普段よく目にするけど実は正体がよく分からない系飲食物
「わー魔法陣ってなんだかキラキラしてるんですね」
「んー? 転移系にしてはえらい窮屈というか制御に殆ど割合くわれとんやないこれ」
フィッツガルド帝都の地下にて。
新たに日本に戻ることになったアスカさんと、一時帰国することにした魔王様。
何気に魔王様が魔術のまの字も知らないのに感覚だけで魔法陣の内容見抜いちゃってますが、魔王様なので仕方ありません。
「……アレ? 俺第一陣は無理でも第二陣で帰るはずでは!?」
「今更気付くとかやっぱり君流されやすいね」
一方着々と転移魔術の準備をしていたものの、重大な事実に気付いて驚愕するカガトくんと呆れるローマンさん。
カガトくんが鈍いのは己の心を守るための防衛反応も入っているので見逃してあげてください。
「いやちょっとこのまま帰すのはちょっと不安というか。来月にでも男爵になるからそのつもりでいてくれたまえ」
「何故に!?」
何か知らないうちに爵位もらうことになっていて驚くカガトくん。
ちなみにフィッツガルドでは男爵は爵位としては最下位で領地とか持ってなくても功績をあげればもらえます。
つまりカガトくんが男爵位をもらうのは何もおかしくありません。
「いやおかしいでしょう!? 俺そういう余計な肩書とかいりませんから!」
「いや余計じゃないから。君を守るためにやってるんだよ」
「……はい?」
また勝手に政治闘争にでも利用されるのかと憤るカガトくんですが、自分のためと言われて首を傾げます。
「日本側だってアダチ閣下が優秀なおかげで目立たないけど一枚岩ではないからね。日本に帰る予定の日本人の中では君が一番利用されやすそうだから『手を出したらフィッツガルドが黙ってはいないぞ』と身内として扱っていると示すためだよ」
「あーなるほど」
ローマンさんの説明に納得するカガトくん。
ちなみに今まで皇帝陛下の無茶ぶりの中には同じ目的のものが幾つかあるのですが、本人が説明不足な上にローマンさんもそこまでフォローする気がないのでカガトくんの忠誠心は下がったままです。
でも直接の雇い主のヴィルヘルミナさんへの忠誠心は上限値突破しているので問題ありません。
「そういうところに気が回らないのは欠点ではあるけど、野心がないという意味では当主を務める女性貴族の配偶者に向いてるのかもね」
「え? まさかさらに政略結婚でもさせられるんですか」
「いや違うからね」
ちょっと揺さぶりをかけたつもりが明後日の方向の心配をするカガトくんを見て、最近心揺れてるらしい元婚約者にちょっと同情するローマンさん。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「え? バニラシェイクって溶けたバニラアイスじゃないの?」
「違いますよ」
溶けかけの安っぽいバニラアイスをかき混ぜながら言うアマテラス様と、溶けないうちにさっさとチョコアイスを食べきっているツクヨミ様。
溶けかけでシェイク状態のバニラアイスは独特の美味しさがあると思います。
「牛乳に甘味料などを混ぜて作られる乳飲料がシェイクです。そういう意味ではバニラアイスにも乳成分は含まれては居ますが」
「じゃあやはり溶けたバニラアイスはバニラシェイク」
「違いますよ」
カップを傾けて「ずぞぞぞぞ」とバニラシェイク(仮)を飲み干して言うアマテラス様とつっこむツクヨミ様。
ついに行儀が悪いとかいう方面のつっこみは諦めたようです。
「あとは似たものとして果物や野菜を凍らせてミキサーなどで攪拌したものがスムージーになりますね。まあスムージーに牛乳を加えることもあるのでその場合はシェイクとスムージーどちらなのか曖昧になりますが」
「じゃあやはり溶けたバニラアイスもバニラシェイクでいいのでは?」
「違いますよ」
何故か強硬に溶けたバニラアイス=バニラシェイク説を推すアマテラス様と冷静に否定し続けるツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。