なお糖尿病
「鏡餅を大量に作れば毎日餅が食べられるのでは?」
「またイネルティアの姉ちゃんが変なこと言い出した」
「何故食べ物が絡むと頭が悪くなるのでしょうか」
ケロス共和国のとある村にて。
鏡開きでかち割った餅をお汁粉にして食べてたと思ったら、何か言い出したイネルティアさん。
それに対し呆れた様子を見せるサロスくんと、付き合いが長い故に言葉に容赦がないフィデスさん。
でも事実だからね。仕方ないね。
「なんですか。サロスだって普段は米よりパンがいいと言ってるのに、餅はたくさん食べているでしょう」
「そりゃ美味しいから食うけど。別に毎日は食べたくないし」
「まあ日本でも一月以外はそんな食わないしな」
サロスくんに同意しつつ、くわえて引っ張ってる餅が自分の身長より伸びてるスクナヒコナ様。
明らかに無理のある食べ方ですが、神なので餅が喉につまったりはしま……。
いや、しそうだしそのせいでうっかり死にそう。
「というか餅自体そんな日持ちするもんじゃないだろ。冬はまあともかく夏とかだめだろ」
「そんな……日本で売っていた餅は乾燥していて日持ちしそうだったのに」
「そりゃ手作りよりは持つだろうけど」
そう言ってるスクナヒコナ様ですが、実は市販の切り餅とかは消費期限が二十四ヵ月後とかだったりするので、まとめ買いしても余裕で一年もちます。
餅すげえ!
「いえ、ここは発想を逆転。毎日パンを焼くように、毎日餅をつけばいいのでは!」
「アレを毎日やるとか正気かよ姉ちゃん」
「そこまでして餅食いたいか」
「やるなら一人でやってください」
「ひどい! 一人くらい賛同してくれても!?」
男どもからの反応が悪すぎてちょっと涙目なイネルティアさん。
餅つくの結構しんどいからね。仕方ないね。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「これから毎日餅をつこうぜ?」
「嫌です」
こちらでも毎日餅を食う計画を発動させようとするアマテラス様と、冷静に断るツクヨミ様。
アマテラス様に餅つきやらせたら、相方のツクヨミ様の手を叩きそう。
「いやまあ半分は冗談だけど」
「半分本気じゃないですか」
「でも市販の餅って結構消費期限長いんだね。非常持ち出し袋に入れといてもいいかも」
「いえ……いや確かに食料としてはありかもしれませんが」
そもそもアマテラス様が非常持ち出し袋を用意してどこに避難するというのでしょうか。
……天岩戸だな!
「一応災害時用向けの餅も売っているようですし」
「ツクヨミがすぐにこっちの予想を越えてくる」
「私が越えてるわけではありませんよ」
先ほど市販の切り餅などは約二年もつと書きましたが、非常用・備蓄用の餅などは、なんと消費期限が五年だったりします。
さらに水を入れるだけできなこ餅やしょうゆ餅などの味付き餅が楽しめるものもあったりと、案外レパートリーが豊富です。
「予想以上に非常用餅が完備されてて、人間の食への執念に改めて驚いてる」
「被災地にうどんを届けるために、調理用の道具はもちろん水まで持参してうどんを被災者に食べさせようとする県もありますからね」
「聞かなくてもどこの県か分かるのある意味凄い」
なおツクヨミ様は食べさせようとすると言ってますが、あくまで被災地から要請があればの話で、無理やり被災者にうどんを食わせようとするわけではありません。
「水まで持参する時点で勢いが強すぎるよ」
「まあ被災地へのボランティアなどの支援は、必要なものは全て準備しておいて、現地の物資などを消費しない自己完結型が望ましいですからね」
つまり自己完結うどん。
今日も高天原は平和です。
活動報告にバニーなヤヨイさんのイラストあるので興味ある人はどうぞ