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冷やし中華始めました

「一度帰ろうかと思うのです」


 安達家のリビングにて。

 まだまだ暑い今日この頃、冷やし中華をズズーっとすすった後に唐突に言うイネルティアさん。


 ちなみに冷やし中華は例によって中華を名乗っていながら中華ではない日本生まれの料理なので「夏と言えば冷やし中華だよね」と中国人に言うと「おまえは何を言ってるアルか?」と返されます。

 ついでに中華そばといえばラーメンのことですが、これまた例によって本場からはかけ離れているので中国では日式拉麺と呼ばれています。

 届かぬ思い。


「どうしたんじゃ? あんな頭の固い連中しかいないところには戻りたくないと言っておったじゃろう」

「それが一族の若い者たちが森を脱出して人間の村で農業を始めているらしくて」

「わし長いこと生きとるがそんなフリーダムなエルフの一族初めて聞いたぞ」


 一人二人の変わり者が森から出て行くならともかく、若い連中が揃って脱森して農業ライフ。

 保守的だったころの面影の欠片もありませんが、大体イサオさんのせいです。


「私が召喚返しされた切っ掛けのイサオもその若い者たちに随行しているそうなので、一度様子を見に行こうかと」

「ああ。それなりの歳だったんじゃったか。そりゃすぐに会いに行かんとエルフ基準でのんびりしていたらいつの間にか亡くなっているやもしれんな」


 そういうリィンベルさんですが、イサオさんは今ノリに乗っていてむしろ一番人生をエンジョイしている時期なので多分あと数十年は死にません。


「あとこちらの素晴らしい料理を皆にも広めねばと」

「……大丈夫かのう」


 エルフたちがかつてのイネルティアさんのように集団でふくよかになっているのを想像し、止めるか一瞬悩むリィンベルさん。

 でもどうせイネルティアさんが行かなくても食の伝道師と化しているジュウゾウさんがいるので、早いか遅いかの違いでしかありません。


 今日も日本は平和です。



 一方高天原。


「え? 冷やし中華って中国関係ないの?」

「むしろ中国人には合わない料理だと思いますよ」


 冷やし中華にマヨネーズをかけながら言うアマテラス様と、断固マヨネーズはかけない派のツクヨミ様。

「むしろ冷やし中華にマヨネーズかけるの!?」と驚く人もいるかもしれませんが、それを口にしたらキノコタケノコ並みの戦争が勃発するので胸にしまっておきましょう。


「中国では冷たい食べ物は体によくないとされていますからね。生の野菜も遠ざけますから冷やし中華は中国人ならまず出ない発想の料理ですよ」

「あー、なんか中国では夏でも冷たいお茶は飲まないとか聞いたけど」

「最近はそうでもない人は増えているそうですけれどね。あと冷や飯も囚人の食べ物ということで嫌います。なので日本人が弁当を温めずに冷たいまま食べるのは中国人には理解できないそうです」

「えー? むしろ冷たくなるのまで計算に入れて作るのが弁当なのに」


 ちなみに中国人が生野菜を食べないのは衛生環境の問題や寄生虫の問題であるとされており、必ず火を通すのもそのためだと言われています。

 逆に言えば火を通すことにはかなりの情熱を注いでおり、炒めるという調理法だけでも十以上の種類があるとされ、同じ材料でもその炒め方の違い、または調味料の違いで別料理となります。

 ……つまりどういうことだってばよ!?


「要するに一つの材料を炒めるだけでも炒め方と調味料の組み合わせ次第で百近い料理に分かれます」

「そんな細分化されても食べても違い分からない人いるでしょ。私とか」

「これについては私もあまり自信がありません」

「トヨちゃんなら分かるかな?」

「……トヨウケヒメなら分かるかもしれませんね」

「いや分かりませんよ!?」


 いきなり無茶ぶりをされ慌てて台所から顔を出して否定するトヨウケヒメ様。

 今日も高天原は平和です。


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[一言] ↪︎逆に言えば火を通すことにはかなりの情熱を注いでおり、炒めるという調理法だけでも十以上の種類があるとされ、同じ材料でもその炒め方の違い、または調味料の違いで別料理となります。  ……つまり…
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