冠婚葬祭にも通用する万能衣装
「制服って楽でいいですよねー」
「いきなりどうしたの」
ガルディア王国とメルディア王国共同の学校にて。
書類整理が一段落つき、ティーカップを両手で持ち紅茶をすするちみっこ先生ことリョウコさん。
話題がいきなりすぎて差し入れのケーキを持ってきたオネエも呆れています。
「いや。最近色々面倒くさくなって、今日着るもの考えるのすら億劫なんですよね」
「やだ。この子仕事が忙しすぎて私生活ずぼらなOLみたいになってる」
リョウコさんの発言にだらしないと怒る前にこいつはヤベエと危機感を覚えるオネエ。
風呂に入ることすらサボり始めたら危険信号です。
「お金はあるんだから家政婦でも雇いなさいな」
「うーん。赤の他人が生活スペースに入ってくるの抵抗あるんですよね。あと真面目な話なんですけど、身分関係なく入学させてるせいで派閥できちゃってるみたいなんですよね」
「あーそれは仕方ないんじゃないかしら」
「だから制服導入すれば少しは解消されるかなって」
「あんまり効果ないと思うわよ。この場合貧富の差じゃなくて階級差だし」
制服により貧富の差が露見しないというのはよく言われていますが、そもそも異世界では貧富の差どころか貴族とその他、あるいは貴族同士ですら明確な差があるので効果はないだろうというオネエ。
登場人物がその辺りあまり気にしない人ばかりなので、地の文で説明してもまったく説得力がありませんが。
「学則で縛るにしても最終的に交友関係なんて個人の自由であって制限できるものじゃないもの。まあ平民出身の役人増えていがみ合いが既に発生してるんだから、予行演習とでも思っておけばいいんじゃない?」
「なんでいがみ合いほったらかしてるんですか!?」
「きっちり仕事して不正しないなら別に仲良しこよしじゃなくてもいいわよ」
生徒たちの関係性に悩んでいたら、大人たちの関係はもっと地獄だと知り叫ぶリョウコさん。
対してもうその辺りは諦めているらしいオネエ。
こんな根が深い問題一発で解決する方法とかあるわけないからね。仕方ないね。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「そういえばブルマって既に絶滅してるのに、アニメとかだと相変わらず見かけるよね」
「『そういえば』で唐突に話題ふってくるにしても限度があるでしょう」
姉から突然ブルマの話題をふられた弟の心境やいかに。
ちなみに公式には2004年に公立学校から、2005年には私立学校からもブルマは完全に廃止されたそうです。
一応一部の幼稚園などでは現存しているのがちらほら確認されているという報告もありますが。
「あとセーラー服とかも減ってるし、一言に制服と言っても年代で結構変わってくるなあって」
「場所にもよるでしょうね。ロシアではメイド服風の制服もあったそうですし」
「何それ見たい」
メイド服風の制服と聞き食いつくアマテラス様。
ちなみにそのメイド風制服はロシアの伝統的な制服であり旧ソ連時代までは存在しましたが、今では制服自体が廃止されており卒業式などでのみ着用されているそうです。
「お願いしたらトヨちゃん着てくれないかな」
「それは是非見て……トヨウケヒメに変なことを強制しないでください」
本音が八割方飛び出したものの理性が勝ったらしいツクヨミ様と、この弟真面目なように見えてムッツリだよなあと悟られないよう笑顔のまま考えるアマテラス様。
あと「むしろアマテラス様が着てるの見たい」という人が一定数現れそうですが、そんなもん描いてくれる人なんざ天文学的な確率潜り抜けないと存在しないので諦めましょう。
今日も高天原は平和です。