傘を盗まれた怨嗟の声でいつもより感想が多い
「タヌキって何なんですか」
「何なんですかと言われても」
安達家のリビングにて。
唐突になんか言ってるエルテさんと、柿の種のピーナッツなしを買ってみて少し後悔してるカガトくん。
わさび味のやつって調子に乗って一気に食べるとツーンと来たりするよね。
「いや私タヌキって妖怪的な存在だと思ってたんですよ。実在するじゃないですか。何者?」
「何者と言われてもイヌ科の動物としか……」
いきなりタヌキの正体を聞かれて言葉につまるカガトくん。
タヌキに詳しい男子高校生とかそんないないだろうしね。仕方ないね。
なおエルテさんの反応はそれほどおかしなものではなく、実はタヌキは元々極東アジア付近にしか生息しておらず、世界的には珍獣だったりします。
どれくらい珍獣かというと、シンガポールに世界三大珍獣の一種であるコビトカバを貰えないかと交渉したところ「じゃあタヌキと交換ね」とトレード成立するくらい珍獣です。
なおタヌキを迎え入れたシンガポールでは歓迎式典が開かれ、冷暖房完備の部屋が用意されたりとVIP待遇だった模様。
「というか本当に存在するんですか?」
「そこまで? そんな気になるならその辺に見にいくとか」
「動物園とかにいるんですか?」
「東京なら皇居にも居るって聞いたけど」
「なんで?」
割と東京にも出没するタヌキ。
特に皇居在住のタヌキたちは、上皇陛下によって食性についての論文まで書かれてたりします。
「俺の地元だと山近くだと結構見かけたし、道路で車にひかれてよく死んでたなあ」
「ええ……」
タヌキは道路でひかれて死ぬ動物ランキングで断トツの一位だからね。仕方ないね。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「外国人の一部にタヌキが非実在生物だと思われてるのマ〇オブラザーズの三作目のせいでは?」
「平成の合戦な映画でも知られているらしいですよ」
ファンタジーな存在として描かれるせいで、余計に海外で実在を疑われることが多いタヌキ。
あとよくタヌキのしっぽが縞々の柄で描かれることがありますが、これはアライグマの特徴でありタヌキではありません。
「それにタヌキってそんな車によくひかれるの?」
「ひかれますね。臆病な性格なので、急に車が来ると硬直して動かなくなったり、パニックになって変な方向に逃げたりするそうです」
「それ野生で生き残れるの?」
まあパンダとかも何で子孫残せてるのか怪しい生態してるし……。
なおここまで珍獣として説明してきたタヌキですが、ロシアが毛皮目的で輸入したタヌキが脱走し西へ西へと移動しヨーロッパで繁殖、害獣として名を馳せてたりします。
ヨーロッパとばっちりだけどロシア寒いからね。仕方ないね。
「狸寝入りも、タヌキが不意をつかれるとすぐに気絶してしまい、目が覚めると慌てて逃げ出す様子から生まれた言葉だとされていますしね」
「なんで野生で生き残れてるの?」
なんでだろうね。
今日も高天原は平和です。