同人誌書いても本にするほどやる気が出ない
「そういえば向こうで新型の感染症が流行ってるらしいけど、こっちに持ち込む心配とかないのか」
「アサヒさんにしては今更な疑問ですね」
今年は販売数の激減が予想される薄い本を手に言う王妃様と、売ってる物のカバー範囲が広すぎるウェッターハーン商会のミィナさん。
日本なら一部は電子データでという手もありますが、異世界にそんなハイカラなものは存在しません。
「加賀さんがきっちりその手の菌とかウィルスは、世界間を越えないように調整してるそうですよ」
「そんな現代科学でも不可能なことできるのか」
「だってこっちの魔法って、ハイレベルになると原因不明の病気でも治しちゃいますし」
「マジかよ」
科学とか医学に全力で喧嘩売ってるこちらの魔術に驚く王妃様。
そのせいでそちら方面の学問が発達しないという弊害も抱えていそうですが。
「ん? じゃあこっちから魔術師送り込めば、向こうの感染症の流行終わらせられるんじゃないか」
「難しいと思いますよ。ウィルスレベルまでどうにかできるのは一握りの一流の魔術師だけですから、数が足りないと思います」
「……あのヘタレそんなに凄かったのか?」
「本人が自分の凄さ理解してないんですよねー」
どうやらそれほど面識のない王妃様にまでヘタレと認識されていたらしいカガトくん。
大丈夫。ヴィルヘルミナさんにはちゃんと評価されてるから。
「それはまた利用しやすそうなやつだな」
「はい。利用しまくってます」
そしてそんな結論を出しちゃう王妃様と、肯定しちゃうミィナさん。
多分ヴィルヘルミナさんに保護されていなかったら、骨の髄まで利用されつくしています。
「……お嬢様に感謝の祈りを捧げなければならない気がする」
「ついに頭バグったかい?」
そんな評価をされているのを察知したのか、フィッツガルドの王都で何か言ってるカガトくんと呆れるローマンさん。
今日も異世界は平和です。
・
・
・
一方高天原
「……盆カレー」
「思いついたことを深く考えずに発言するのやめてください」
具沢山(元精霊馬Mk-3)のカレーを前にして呟くアマテラス様とつっこむツクヨミ様。
ちなみに某黄金なレトルトカレーの販売会社の調査によると、普通のカレーの売り上げは年間を通してそれほど差異はないのに対し、辛口は夏になると売り上げが上昇するそうです。
夏季限定の激辛味とか売ってるのはそのためだとか。
「そういえばインドに日本のカレーチェーン店が進出するらしいんだけど、ツクヨミ成功すると思う?」
「最近は日本でも本場のカリフォルニアロールが上陸しているらしいので、可能性はあるかもしれませんね」
「本場のカリフォルニアロールとは」
インドに対し逆進出を開始したと思ったら、既にアメリカから逆進出をくらっていたことに驚くアマテラス様。
いやまあ認めるかどうかは置いといて美味しいし。
「しかし牛肉は使えないでしょうね」
「あーヒンドゥー教だと聖なる動物だもんね。でも二割くらいはヒンドゥー教ではないんじゃなかった?」
「以前はそうでもなかったのですが、最近では牛過激派が牛肉を取り扱う人々を襲撃しているので」
「牛過激派」
なんか軽く言っているようにも聞こえますが、マジで牛絡みで襲撃からの大量殺害とかも起きているので、インドに行くことがある場合は牛の扱いには十分に気をつけましょう。
実はインドは世界有数の牛肉輸出国だったりするのですが、このままだとそれも縮小していくのかもしれません。
「まあ肉が使えなくても野菜たくさんのカレーも美味しいよね。というかカレーに入れて不味いものとか存在しないよね」
「……そう思っていた時期が私にもありました」
「何があったの!?」
珍しく顔に影を落としガチで落ち込んでいるツクヨミ様と驚くアマテラス様。
あのね。色んな種類の豆がいっぱい入っててね。カレーまぶしても豆の味しかしないの。
今日も高天原は平和です。