今年も家の前の道が川になる
「グラウゼ。魔族って日本ではどう思われとん?」
「いきなり呼び出したと思えばそんなことか」
魔王様のおわす魔王城にて。
隠居宣言したにもかかわらず早速呼び出され何だと思いながらやってきたグラウゼさんでしたが、内容はグラウゼさん的には非常にどうでもいいことでした。
日本暮らしが長く丸くはなりましたが、基本的には人間とかどうでもいいので自分の評価とかあんま気にしてません。
「とりあえず恐れられてはいないな。屈辱的な事に」
「そこ屈辱なんや」
「当たり前だろう。私が何のためにわざわざ日本に乗り込んだと思っている」
ちなみにグラウゼさんへの日本人の印象は、最初はアマテラス様にフルボッコされた可哀想な人で、最後の方は猫と一緒に悪人退治をして回っているご当地ヒーロー的な何かです。
多分ほとんどの人が吸血鬼だということすら忘れています。
「んーじゃあ角が生えてるくらい気にされんかなあ」
「何を悩んでいるかと思えばそんなことか。あちらでは猫耳やら長耳を尊重する連中が居るのだから角を好む人間も居るのではないか」
「それ尊重とはちょっと違うし角はニッチすぎへんかな」
そういう魔王様ですが、ケモ耳萌えやエルフ耳萌えと同じように角萌えという人たちは存在します。
某ラブコメ作品の鬼っぽい宇宙人ヒロインなどは未だに根強い人気を誇っていたりと割と歴史のあるジャンルです。
「え? 私萌えられるん?」
「不敬だな。燃やすか」
「アンタ意外に過激というか私のことそんな敬っとったん!?」
前魔王の腹心故に現魔王にはあまり興味がないのかと思えば、魔族としての誇りゆえに実は魔王ガチ勢(過激派)だったグラウゼさんに驚く魔王様。
今日も魔界は平和です。
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一方高天原。
「今年は涼しいですね」
「……罠か!?」
「誰のよ」
ツクヨミ様の言葉に何故か警戒するアマテラス様と、麦茶を飲みながら呆れる久々の登場なミズハノメ様。
現在絶賛梅雨でミズハノメ様の季節です。
「えーいくら何でも涼しすぎない? 私去年の今頃は太陽消滅させる計画練ってたと思うんだけど」
「だから姉上は何故ナチュラルに自殺しようとしているんですか」
「この子ほとんどノリと勢いで喋ってんだからつっこんでも無駄よ」
アマテラス様の言葉に呆れるツクヨミ様と色々諦めているらしいミズハノメ様。
そもそもこの作品自体がノリと勢いで構成されているので考えるだけ無駄だし、伏線ぽいものを作者がはった覚えはありません。
「まあ今年は十六年ぶりの冷夏だそうですからね。しばらくは涼しいままだそうですよ」
「何それ最高じゃん」
「しかしあまり涼しい日が続くと作物に影響がないか心配ですね」
「何それミズハっち酷い」
「さらりと私のせいにするな」
「いひゃい!?」
ミズハノメ様のデコピンが炸裂し悶絶するアマテラス様。
水を司る神様だからね。仕方ないね。
「雨降りすぎなのも問題だけど。雨降らなきゃ降らないで文句言われるんだからたまったもんじゃないわよ。局地的な大雨はともかくゲリラ豪雨は人間の自業自得だっていうのに」
「そうなの?」
「姉上で言えばヒートアイランド現象を姉上のせいにされるようなものです」
ちなみにゲリラ豪雨の原因の一つはヒートアイランド現象だという説もあります。
太陽の熱と雨には密接な関係があるのです。
「ということはやはり私とミズハっちは魂の双子」
「魂も何もアンタ私が一応姉だって知ってる?」
「知ってるけど見た目的に姉って感じがしない」
「アンタに言われたかないわよ!?」
「うにゃあ!?」
「あまり暴れないでくださいよ」
姉妹喧嘩を始める二人と、口では止めつつもガン見している安定の冷静百合好きシスコンなツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。