割と頻繁に再放送されている
「どうぞ。カボチャのモンブランです。お納めください」
「うむ」
安達家のリビングにて。
膝をついて無駄に恭しくカボチャモンブランを差し出すナタンさんと、足を組んで女王様オーラ全開で受け取るリィンベルさん。
定期的にグライオスさんに乗っかって騒ぎを起こすナタンさんは、リィンベルさんのご機嫌をとるためにお菓子の献上をすることに余念がないのです(対イネルティアさん用の菓子研究のついで
あと読者のほとんどが忘れているかもしれませんが、リィンベルさんは王族エルフなので、エルフの国が存続してたら本当に女王様やってたかもしれなかったりします。
ただの見た目年齢不詳のBBAではないのです。
「というかカボチャのモンブランてなんですか。モンブランって栗じゃないんですか」
「チーズ使ってないチーズケーキとかあるんじゃし、今更じゃろう」
ついでにもらったカボチャのモンブランをつつきつつ疑問を口にするエルテさんと、細かいことは気にしないリィンベルさん。
なおモンブランの由来はアルプス山脈のモンブラン(標高4807.81m)なので、山みたいならもうモンブランでいいんじゃないかな。
「というかナタンさんイネルティアさんに食べさせるためにお菓子の研究してるんですよね。イネルティアさんもう向こうに定住するっぽいのにどうやって食べさせるんですか?」
「ふっふっふ。準備ができたら私もあちらの世界に戻ればいいだけのこと」
「あれ? アマテラス様の神官になるんじゃなかったんですか?」
「ええ。なので向こうで神社ぶっ建てて布教しようかと」
「何さらりと国際レベルの喧嘩売る真似しようとしてんですか」
現代日本人にはピンと来ないかもしれませんが、古来から宗教と政治というものは密接な関係にあり、皇帝ですら頭が上がらないなんて時代もあったほどです。
異世界の方も宗教勢力が割と力を持ってるので、そこに異教を布教しに行くとか、下手したらというかむしろ上手くいって影響力が広がったらマジで暗殺されてもおかしくありません。
「最初は日本に似ている上にそのあたりがゆるいホムラが狙い目でしょうか」
「意外に現実的に計画立ててる」
「まあこやつ自身がゆるいのじゃから、命がけでやるつもりはないじゃろう」
はたして異世界でアマテラス様信仰はどこまで広がるのか。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「ええ……異世界で神道広まるかなあ。はっきりとした教義とかなくて割とふわっとしてるのに」
「まあアメリカの一部では神道を信仰し始めている人間もいますからね」
「マジで!?」
実は日本文化を通じて神道に興味を持ち、実際に神道の信仰を始める人間が地味に増えているそうです。
え? それ色々と大丈夫?
「日系人とかじゃなくて?」
「ええ。ですがちゃんと稲荷神社から分霊を託されて祀ってたりするそうですよ。中には神道をグローバル化するためにオンラインでの布教を試みている人間もいるとか」
「はたから聞くと悪いけど胡散臭い」
日本人自体がそんな気合入れて信仰してないからね。仕方ないね。
ちなみによく稲荷は祟るとされ分霊の扱いにも注意が必要だと言われますが、むしろ稲荷じゃなくても扱い間違えれば大体の神様は祟ります。
神様って恐いね!
「どうせなら地元の古い神祀ればいいのに。サンダーバードとか」
「サンダーバードは神では……いえ精霊信仰の類なので神と考えても?」
ちなみにサンダーバードはアメリカの先住民族の間で伝わる雷の精霊で、飢饉に襲われた部族が精霊に祈ると、鯨をもって現れて飢饉から部族を救ったそうです。
「え、じゃあやっぱり普通に信仰されてたんじゃん。仲間じゃん」
「そうですね。仲間ですね」
サンダーバードを仲間認定するアマテラス様と、もうどうでもよくなったらしいツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。