雨が降っても涼しくならないどころか蒸し暑い
「ヴィルヘルミナさんのお嬢様言葉ってどうやって話してるんですか?」
「まずその珍妙な言葉の分類はなんですの」
休日のお茶会で唐突になんか言い始めたミィナさんと呆れるヴィルヘルミナさん。
今からおまえにお嬢様言葉が関西弁で脳内再生される呪いをかける。
「いかにもお嬢様がつかってそうな語尾とか言葉遣いというか。でもこっちって学院で学んだ限り人による語尾とかの変化ってないっぽいので、実際何が他の人と違うのかなあと」
「はあ、イマイチ分からないというか、私の言葉がどんなふうに聞こえてますの翻訳機能」
融通がききすぎるせいでアマテラス様すら仕様を把握しきれてないからね。仕方ないね。
「原因を考えるなら発音かしら。貴族階級だと発音しない音やその逆もありますわね」
「えー日本だと方言の範疇なんですけどねそういうの」
日本人にはあまりピンときませんが、例えばイギリスではその人の発音で出身地や階級まで推察することができるそうです。
「じゃあ逆に私の言葉ってこっちの人にどう聞こえてるんですか?」
「そうね。貴族とはまた違って、上級の使用人やそれこそ貴族御用達の商人の発音に聞こえるわね」
「……もしかして学院でなんかいじめられてたの、ローマンさんたちのせいだけじゃなくてそれもあったんですか?」
「いえ、それはローマンのせいね」
今更過去の黒歴史を蒸し返されるローマンさん。
根本的な原因はアフロなのですが、ミィナさんたちは知らないからね。仕方ないね。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「あの子割と丁寧な言葉遣いなのに、それでも貴族のそれには翻訳されないんだ」
「まあそこは文化の違いも関わっていそうですが」
逆に異世界でお嬢様言葉に変換される日本語の話し方ってどんなだよ。
……お嬢様言葉では?
「でも発音とかで階級が分かるってピンと来ないんだけど。やっぱり上流階級ほど綺麗な発音になるの?」
「何をもって綺麗とするかにもよると思いますが、イギリスで一番洗練された英語を話すのは執事だったとされていますね」
「なんで?」
まさかの貴族ではなく執事。
でも執事ってなんでもできるイメージあるし……。
「一番上の人間はある意味では多少横柄でも構いませんからね。執事は貴人と接する機会が多く、また礼を失することが許されないが故に洗練されていったとされています」
「あー、下手したら主人の評価にも繋がるもんね」
ちなみにあくまで英語として洗練されているだけで、上流階級のそれとは別らしいです。
「環境が言葉遣いを形作ることもあるでしょうしね。知り合いが女性ばかりな外国人男性が、オネエ言葉でしか日本語が話せなくなったなんて話もありますし」
「類似例を知ってるだけに迫力が凄そう」
「矯正しようと日本人男性を友人として紹介したら、日本人男性の方もオネエ言葉になったそうです」
「どうしてそうなった」
話し方って割とうつるからね。仕方ないね。
「ちなみにオネエ言葉になったら、他人とトラブルになる回数が減ったそうです」
「それはちょっと分かるような……」
ネットでお嬢様言葉で書き込むルールがある場所とかは荒れにくいらしいからね。言葉遣いって大事だね。
今日も高天原は平和です。