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男だけど冷え性だと言ったら「…え?」という顔をされる

「異世界暑すぎでは?」

「おまえ元々こっちの世界の人間だろ」


 木陰になっている小川に足をつけて項垂れているイネルティアさんと、キュウリを丸々一本抱えて齧ってるスクナヒコナ様。

 某となりなアニメを見た全国のちびっ子が真似をするキュウリ丸かじりですが、実際そんな美味しいわけでもないのに一本完食してしまう不思議。


「他のエルフは平気なのに、何でイネルティアの姉ちゃんだけへばってるんだ?」

「向こうの世界の冷房に体が慣れ過ぎたんだろ」

「まあイネルティアほどではありませんが暑さに参っているエルフは多いですよ。森ではこれほど暑くなりませんでしたから」


 サロスくんの疑問に答えるスクナヒコナ様とフィデスさん。

 そのフィデスさんも暑さ自体には辟易しているようですが、まだイネルティアさんよりは余裕があるようです。


「え? 森って涼しいのか?」

「ええ。木々の葉に遮られて、このように陽の光にさらされることはありませんからね」

「あと植物が水を吸い上げて蒸発させる時に気化熱で冷えるらしいぞ」


 フィデスさんとスクナヒコナ様の説明通り、森というのは天然の冷却装置であるとも言え、大きな森があるだけで周辺の土地の気温が下がるとすら言われています。

 近くに人が歩けるよう整備された森や林があるという人は、散歩がてら行ってみるのもいいかもしれません。

 虫も大量にいるけどな!


「えー何でそんなとこから出てきたんだアンタら」

「森の中では木々が多すぎて大規模な農業には適しませんからね。森を守護するエルフとしては切り倒すわけにもいきませんし」

「そうそう。たまに勘違いしてるやついるけど、農業ってのは自然じゃなくてどこまで行っても人工の自然……不自然の産物だからな。自然に優しくならともかく、自然ママの環境じゃ無理だっての」


 そう言いつつも今度はトマトを抱えてかぶりつくスクナヒコナ様。

 農産物そんな食いまくっていいのかと思われそうですが、スクナヒコナ様が食ってる分は供物扱いで別管理になってるので問題ありません。


「私はもう水の中で暮らします」

「おっ。水棲エルフの誕生か」

「ノリで妙な新種を生み出さないでください。イネルティアも年頃の男子がいるのですから暑いなら他で涼みなさい」

「いや見てないし。見てないし」


 いよいよ耐えられなくなったのか川に飛び込んでしまうイネルティアさんと、呆れた目を向けるフィデスさん。

 あと見てないと言いつつ視線をチラチラさせている安定の思春期サロスくん。


 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「設定温度の改善を要求する」

「そこまでですか」


「直訴」と書かれた紙を押し付けながら言うアマテラス様と、おでこをぐいぐい押されながらもいつも通り冷静に返すツクヨミ様。

 うん。正直28度はてきとーぶっこきすぎました。ごめんね☆


「しかし姉上なら私の注意など無視して温度を下げると思ったのですが」

「下げてたわよ」

「何でばらすの!? ミズハっちだって涼んでたじゃん!?」


 ツクヨミ様の疑問にあっさり答えるミズハノメ様。

 そのミズハノメ様はアマテラス様より暑さに強いように見えますが、性格的に表に出さず我慢してるだけなので暑いもんは暑いのです。

 ツクヨミ様は常に背筋が伸びている男なのでお察しください。


「しかしエアコンが効きすぎるということはありませんでしたか。私としてはそこが心配だったのですが」

「え? エアコンって28度に設定したら28度になるんじゃないの?」

「システム的にはそうなっていますが実際にはそうなりません」

「……何で?」


 ツクヨミ様の言っていることの意味が分からずシンプルに問い返すアマテラス様。

 実際エアコンの設定温度より室温が下がるまたは上がることはあるので、気になる方は温度計などで別に室温を確認した方がいいかもしれません。


「エアコンの設置場所によっては、室温よりもエアコンのセンサーのある場所の温度が高くなったりするんですよ。特に直射日光があたるような壁際だと、エアコンの周囲の温度が下がらないのでエアコンが『まだ冷やさなくては』となって、実際の室温が設定温度より遥かに低くなったりするわけです」

「また太陽か!」

「アンタでしょうが」


 ツクヨミ様の説明を聞いて太陽にほえるアマテラス様とつっこむミズハノメ様(恒例行事)。

 逆に言えばエアコンの設定温度より室温が高くなる場合もありますし、そうでなくてもヤバいと思ったら素直に設定温度を下げましょう。

 命大事に。


「そういえばアンタが岩戸に隠れたら日食になるんだし、アンタが冷えたら太陽も冷えたりしないの?」

「え……? しない……はず?」

「そこまで連動してたら姉上が水風呂に入るたびに太陽が鎮火してますよ」

「だよね!」


 まさか自分は涼むことすら許されないのかと危惧したアマテラス様ですが、すぐさまツクヨミ様に否定されて安堵します。

 今日も高天原は平和です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 太陽の11年周期とかはアマテラス様と関係あるのかな?
[一言] 森は無視だけではなく微妙な泥濘だらけで中に入ると本当にきついスポットですよね 森ガールとか現実見て言えや!な気分・・・
[気になる点] ふと 先日あった日食とか この高天ヶ原姉弟だとどんな会話になるんだろう?
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