フルーツ牛乳もいいよね
「オイ。もう入浴できる時間だぞ」
「え? もうか。最近時間経つの早いな」
そんなやり取りをしながら、簡易ベッドの置かれたテントから出て行く赤髪と青髪の自衛隊員。
異世界から来て自衛隊に体験入隊し、そのまま本採用された元騎士たちです。
「しかし風呂が足りないからってわざわざ作るってのが凄いよなあ。今の季節なら水浴びでもいいだろうに」
「湯につかるというのが重要なのだろう。どれだけ疲れていても風呂は入れと先輩方に言われたしな」
そんな二人が入っているのは、銀色のパイプと青いビニールで構成された簡易浴槽。
最近は災害派遣の際の入浴支援に使われ存在が周知されてきましたが、演習場などに各部隊が集結し風呂が足りない時などは隊員たちも使用しています。
ちなみに名前は野外入浴セット2型です。1型はありません。
じゃあ何で2型かって?
……私にも分からん。
「あーしかしこんだけ人集めてやることが演習場の整備ってのが地味だよなあ。俺ひたすら草刈りしかやってないぞ」
「逆にこれだけ人を集めて一日で終わらないのだから大変な作業だろう。業者に委託するわけにもいくまい」
「……凄い経費かかりそうだな」
自衛隊の演習場は大抵山の中にありますが、放置して草やら木を生え放題にするわけにもいかないため、定期的に大規模な環境整備が行われます。
大きな演習場だと千人規模の隊員が集まり、ひたすら草刈ったり木を切り倒したりを何日も続けるのです。
というか演習場以外の施設も環境維持は自衛隊員自身がやるので、ベテランの隊員ほど銃の習熟と同じくらい草刈り機の扱いに長けていきます。
自衛隊の仕事とは一体。
「平和で結構じゃないか」
「まあひたすら訓練してるよりは楽しいけどなあ」
そしてそんな自衛隊生活を結構満喫しているらしい元騎士二人。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「日本人風呂好きすぎない?」
「姉上も好きでしょう」
風呂上がりの牛乳片手に言うアマテラス様とつっこむツクヨミ様。
風呂上りと言えば牛乳やコーヒー牛乳ですが、実は日本ではあまり牛乳を飲むという習慣はありませんでした。
以前紹介した蘇のように平安時代は割と扱われていたようですが、武士の台頭と共に牛より馬が重宝され牛乳も次第に廃れていったそうです。
また牛乳を飲むと牛になるという迷信もあったらしく、戦国のフリー素材こと織田信長はそれを聞いて「牛になるか試す」と言ってあえて飲んだという逸話もあるそうです。
そういうとこやぞ。
「とはいえ今のようになみなみと湯をはるタイプの風呂がずっと続いていたわけでもありませんしね。風呂という言葉自体が本来は蒸し風呂を指す言葉ですし。温泉自体は古くから存在していますが」
「ああ。スクナヒコナが生き返ったのも温泉だっけ」
スクナヒコナ様が蘇生した湯は現在の道後温泉であり、日本三古湯の一つとされています。
古事記にもそう書いてある。
現在は改修中なため本館の全景を見ることはできませんが、再生繋がりで漫画の神様な火の鳥とコラボしてアート展などが行われています。
「スクナヒコナが温泉の神格も持ってるのそれが理由だっけ。……ということは私も温泉で生き返れば温泉の神になれる?」
「そんな気軽に死なないでください」
そもそもアンタ(太陽神)が水に入った時点で本気出せばお湯になるだろというつっこみは控えるツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。