柿の種のわさび味も意外につーんとくる
「わさびの輸入は可能でしょうか?」
「できますけど。何でわさび?」
大陸の中央にあるドワーフ王国のとある料理店にて。
仕事のついでに寄ったらわさびを仕入れられないかと聞かれ困惑するミィナさんと、真剣な顔で大根をすりおろすジュウゾウさん。
たまには大根おろしと醤油で和風ハンバーグもいいよね!
「このお店って寿司とか刺身は出してませんよね」
「山奥の地下ですからね。地下水路を通って海の幸の輸入はされていますが、生はやはり抵抗があるらしく」
「じゃあ何でわさびを」
「わさびは焼いた肉にも合うんですよ。焼いた後はもちろん、事前にわさび醤油に漬け込んでおいたりだとか」
「あー聞いたことはありますけど」
どうやら聞いたことはあっても食べたことはないらしく、ピンときていないミィナさん。
まあ、わさビ〇フとかあるし。
「というか何で今更?」
「いや、単に私が久しぶりに食べたくなったというのもあるんですが」
「それならそんな量はいりませんよね」
「ええ、しかし……」
「まさか一人だけ食うつもりか!?」
「ずるいぞ! わしらにも食わせろ!」
「そうだそうだー!」
「……こうなりますし」
「あー」
未知の肉料理をジュウゾウさんが独り占めしようとしてると聞き、騒ぎ始めるドワーフたち(とメルディアの騎士)。
ちなみに前回なんかペンギンを仕入れることになりかけていたミィナさんですが、実は四月二十五日は世界ペンギンの日だったりします。
この日の前後にアメリカの南極基地にアデリーペンギンが姿を現したことから、基地の科学者たちが「ペンギンの日」としてお祝いしたことが始まりだそうです。
マジかよ知らなか……だから前回の話がペンギンだったんですね!
「でもジュウゾウさんが仕入れたいなら本わさびですよね。あれって冷蔵どころか冷凍しても保管期間短いんじゃなかったですか」
「魔術でなんかこう時間止めたりできませんかね?」
「えー、まあ一応聞いてはみますけど」
冷凍魔術などで保存するならともかく、はたして食料の保管のためだけに時間を止めようとする魔術師がこの世界に存在するのか。
なお居なかったら日本に居るカガトくん(休暇中)のところにミィナさんが突撃します。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「海外でもステーキとかにわさびつける人がいるらしいけど、なんか偽わさびしか手に入らないって嘆いてて大変だね」
「まあ海外どころか、日本でも市販のものはある意味ではほとんど偽物ですからね」
「え“!?」
海外は大変だなあと思ってたら自分たちもそうだったと知り、しめられたみたいな声をあげるアマテラス様。
なおカニカマも海外で人気があるのですが、実はカニじゃないと知ってショックを受ける外国人が多い模様。
「店で出されるものならともかく、市販のチューブ入りのものなどはホースラディッシュ……西洋わさびに緑色の着色がされたものが使われています。
まあそれでも商品説明に『本わさび使用』と書かれていれば中身の50%以上が本わさびですし『本わさび入り』なら50%以下ですが本わさびは使われています」
「割合大雑把すぎでは?」
ちなみに西洋わさびも辛いことは辛いのですが、本わさびの方がマイルドな辛みだとされています。
わさびの食べ比べとかしたことないのでよくわがんね。
「まあチューブのわさびの中にも『100%本わさび』を謳ったものもありますよ」
「それが謳い文句になるくらい100%じゃないやつばっかりってことじゃん」
「あと海外人気と需要に応えるために、海外でもわさびの現地生産を試みていて、実際成功しているところもあるそうですね。逆に日本の本わさびの生産数は下がっていたりしますが」
「ええ……。そのうち海外から輸入しないと足りなくなったりしないよね」
生産者の高齢化に加えて、わさびは暑さに弱いのに温暖化が進んでいるからね。仕方ないね。
今日も高天原は平和です。