理大臣は神様の無茶ぶりのせいで胃に穴が空いたとか言われていますが、真偽は定かではありません。


「あ、アマテラス様? い、いいえ」


 本当に事情が分かっていないらしく、少女はプルプルと首をふります。

 どうやらアマテラス様は前回の召喚返しで一歩進んだのに、今回は二歩下がったようです。


 ――アマテラス仕事しろ。


 議員たちの心が一つになりました。


「じつはかくかくじかじか」

「……」

「……お嬢さん?」


 安達くんの説明を聞いて少女は俯いて黙り込んでしまいます。


 ――またか。またなのか。


 議員たちは嫌な予感がしてきました。


「何か心当たりが?」

「えーと……魔物に襲われて追いつめられて、駄目もとで出鱈目な召喚陣を組んで召喚してみたんですけど、そしたら何故か男の人が出てきて……」


 どうやら今回の召喚は、少女のピンチを助ける所から始まるボーイ・ミーツ・ガールだったようです。

 しかし当のガールが召喚返しされては意味がありません。

 ボーイは誰とミーツすれば良いのでしょうか。


「って、総理!? 今のが本当なら残された日本人は魔物に襲われて……」


 重大な事に気付いた若手議員が叫ぶように言います。

 言われて見れば確かに。このままではボーイ・ミーツ・モンスター(死)です。

 異世界召喚を許した上に日本人死亡など、もうイザナミ様も激おこを通り越して激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム(神)です。


「あ、それなら大丈夫だと思います」


 しかしそんな議員たちの心配を、少女はあっさりと否定しました。


「召喚しちゃったの体格の良い男性だったんですけど『やだもう! 近寄るんじゃないわよこの変態!?』って叫びながら魔物たちを叩きのめしてましたから」

『……』


 どうやら召喚されたのはボーイではなくオネエだったようです。

 この世にオネエに適う者は居ないので、異世界でも無敵に生きていくことでしょう。


「あー、議長。とりあえず今後の対処と、この子の面倒はうちで見るので良いでしょうか」

「ああ、うん。まあ良いんじゃない。賛成の人起立」


 議長の言葉を聞いて、議員たちが一斉に立ち上がります。

 今この場には与党も野党もありません。

 皆の心は一つ。


 ――こんなわけの分からん事態に対処できるのは安達くんだけだ。


 ……今日も日本は平和です。



 場所は変わって高天原。


「よ、良かった。生きてるねあの人」

「普通に強いですね。怯えているように見せながら的確に急所を抉っていますし、やはりあの気持ち悪い所作は演技でしょうか」


 件のオネエが異世界でモンスターハンティングしていくのを見ながら、アマテラス様とツクヨミ様が安堵の息をついています。

 どうやらイザナミオカンによるお説教は回避されたようです。

 普段はスカしているツクヨミ様もオカン(イザナミ様)は恐いので、内心ですっごく安心しています。


「ありがとねツクヨミ。いきなりだったから私も対処が間に合わなくて」

「はい? 私は何もしていませんよ。姉上が力を与えたのではないのですか?」

『……』


 危機は去りましたが予想外の事態に二柱の動きが止まります。

 どうやらオネエさんは異世界トリップによる補正も神様による加護も無しに、自力でモンスターハンティングしているようです。


「……まいっか! 大丈夫みたいだし」

「……」


 そこで『まいっか!』ですませるから失敗を次に活かせないのだとツクヨミ様は思いましたが、今更このへっぽこ女神の性根が治るとも思えないので沈黙を守りました。


 今日も高天原は平和です。


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― 新着の感想 ―
[一言] エルテちゃん最初はこんなんだったんですね。 しかしエルテちゃん、土壇場で出鱈目な召喚陣組んじゃうあたり割と行き当たりばったりというか出たとこ勝負というか。だから案外馴染んで中学生やってられる…
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