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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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シャ○ニングフィンガー(太陽的な意味で)

「貴女は神を信じますか?」

「……は?」


 とある昼下がり。あまりに暇でスマホでアンチダークエルフスレ(正統派エルフ萌えスレ)を監視していたリィンベルさんに、街中でかけられたら困る言葉ベスト3に入る問いかけが放たれます。


「失礼、つい癖で。私はガルディア王国で神官をしておりましたナタンと申します。異郷の神だというアマテラス様に導かれ参ったのですが……はて? アマテラス様はこの国の指導者の集まる場に転送するとおっしゃられていたのですが?」

「今は議会は閉廷中じゃ。もしかしたらと思い一応交代で詰めておったのじゃが、まさか本当に来るとはの」


 不思議そうに首を傾げる少し痩せた中年神官ナタンさん。

 どうやらアマテラス様は国会が閉廷したのを知らずに、そのまま異世界人を召喚返ししてしまったようです。

 うっかりにも程がありますが、リィンベルさんは余裕のある大人(婆)なのでこの程度でアマテラス様への信仰は揺らぎません。


「ふむ。お休み中でしたか。これはいらぬ手間をとらせてしまいましたかな」

「いや。今日はアダチは都内に居った筈じゃ。連絡を取るから、まあそこにでも座って待っておれ」


 そう言ってスマホを操作するリィンベルさん。どうでもいいですがスマートフォンなのに何故略称はスマホが一般的なのでしょうか。


「さて、アダチが来るまで簡単に事情を聞いておくかの。どうやら自らの意志で日本に来たようじゃが、何ぞ地元に居づらい事でもあったのか?」

「いやはや、恥ずかしながら赴任地の領主と問題を起こしてしまいましてな」

「ほう? 世渡りの下手なタイプには見えんが」


 日本人にはよく分からない感覚ですが、宗教というのは多くの場合政治に深く絡んでおり、場合によっては貴族よりも力が強い場合もあります。

 地球でも神聖ローマ帝国の皇帝であったハインリヒ四世が教皇に喧嘩を売ったことがありますが、教皇に「おまえ破門ね」と言われた瞬間周囲全てが敵に回り、どうしようもなくなったので教皇に自ら許しを乞う羽目になっています。


 かの有名な「カノッサの屈辱」です。別の意味で有名な「カノッサ機関」とは多分関係ありません。


「恥ずかしながら。ガルディアの一部では未だに結婚税というものがまかり通っておりましてな」

「結婚税? ああ、初夜権が欲しければ金を払えとかいう税じゃな」


 初夜権とは、新婦の初夜を領主や権力者が務めるという意味の分からない権利です。

 意味が分からないですが中世ヨーロッパの一部では実在したとされており、その初夜権を回避するために払わなければならない税、あるいは罰金が結婚税だとされる場合もあります。


「憐れな男が言うのです。貧しい自分たちには結婚税など払えず、領主の兵が嫌がる妻を無理やり連れて行ってしまったと」

「まさか連れ戻すために領主の館へ乗り込んだのじゃなかろうな?」

「滅相も無い。私にそんな度胸はありませんよ」


 冗談交じりに言うリィンベルさんに、ナタンさんも笑いながら返します。


「そもそもガルディアの新たな王妃は王を尻にしくほど有能で、さらに浮気を許さぬ潔癖なお方です。かの方に嘆願すれば結婚税など廃止されるに違いない。そう思い私は手紙をしたため走りました」

「ふむふむ」

「そして領主は王妃様の拳の前に沈みました」

「どうしてそうなった!?」


 普通は威厳とか威光とかに屈する場面ですが、ガルディアの王妃というのはキレ系王妃ことアサヒさんなので仕方ありません。

 キレている時の王妃様は、オネエも手を焼くほどの暴走超特急なのです。


「しかし結婚税自体は悪法と言えど法として存在したもの。それをもって領主を罷免することはできぬと王が言われ、王妃様も結婚税を廃止させるまで。領主を凹にしても抹殺することはできなかったのです」

「今おぬし温和な顔でさらりとえげつない発言をしなかったか?」


 人畜無害な顔をして誅殺を推奨するナタンさん。正義の人なので悪に厳しいのは仕方ありません。


「まあそういうわけでして。私も神官とはいえ雇われの身。赴任地の変更を希望してもかなわず、どうしたものかと悩んでいたところにアマテラス様の神託が下ったのです」

「ふむふむ」

「そして私は決意しました。どうせ信仰するならおっさんより美少女が良いと」

「ちょっとおぬしとはよく話し合っておく必要がありそうじゃの」


 可愛いは正義。拳を握りしめ何やら力説するナタンさん。そしてそんなナタンさんをロックオンするリィンベル(巫女)さん。

 今日も日本は平和です。



「え? 国会って一年中やってるんじゃないの?」

「んなわけないでしょう」


 一方高天原。

 世間知らずなアマテラス様にツクヨミ様のつっこみが入ります。


「まったく。あのダークエルフが居てくれたから良かったですが、そうでなければどうなっていたか」

「さ、流石私の巫女」

「……」

「……ごめんなさい」


 頑張って流そうとしたアマテラス様でしたが、珍しくマジギレ寸前なツクヨミ様の視線に負けて素直に謝ります。

 普段大人しい人がキレると怖いですが、普段怖い人がキレるともっと怖いのです。


「ちょっとオモイカネを呼んで勉強をしましょうか」

「え? い、今更?」

「頑張れば夕食にプリンを付けるようトヨウケヒメに頼んでおきます」

「どんと来い!」


 元気にツクヨミ様の手の平でコロコロされるアマテラス様。

 今日も高天原は平和です。


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