ブラックなのはコーヒーだけでいいです
ガルディア王国とメルディア王国の国境にある小さな村。
だったはずが、両国共同の学校が設立されたせいで教師が集まり生徒が集まり商売のチャンスだと商人が集まりと、いつの間にかそれなりの規模の街になってきた場所にて。
いつの間にか何か流れで教頭という立場に据え置かれてしまった日本人な明智リョウコさんは、今日も元気に仕事をしています。
「いや、やることなすこと前例がないから処理にめっちゃ時間がかかるんですけど。もう日本から管理職経験のある学校関係者呼んだ方がよくないですか?」
「その日本の管理職経験者も異世界の学校事情なんて分からないと思うわよ」
教頭と書かれたプレートの置かれたでっかい机の前でちっさい体で書類を捌いていくリョウコさん。
一応リョウコさんが今の立場になったのには自分も責任があるので定期的に様子を見に来ているオネエですが、なんだかんだ言って仕事は完璧に終わらせるからこの子凄いわあと感心しています。
「それにしても平教師になりたいってしょっちゅう叫んでるから、さっさと辞めて日本に帰るんだと思ってたんだけど」
「だって……私が居ないとこの学校運営できないんですもん!」
「それ典型的な社畜の考え方だから少し仕事の分配の仕方見直したほうがいいわよ」
今のリョウコさんのような上位の立場ならある程度は仕方ありませんが、平社員なのに「私が働かないとこの会社潰れちゃう」とか思っちゃうのは十中八九ただの気のせいなので思いつめるのはやめましょう。
仮に専門的な職種であり居なくなったら本当に潰れるとしても、それは会社側の体制の問題であって平社員が背負うものではありません。
「でもね。この学校の生徒も素直な子が多くて可愛いんですよ。私あんまり授業とかに関わらないのに『教頭先生お疲れ様です』って声かけてくれる子がいてね」
「愛されてるわねー」
その成人しているとは思えない外見のせいで、実は教頭というよりマスコット的な感覚で生徒から愛されている明智リョウコさん24歳(サ〇エさん時空なため年齢加算は見送り)
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「やっぱり夏は麦茶だね!」
「まあトヨウケヒメが麦茶を大量に作り置きしていると夏が来たという感じがしますね」
腰に手を当て麦茶を一気飲みするアマテラス様とちびちびと少しずつ飲むツクヨミ様。
実際麦茶には汗をかいたときに失われるミネラルが含まれている上に、ノンカフェインでカロリー控えめと夏の水分補給におススメです。
「しかしそんなに冷たいものを一気に飲むと体に悪いですよ」
「でも暑いんだから体冷やしたいし」
「冷たいものを飲み食いしたところでたかが知れてますよ。むしろ内臓だけ冷えて夏バテが加速します」
「なん……だと?」
暑さ対策で冷たいものをとっていたのに、むしろそのせいで夏バテすると聞き驚愕のアマテラス様。
そんな大袈裟なと思う人もいるかもしれませんが、ちょっと食欲ないなあという人は、ただ暑いせいではなく冷たいものを取りすぎて胃腸が弱っている可能性もあります。
中国人が夏でも熱い茶を飲んでいるのは伊達や酔狂ではないのです。
「ええ。じゃあこのクソ暑いのにあったかいもの飲んであったかいものを食べた方がいいの?」
「インドや東南アジアでカレーが食べられているのもそういう関係でしょう。むしろ汗をかく方が健康的なんですよ」
「えーでもやっぱりしんどいしなあ」
「それに冷たいものばかりだと代謝が衰えて太りやすくなります」
「トヨちゃんあったかいお茶ちょうだい!」
夏太りの原因が判明し即座に対応に乗り出すアマテラス様と、空気に負けないくらい生温い視線を向けるツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。