自衛隊やめた後もしばらく「ひとにーまるまる」とか言っちゃってた
「下手にこちらの言語を学ばないほうがいいかもしれません」
「教育者にあるまじき発言ね」
メルディア王国とガルディア王国の国境にある学校にて。
口元を組んだ両手で隠しながら深刻そうな様子で言うちみっこ教師のリョウコさんと、差し入れのガトーショコラを切り分けながら言うオネエ。
作者が子供の頃はまとめてチョコケーキとか言ってたと思うんですが、いつの間にこんな洒落た名前が一般化したんですかねガトーショコラ。
「いや慣れたら大丈夫なんでしょうけど、こっちって数の書き方は日本と同じなのに、読んだり口で言うときは小さい桁を先に言うんですよ」
「ごめんなさい。ちょっと何言ってるか分からない」
つまり23を日本語で言うと「にじゅうさん」で20と3なわけですが、異世界だと「さんにじゅう」で3と20なわけですね。
ドイツ語の二十以上の二桁かよ。
「それは……面倒くさそうだけど、地球の他の国でもあることなんだし、確かに慣れたら大丈夫なんじゃない?」
「いや最初それを認識したときに、なんか翻訳機能がバグったみたいで、しばらく日本式で聞こえるときと異世界式で聞こえるときがランダム発生したんですよ」
「何それ恐い」
ここにきて万能だと思われていた翻訳機能に深刻なバグが。
割と感覚依存な部分があるからね。本人の感覚がバグったら一緒にバグっても仕方ないね。
「それで慣れたら慣れたで、今度は日本式に翻訳してくれなくなって、全部異世界式で聞こえるようになって」
「それは確かに面倒ね」
感覚依存(ry)なので仕方ないね
「あら……でもそれって数字の仕組み聞いて認識しちゃった私にも感染る可能性あるんじゃないの?」
「……ごめんなさい」
感(ry)仕方ないね。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「私は悪くねぇ!?」
「いやまあ確かに姉上は悪くないと思いますよ」
先手を打って責任回避をするアマテラス様と、これは確かに知らずに完璧に対応するのは無理だろうとフォローするツクヨミ様。
数字って割と地域と時代で差異が大きいからね。仕方ないね。
「それこそ異世界がこちらと同じ十進数だったのも割と奇跡的ですからね。こちらでも五進数やら十二進数やら割と地域差がありましたし」
「あれ? でも日本って割と昔から十進数だよね?」
「日本の場合は中国から漢字などと一緒に十進数も入ってきたようですね。縄文時代には十二進数を使っていたとされる説もありますし」
ちなみにヨーロッパで十進数が基本となったのは、1585年にベルギーの数学者であるステヴィンが提唱したのが始まりとされています。
つまり中世には十進法はそれほど浸透してません。
「あー英語とかも11が『いれぶん』で12が『とぅえるぶ』なの十二進数の名残なんだっけ。ややこしいからやめてほしいんだけど」
「まあ日本も十進数ではあっても坪やら升やら尺やら独自の単位が異様なほどあるのはなんでだと外国人から言われることありますし」
「慣れろ」
「あと漢数字について『一、二、三までは分かりやすいのに、なぜ四でいきなりトランスフォームするんだ』とか」
「それは中国のせいだし」
さらっと責任回避をすることに慣れてきたアマテラス様。
今日も高天原は平和です。