お雑煮の餅を焼くか煮るか戦争
「十五日にはどんど焼きといって正月飾りを燃やしたりその火で餅を焼いたりするらしいぞ」
「おぬしは火遊びを覚えたばかりの男児か」
安達家のリビング(と繋がってるダイニングキッチン)にて。
安達家の大食いたちをもってしても食べきれなかった餅の残りを引っ張り出しながら言うグライオスさんと、花火の件といい火遊び好きだなこのおっさんと呆れながら見ているリィンベルさん。
男は幾つになっても大体男児(馬鹿)だからね。
仕方ないね。
「というかじゃ。処分するにしてもわざわざ焼くのなら何かの神事ではないのかそれは。神社などでやるもので個人宅でやるものではないじゃろう」
「……どんど焼き、神社」
「今からどこでやってるか調べる気か」
何が何でも参加したいらしくスマホで検索するグライオスさんに呆れるリィンベルさん。
というかどんど焼きは地域によっては子供が主役であり大人は補助に回ることが多いです。
ちなみにどんど焼きの時期も地域差があり大体は十五日に行われていましたが、祝日である成人の日が十五日固定ではなくなったため、参加しやすいように他の日にずらすところも増えているそうです。
「火遊びもそうじゃが。おぬしもいい歳なんじゃから、餅の方も暴食は控えたらどうじゃ。そういうのは普段は平気だと思っていても、いきなり反動がくるもんじゃぞ」
「おまえさんに言われても説得力がないんだが」
リィンベルさん言動はともかく体は若いままだからね。
でもグライオスさんは一応人間の枠にはまだ収まってるので、無理すんなというのは正論です。
「いや最近は歳のせいか脂っこいものが食べられなくてのう」
「元からであろう」
珍しくエルフジョークをとばすリィンベルさんとつっこむグライオスさん。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「鏡開きにつづいてスーパー餅タイムが」
「健康祈願のために食べるのに食べ過ぎで体調崩したら本末転倒ですよ」
スサノオ様の酒並みに餅を食う理由を探し出そうとするアマテラス様につっこむツクヨミ様。
そこのおまえ!
餅一個のカロリーはご飯一膳の約半分だぜ!
あとどんど焼きは年神様を送り出すためにやるものであり、餅を焼くために燃やすわけではありません。
「あれ? 意外に少ない?」
「まあそもそもの量がご飯一膳より少ないですからね」
「じゃあ何で餅食べると太るって言われてるの?」
「理由は色々ありますが、まず美味しさと雰囲気で食べ過ぎるからかと」
「あー」
他にも餡子など餅と一緒に食べるもののカロリーも含むと油断できない領域へと突入します。
仕方ねえだろ美味しいんだから。
「というかどんど焼きって別の名前で呼んでなかったっけ?」
「どんどん焼きやさいと焼きなど呼び名は色々ありますが、有名なのは左義長でしょうか。元は宮中行事である三毬杖だとされていますからね」
「毬杖って杖で鞠を打ち合う遊びだっけ」
「そうですね。振々毬杖や玉ぶりぶりとも呼ばれますが」
「ツクヨミ。その顔で『ぶりぶり』は許されないと思うの」
「どの顔なら許されるんですか」
普段クールな弟からクールなまま放たれた「ぶりぶり」という単語につっこむアマテラス様とつっこみ返すツクヨミ様。
スサノオ様なら許された可能性が微レ存。
いや微レ存どころじゃねえな。
「ぶりぶりざ○もん」
「やめなさい」
連想してしまったのか各所から怒られそうな名前を軽率に出すアマテラス様と冷静に止めるツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。