現代でも割とデマで叩かれてる人いる
「ミィナ。ちょっと聞きたいことがあるのだけれど」
「なんでしょう。また頭痛薬欲しいとかじゃないですよね」
フィッツガルド帝国のヴィルヘルミナさんのお屋敷にて。
休日なのでお茶してたところで、何かを思い出したヴィルヘルミナさんとちょっと警戒してるミィナさん。
体調が悪い時は対症療法では済ませず、原因を取り除くため健康的な生活を心がけましょう。
……それができたら苦労しねえ!!
「最近宮廷の人間や街でみかける庶民に至るまで私を見たときの反応がやけにキラキラしているのだけど、あなた何かやらかしてない?」
「私は何もやってないですね」
「それ原因は知ってる反応でしょう」
あはーと笑いながらすっとぼけるミィナさんとつっこむヴィルヘルミナさん。
異世界で何かあると大体ウェッターハーン商会が関わってる説。
「いや元々ヴィルヘルミナさんの評判がちょっと悪かったのって、顔が悪役令嬢系なせいで誤解が多かっただけで、学園でも親しい人たちには慕われてたじゃないですか」
「何ですのその珍妙な令嬢の分類は」
「そんでカガトさんって魔術師なのに話が割と通じるから、あれでいろんな人と交流あったんですよ」
「……それで?」
「カガトさんが『お嬢様お嬢様』ってよく話題に出すから、ヴィルヘルミナさんが実は良い人なのが広まっていって」
「何やってますのあの子は」
カガトくんが自分のことを話題に出しまくってたことに喜ぶよりも羞恥が大きかったらしく、頭を抱えるヴィルヘルミナさん。
お嬢様の犬だからね。仕方ないね。
「いえ、それでもおかしいわ。カガトは今は日本に帰っているのに、最近になってまた以前より増えてる気がするもの」
「あー最近は多分ローマンさんですね」
「何故!?」
「あの人最近はひょうひょうとして掴みどころありませんけど、アレでヴィルヘルミナさんにやったことはかなり反省してるらしくて、ヴィルヘルミナさんの名誉を少しでも回復しようと無駄に暗躍してますよ」
「直接的にはまともに謝らなかったくせに!?」
ローマンさん(子狸)だからね。仕方ないね。
というか回復通り越して増強されてるんですがそれは。
「というかさっさと次の婚約者見つけると思ってたのに、いまだに宙ぶらりんなの本気で心配してましたよ。直接言ったら殴られるから言わないらしいですけど」
「よく分かってますわね!」
なおローマンさん的には割と真面目にカガトくんは「あり」なので、勝手にカガトくんの立場がヴィルヘルミナさんに見合うように手を回している模様。
もう結婚しちまえよおまえらを実行に移す男(余計なお世話)。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「そういえばパリ五輪でマリー・アントワネットらしき女性が首ちょんぱされた状態で歌ってたけど『パンがなければ~』以外に何やらかせばあんな扱いになるの?」
「そもそも『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』はマリー・アントワネットは言ってませんよ」
「なんだってー!?」
ずっと信じていたことが実は間違いだったことを知り驚くアマテラス様。
なお子供の歴史の教科書を見た親御さんも似たような状態になる模様。
なんで鎌倉幕府がいい国じゃなくていい箱になってるんですか。
「え? じゃあ他にどんなやらかしが?」
「そのやらかしというのも判断が難しいと言いますか。夫の先代にあたる王の寵姫と対立したり、革命前の対応等確かにやらかしはありますが。
当時の慣例を無視したり改革を行ったりして貴族から反感を買っていますが、これは一概に悪いことだとは言えませんし」
「じゃあなんで我儘貴族の代名詞みたいな扱いに?」
「当時の醜聞の多くは彼女と対立していた貴族たちが流したものだとされていますね。しかしこれは実際効果があったらしく、マリー・アントワネットの王妃としての権威の失墜にも影響したとされていますし、そのせいで訂正もされなかったのでは?」
なお首飾り事件という犯人が「マリー王妃に渡す」と嘘をつき首飾りをだまし取った事件もありますが、この事件はマリー・アントワネットは名前を出されただけで完全に関係ないのに事件の首謀者であるという噂が広まり、さらに王室の権威を失墜させる結果になっています。
「噂恐。え、完全にとばっちりじゃんそれ」
「姉上も興味がでた話にはよく調べてから首つっこむようにしてくださいね」
そもそも「首をつっこむな」とは無駄なので言わないツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。