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集めたはいいもののいつの間にかなくなってるセミの抜け殻

「ローマン殿。ようこそ我が国へ……って大丈夫でござるか?」

「ふっ。ヤヨイさんの顔を見たら疲れなどふっとヴぉえ……」

「ダメみたいでござるな」


 フィッツガルドの東の海のさらに先。

 本格的な使節団を送る前の先遣隊としてホムラ国の港へ降り立ったローマンさんですが、その顔色は悪く今にも吐きそうです。

 というか思い人の前だから気合で吐き気を抑えこんでいます。


「そんなに皇帝付きの仕事は激務なのでござるか?」

「激務ではありますが吐きそうなのは疲労ではなく船酔いブォエッ!?」

「ああ。そっちでござるか」


 話してる最中にもえずいてるローマンさんと納得するヤヨイさん。

 船酔いごときで大げさなと思うかもしれませんが、長時間の航海となると船酔いから脱水症状を起こし死亡することは普通にあります。

 また現代の大型船は揺れを抑えるための装置が取り付けられており、それがない船というのは大型船でも現代人が思う以上にめっさ揺れます。

 決してローマンさんが軟弱なわけではありません。


「それで後ろで胃液すら全て吐き出さんとばかりに海へ唸ってるのはお付きの人でござるか?」

「いえ。彼は例の門の魔術を実用化させた魔術師で……大丈夫かいカガト?」

「……」


 へんじがない。ただのしかばねのようです。


「そんな。カガト。君が死んだら誰がこの国への転移座標を設置するんだ」

「いや……それ別に俺じゃなくてもよかったですおぉえっ!?」

「うぇっ!?」

「つられゲロあるあるでござるな」


 どうやら生きていたらしく文句を言うものの途中で吐くカガトくんと、そんなカガトくんを見てとうとう我慢できず吐くローマンさん。

 何この話汚い。


「や、ヤヨイさん。私はもうだめです……せめてこの書状を将軍閣下に……」

「いやそんなに急がずとも普通に休んで体調を整えやがれでござる」


 恋人の前で吐いて色んな意味で死にそうなローマンさんと、最初の出会いがアレだったのでまったく気にしていないヤヨイさん。

 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「……悪魔たちの声が聞こえ始めた」

「それまさか蝉の鳴き声ですか?」


 雨も少なくなりちらほらと姿を見せ始めた蝉たちに戦慄するアマテラス様とつっこむツクヨミ様。

 網戸にひっついて鳴くんじゃねえ!?


「いやただでさえ暑いのにあの鳴き声聞き続けてると余計に疲れるんだよね。そういえば都会だと夜中でも蝉が鳴くとかいう悪夢みたいな話を聞いたけど」

「本当ですよ。まあ昼間ほど大量には鳴かないと思いますが」


 皆さん知っての通り蝉は本来日中に鳴くものですが、ここ十数年ほどで夜にも鳴く蝉が増えています。

 原因は街灯で明るかったり熱帯夜のせいだとされています。

 またタイなどでは蝉は夜鳴くのが普通なため、むしろ本来は夜行性なのではないかという説もあります。


 また蝉が成虫になってからの寿命は昔は一週間、最近では一ヶ月という説が主流になっていますが、今年に入り岡山県の高校生が独自調査で実際の生存期間を確認したことでちょっとしたニュースになっていたりします。


「あと夕方暗くなりかけてるときに庭散歩してたら地面に落ちてた蝉がいきなり暴れはじめて泣いたんだけど、何であいつら死んだふりするの?」

「それ死んだふりじゃなくて本当に死にかけてるんですよ。というか蝉が鳴いたんじゃなくて姉上が泣いたんですか」


 通称セミファイナル。

 皆さんも地面に蝉が落ちていたら油断せず覚悟してから近寄りましょう。


 今日も高天原は平和です。

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