焼き芋食べたい
「健康診断とか言われても。私の諸々の数値って人間の範疇に収まっとるん?」
「私も神様の加護とかどうなってるんでしょう」
病院の待合室で結果を待つ魔王様とアスカさん。
片方は何か頭から角生えてるし、片方はアテナ様の加護で身体能力がおかしいしで、明らかに普通の人間ではないのでそう思うのは仕方ありません。
「お待たせしました。お二人とも異常はありませんでした」
「何でやねん!?」
結果を知らせに来た医者に全力でつっこむ魔王様。
さっきも言ったように見た目からして明らかに普通の人間ではないので、問題ないと言われても信用できません。
「アスカちゃんはなんか神様の不思議パワーのせいやから百歩譲るにしても、私とか身体構造からして変わっとるやん!? 何で異常が出て来んねん!?」
「いやーそれが数値上は適正範囲内ですし、血液から何か未知の物質が出るとかいうこともなく普通の人と変わりないんですよね。異常がないのが異常とか参りましたよねアッハッハ!」
「あ、なんかすいません」
いきなり笑い出したけど目が笑ってない医者を見て察する魔王様。
要は異世界ファンタジーに現代科学が敗北しただけでした。
「じゃあ魔王さんの角からサンプル取って遺伝子鑑定しても普通の人間と同じものが出るんですか?」
「アスカちゃん私に何か恨みでもあるん?」
アスカさんの言葉を聞き笑うのをやめて再起動する医者と、これから何が起きるのか察してげんなりとする魔王様。
その後魔王様の角を削ってサンプルを取ろうとしたものの、まったく歯が立たずかすり傷すらつけられずまたしても現代科学が敗北するのでした。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「秋分の日が来たと言うことは暑さ寒さも彼岸までが発動する?」
「暑さ寒さも彼岸までは慣用句であって特定条件下で発動するイベントではありません」
夏のお彼岸が秋分を指すというのを覚えていたらしく何故かわくわくしているアマテラス様と、ばっさり切り捨てるツクヨミ様。
でも最近暑さもやわらいできたのですごしやすくなってはきています。
だが台風てめえは駄目だ。
「でも実際春分秋分頃が境目って納得だよね。昼夜の時間差が一緒になるわけだし」
「まあ実際には昼の方が少し長いんですけどね」
「ぱーどぅん?」
ツクヨミ様の言葉に思わずひらがな英語で返すアマテラス様。
でも実はpardonは中学校で聞き返すときに便利な言葉として習うくせにネイティブは使わなかったりします。
謀ったなシ〇ア!?
「え? 実は太陽ズレてんの?」
「いえ太陽はズレていません。大気による光の屈折や、太陽の上端を基準にして日の出と日没とするなど様々な理由で観測側に微妙にズレが出るわけです。まあそれでも昼の方が長いのは十数分くらいと誤差ですが」
「つまり私の存在感が大きすぎると」
「何故そのような結論に至ったかは分かりませんがもうそれでいいかと」
アマテラス様の言葉を投げやりに肯定するツクヨミ様。
でも実際大気による屈折はともかく、上端を基準とするせいでズレるのは太陽が大きいせいなのであながち間違っていません。
今日も高天原は平和です。