休んでる間にどの競技に出るか勝手に決められていた
「運動会をやろうとしたら『何故そんなことをする必要が?』と却下されたんですけど」
「確かに『何故?』と言われると反論しづらいわね」
ガルディアとメルディアの国境にある学校にて。
相変わらず辞めたいと言いつつも真面目に教頭やってるらしいリョウコさんと、差し入れの栗タルトを切り分けながら言うオネエ。
ちなみに「マロンタルト」で検索すると普通に洋菓子のタルトが出てきますが、「栗タルト」で検索すると例の愛媛の郷土菓子な謎の餡子ロールが出てきます。
すみ分けができてるなヨシッ!
「それに運動会って整列行進とかやるから、また『ここは軍学校じゃないですよ』って言われて」
「あーまあ確かにそういう側面はあるかもしれないわねえ」
ちなみに運動会は一説には海軍の学校で最初に行われたとされており、そこから全国の学校に広がっていきましたが、第二次大戦下でより軍事色が強いものになっていったそうです。
しかし大戦末期には食糧不足から学校のグラウンドで野菜育てたりしてたので、中止されることもあったとか。
食うのが最優先だからね。仕方ないね。
「そういえば洒落にならない校則違反した子を何人か預けたの、立派に更生して戻ってきたから先生方も喜んでて感謝の言葉を伝えてほしいって言ってましたよ」
「ああ。新兵の訓練に付き合わせただけなのにすぐ素直になったわね。もっと手間がかかるかと思ってたんだけど」
新兵教育はある意味軽い洗脳と拷問なので、基本的に学校でいきってる程度の子供がすぐ素直になっちゃうのは仕方ありません。
たまに会社の研修で自衛隊に体験入隊させてるところがありますが、そういうのは大抵お客様対応で終わるので、それが基準だと思って自衛隊に入隊すると軽い地獄を見ます。
「やっぱり学校に軍事的なカリキュラムを組み込んだ方がいいのでは?」
「日本だったら大問題になりそうな発言ね」
どうやらちょっとやんちゃな生徒が多くて疲れているらしいリョウコさんと、糖分をとらせるために栗タルトを皿に追加するオネエ。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「いつの間にか体育の日がなくなっていた」
「なくなったの三年前ですよ」
カレンダーを眺めていたと思ったら何か言ってるアマテラス様とつっこむツクヨミ様。
長らく体育の日として親しまれていた祝日ですが、国民の祝日に関する法律が改正されたことにより、令和元年からは「スポーツの日」に名前が改められています。
親しむどころか体育大っ嫌いだけどな!
「というか何で名前変えたの?」
「体育よりスポーツの方が示すものの幅が広いからとされていますね。体育というのは元は『身体に関する教育』が変化していって『体育』となったものですし」
「あー教育としての意味があるのか」
ちなみにスポーツの日は日本史上初にして唯一のカタカナが使われている祝日だったりします。
……どうでもいい? うん。
「何で『運動の日』とかにしなかったんだろう」
「運動はスポーツ的なもの以外の意味も含まれるからでは?」
「あー確かにスポーツに完全に意味もイメージも一致する日本語ってない……のかな?」
スポーツという言葉自体は大正時代には日本でも一般化していたとされるので、結構馴染みの深い言葉だったりもします。
しかし当初は外来の競技だけを指していましたが、次第に日本生まれの競技も含まれるようなっています。
また外国でも車やバイクなどの乗り物を用いたレースが含まれるようになり、最近ではe-Sportsとしてテレビゲームも含まれたりと、世界的に意味が広まり続けている言葉でもあったりするのです。
じゃあスポーツの日は家でゲームしようぜ!
「対戦相手がいないのならe-Sportsではないのでは?」
「ツクヨミはいコントローラー」
「なるほど。素直に体を動かす気はないのですね」
某フィットネスゲームならアマテラス様でもあるいは……?
多分始めた次の日の次の日くらいに筋肉痛で動けなくなるんじゃないかな。
今日も高天原は平和です。