サンマが高い
「ウナギの蒲焼が食いてえなあ」
「すぐに取り寄せます」
「イネルティアの姉ちゃんこいつに甘くね?」
スクナヒコナ様の呟きを拾い、即座にウェッターハーン商会への連絡をとるイネルティアさんと呆れるサロスくん。
ウナギ美味しいからね。仕方ないね。
「というか蒲焼? ウナギって煮込むもんじゃねえの?」
「おー。こっちでもウナギ食うんだな。やっぱワインとかで煮込むのか?」
「知らねえ。ここではあんま食わないし、もっと西の方では頻繁に食うらしいけど」
日本人からすればウナギと言えば蒲焼ですが、ウナギというのは古来から各地で様々な食べられ方をしており、西洋でも燻製やフライ、煮込みなど古い調理の歴史を持っています。
最近の研究ではレオナルド・ダ・ヴィンチの描いた絵画「最後の晩餐」にも、ウナギのオレンジスライス添えが描かれていることが分かっています。
……ウナギのオレンジスライス添え?
「なら楽しみにしておけ。蒲焼は肉に負けないくらい美味くて食いでがあるぞ」
「え? イネルティアの姉ちゃんの態度的に、俺の分は用意されないんじゃないか」
「その時は俺のを分けてやる」
「……おまえいいやつだったんだな」
神様からお裾分けされるというある意味貴重な体験をするサロスくんと、実は結構サロスくんのことを気に入っているらしいスクナヒコナ様。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「夏の土用ですね」
「つまりウナギ」
「つまりじゃないです」
ツクヨミ様の土用発言から即座にウナギを連想するアマテラス様。
でも実際土用の丑の日の鰻という習慣は知っていても、土用が具体的に何なのか分かってない人も結構居そうです。
「それくらい知ってるもん! 四立の前の季節の変わり目のことでしょ。夏の土用なら立秋の前の18日!」
「ほほう。ではその土用の丑の日にウナギを食べる由来は?」
「美味しいから!」
「もうそれでいいです」
神格通りの眩しい笑顔で言われて、もうそれでいいやとなる、何だかんだで姉に弱いツクヨミ様。
ちなみに最近ではウナギのほとんどは養殖であり年中手に入るため、夏以外の土用の丑の日にもウナギを食べる習慣を広げようとする動きもあります。
「えー。それはそれで何か特別感が薄れてわざわざ食べようってならなくない?」
「では食べませんか」
「食べる」
「それでこそ姉上です」
ツクヨミ様の言葉に即座に答えるアマテラス様。
このイベントも美味しいものも大好きな主神が、二つの合わせ技な行事が増えるのを見逃すはずがありません。
ちなみにこんなにウナギ美味しい美味しいと頭悪そうな話を書いている作者ですが、魚介類食ったら吐くのでウナギは食えません。
でもそもそも異世界もの書いてる作者の大多数は異世界行ったことないので、深く気にしてはいけません。
今日も高天原は平和です。