もはやフリー素材な神々
「ただいまー。元気だったかリチャー……」
「アザヒーーーー!!」
ガルディア王国にて。
里帰りが終わり戻ってきた王妃様と、その王妃様を抱きしめぐるんぐるんと回転を始める王様。
回転してるところだけ聞くと某アメリカンなアニメのイメージですが、実際には殺人メリーゴーランドとかそんな感じの拷問です。
「……止まれ!」
「ガハアッ!?」
しばらくは「寂しかったんだろうなあ」と好きにさせていた王妃様でしたが、内臓が口から飛び出そうになってきたので王様の顎下に頭突きをかましました。
頭蓋骨は人体でも重要な脳を守っているだけあり、肘や膝の骨と並んで人体でも硬い部分なのでリスクはありますがダメージを与えるには有効な武器です。
竜殺し一歩手前な王様だからほぼノーダメージなだけなので人類は真似しないでください。
「まったく。何でそこまでテンション上がってんだよ。シーナが少し前に戻って来てるだろうが」
「妹と妻は別腹だ!」
「言い方!? おまえ妹じゃなかったら俺が娶ってたとか言い出さないだろうな」
「よく分かったな。幼い頃はよく言っていた」
「……」
王様の自白に果たして幼い頃だからセーフなのか、それともその延長線上にこのシスコンが居るのでアウトなのか悩む王妃様。
今までの時点で割とアウトな気がしますが、王妃様はこれでもちゃんと王様を愛しているので恋は盲目的なアレでギリギリセーフに収まっています。
「それよりも久しぶりに戻ってきたのだから夫婦水入らずで……」
「あ、色々と資料やら書類を日本で預かってきたぞ。流石日本人同士で話が通じやすいってとんとん拍子で進んだ案件もあったし、これで他の国より一歩進んで――」
「どっせい」
「何すんだゴルァッ!?」
王妃様が次々に出してきた紙の束をテーブルごとぶん投げる王様。
相変わらず仕事とプライベートの比重が夫婦で違い過ぎます。
「おまえ色ボケるのもいい加減にしろよ!?」
「何。日本では事が終わった後を『賢者タイム』というのだろう。つまりやることをやった後の方が効率は高まる!」
「おまえどっから聞いてきたそれ」
王妃様を担いで歩き始める王様と、もはや諦めたのか大人しく運ばれる王妃様。
ちなみに賢者タイムは、イギリスのノッティンガム・トレント大学で研究され、実際に仕事の効率アップに繋がるという結果が出ています。
流石英国紳士レベル高ぇな。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「私の精霊馬Mk-IIが……」
「名前ついてたんですかあの精霊馬」
具沢山のカレーを前にして落ち込むアマテラス様と、呆れたような視線を向けながらカレーを食べるツクヨミ様。
例によって影響を受けやすいアマテラス様が茄子を使って人型精霊馬を作ったのですが、トヨウケヒメ様の手によって煮込まれ美味しいカレーになりました。
そのまま放っておいたら腐るからね。仕方ないね。
「人型の時点でもう精霊馬ではないですし、そもそも私たちには精霊馬に乗って帰る先祖とかいないでしょう」
「……お母さんある意味その立場じゃない?」
「母上に人型精霊馬に乗り込んでどうしろと」
ちなみにそれなりに古いアニメの中には。スサノオという名前のロボットに乗り込むヤマトタケルという作品もあったりします。
子供なので素直に受け入れていましたが、今考えると設定が自由すぎて感動すら覚えます。
「くッ。やはりそういう方向で作品展開されるのは私よりスサノオなのか……!」
「ロボットになって戦いたいんですか姉上」
アマテラス様の名前を冠したロボット。
探せばどっかにありそうだと思って検索したら実際にあった日本マジフリーダム。
今日も高天原は平和です。