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アフロボンバー(特に意味は無い)

 剣術。

 一言に剣術と言ってもその種類は多岐に渡り、剣の種類によって扱いも当然違うためこの世には様々な剣術が存在します

 特に日本では銃の登場後も剣術は発展を続け、江戸時代には700を超える流派が存在したと言われています。

 逆に西洋では銃を初めとした火薬を用いた兵器の普及により剣術は廃れていき、失伝されたものも多くその内容については研究者たちの間で論争となっています。


 さて、そんな西洋に近い文化を持つ異世界からきたグライオスさんですが、その戦い方は戦の中で身に着けた所謂喧嘩殺法に近いものであり、とても上品とは言えません。

 蹴りは序の口。右手の剣で相手の剣を圧して左手で殴りかかったり、揚句頭突きと見せかけて噛みついたりとやりたい放題です。


 とはいえ、普段のグライオスさんは、相手が怪我をさせたらマズイ安達くんや年若い少女であるヤヨイさんなので、そういった戦い方は自重しています。

 では仮に手加減の必要のない、もうボロ雑巾にして打ち捨てても構わない稽古相手が居たらどうなるでしょうか。


「……拙者戦いというものを甘く見ていたでござる」


 戦慄する猫耳侍の視線の先には、見るも無残にズタボロにされた元イケメンが一人。

 フィッツガルド帝国の侯爵子息であるローマンさんです。半ば無理やり着せられた道着は裸同然と言えるほど引き裂かれ、体は打撲その他諸々で無事な所を探す方が難しい程です。


 そして流石にやりすぎたと思ったのか、見た目平然としながらも脂汗をかく元皇帝が一人。

 どうやら祖国の恥ともいえる醜態を晒したローマンさんに、グライオスさんも年甲斐もなくハッスルしてしまったようです。

 ヤヨイさんが突けばピクリと動いたので、幸い生きてはいるようで安心です。


「どうするのでござるかコレ」

「あー、シーナは確か治癒魔術が得意であったな」

「このまま持って帰るつもりでござるか。流石にこの惨状を見たら、シーナ殿の雷が落ちるでござるよ」


 何気にローマンさんの扱いが酷いヤヨイさんですが、その懸念はもっともです。

 自らを律する事に長けたシーナさんの事です。グライオスさんが我を忘れてエンジョイ&エキサイティン! してしまったと知ったら、笑顔で雷(魔術)を落とすに違いありません。


「……ヤヨイ。そなた魔法学園に留学していたのであったな」

「そこで拙者にふるでござるか。拙者攻撃寄りで治癒は苦手なのでござるが。――女神よ。憐れんでください。私たちの嘆きを聞いてください」


 文句を言いつつ予想していたのかすぐに呪文を唱え始めるヤヨイさん。

 集中しつつも周囲を探るようにピコピコ動く猫耳がラブリーです。でも集中しているのでいくらキュートでも触ってはいけません。


「――その御手で傷を包んで下さい。打ちのめされた彼らを癒して下さい」


 そして詠唱が終わると同時にヤヨイさんが手をかざすと、柔らかい光がローマンさんを包みその傷を癒していきます。


「う……ここは。私は地獄の悪鬼に責め苦を負わされ死んだはずでは」

「誰が悪鬼であるか」


 そして目覚めるなり地雷を踏み抜く安定のローマンさん。沈静化したはずの元皇帝の怒りゲージが再発火寸前です。


「……君が助けてくれたのか?」

「うむ。流石にあのまま放置しておくにはいかぬ故に。そなたもこれに懲りたら、少しは言動に注意をはらうで」

「……女神だ」

「ござ!?」


 いきなりトンチキな事を言い出したローマンさんに、ヤヨイさんが猫耳と尻尾を逆立ててドン引きしています。


「金と青。獣のごとき鋭さをその瞳に秘めながら、その内に宿るは正に慈悲と慈愛の女神の化身。ああ! 今私は運命に出会った!」

「そんな安い運命はトイレの水洗で流してくることをお勧めするでござる」


 何やら演劇の主役のように身振り手振りを付けて叫ぶローマンさんと、失恋でクールダウン中なため冷静につっこむヤヨイさん。

 あまりの温度差に竜巻が発生しかねない勢いです。


 ミィナさんがモテモテだったのはアフロディーテ様の加護のせいだったのですが、ローマンさんが惚れっぽいのは元からだったようです。

 元婚約者のヴィルヘルミナさんのこれまでの苦労が偲ばれます。本人が婚約者が行方不明になりガッツポーズをとったのは内緒です。


「女神よ。許されるならばその手に口づけを」

「断固拒否するでござる」

「ああ! 何と奥ゆかしい! ならばせめて私の愛の唄を聞いておくれ美しい人!」

「グライオス殿。竹刀を」

「遠慮はいらぬ。こちらの木刀を使え」


 勝手にセルフバーニングするローマンさんと、冷静に木刀を構えるヤヨイさん。残念な美形と猫耳侍による第二ラウンドが始まりました。

 今日も日本は平和です。



 一方高天原。


「……何あの変なの? まさかアフロに魅入られたとか?」

「残念ながら正気です」


 ローマンさんのアレッぷりを見てドン引きするアマテラス様と、冷静に残念な事実を告げるツクヨミ様。

 余計なことをすることに定評があるアフロディーテ様ですが、今回は冤罪のようです。


「でもアフロといいイシュタルといい、愛の神ってはた迷惑なのが多いし……。うちに愛の神っていないよね!?」

「居ないから安心してください」


 意外なことに、日本には縁結びの神様は居ても愛そのものを司る神様は居なかったりします。

 愛比売命という神様もいますが、この場合の愛は可愛らしいという意味で愛を司るわけではありません。


「大体愛の神でなくても神なんて大抵はた迷惑なものでしょう」

「言わないで。自分の存在に自信が無くなるから!?」


 安定の沈着冷静百合好きなツクヨミ様と、弄られ属性なアマテラス様。

 今日も高天原は平和です。


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