毒とかありそう
「今年も春の大討伐の時期がやってきたな!」
「離せー! 俺は一般人だー!」
「ドラゴンを単騎で倒せる人間は一般人ではないぞ」
メルディア王国にて。
いい笑顔で竜王山のドラゴンの間引きの準備を進める団長と、逃げようとしたもののオネエに羽交い絞めにされ身動き取れないカオルさん。
自分は一般人だと主張していますが、それを聞いていたグレイスからもっともなつっこみが入っています。
「えーアレくらいこの国の騎士ならできるんじゃ」
「評価が高いのはありがたいが、ドラゴンは一流の騎士でも数人がかりで挑む相手だ。ちなみにこの国は竜王山と領地が接しているので他国と比べても精強な騎士が揃っている」
「えーと……つまり?」
「やったわね英雄になれるわよ」
「なりたくねえ!?」
英雄になれと言われても拒否して暴れるカオルさんとそれでも拘束はゆるめないオネエ。
その英雄クラスな人間あっさり押さえ込んでるオネエは何なんだと言われてもオネエなので仕方ありません。
「それにこの国に恩売って損はないわよ。大公さんの後を継がないにしてもアルジェント公国には住み続けるんでしょう。殿下ったらいまだにアルジェントからもっと搾り取れないかと狙ってるのに、実行しないのはアンタが抑止力になってるからなんだし」
「あの王子様うちになんか恨みでもあるの!?」
恨みがあるのかと言えば単純に最近大公さんが調子に乗ってて気に食わないだけなのですが、その大公さんが調子に乗ってるのはカオルさんという抑止力を得たからなので元をただせばカオルさんのせいだったりします。
世の中案外うまく回っているものですね。
それはともかくとして大公さんは後日カオルさんにアイアンクローで宙吊りにされることが決定しました。
「それに神様に槍返して戦闘力下がったって言ってただろ。そんなの気のせいだと修行の成果を示すいい機会だ」
「修行させてる時点で気のせいじゃないですよね!?」
果たしてカオルさんは神の槍なしで英雄になれるのか。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「ドラゴンって食べられるのかな?」
「どこからそんな発想拾ってきたんですか」
なんか凄いこと言い出したアマテラス様に呆れた目を向けるツクヨミ様。
でもファンタジー作品だと割と珍味として登場する機会が多い気がするドラゴンの肉。
「それはドラゴンを倒せる人間が少ないからこその珍味扱いであって、味を保証するものではないのでは」
「でも日本ではともかく海外では爬虫類食べるところもあるよね」
「アレを爬虫類に分類する気ですか。いえ確かに地球の種で言えば爬虫類でしょうが」
ちなみに爬虫類の肉は種として近い鳥肉の味に似ているものが多いそうです。
特にワニ、ヘビ、カメなどは食用にするために飼育されている種もあります。
「え? ワニも? 肉食動物って肉が生臭いって聞くけど」
「そこはやはり餌で変わるそうですね。魚を餌にしていると生臭くなるので鳥肉などを与えるそうです。そして味もやはり脂ののった鳥肉に近いと評する人が多いとか」
「へー。狸も食べる時って木の実とかが多い時期にするらしいし餌って大事なんだね」
「何でそんなことを知ってるんですか」
何故か唐突に例えに出された狸。
でも実際野生動物の中でも雑食性のものはアマテラス様の言う通り時期によって餌で肉の質が変わったりするので、食用にする時期は考えるそうです。
「でも見た目恐竜なワニが鳥肉な味ならドラゴンも鳥肉な味なのでは?」
「……そうかもしれませんね」
(説得された!?)
珍しくアマテラス様に論破されてしまったツクヨミ様と、この流れはもしかしてドラゴンの肉を調理させられるのかと戦慄するトヨウケヒメ様。
今日も高天原は平和です。