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市販のカップかき氷が固すぎてスプーンが折れた

「どうも。こちらでお世話になっているアルフレート・フォン・デンケンの息子でローマンと申します」

「うん。ちょっと待って」


 いきなり従業員の息子だと名乗り始めた、着ている服は庶民だけど明らかに立ち振る舞いが貴族な青年に、現状を認識する時間を下さいと訴えるジュウゾウさん。

 ジュウゾウさんは未だにデンケンさんが引退した元侯爵閣下という事実すら受け入れきれてないチキンハートの持ち主なので優しくしてあげてください。


「えーと、息子さんということは現デンケン侯で?」

「それは兄ですね。私は爵位を継ぐ予定もない気楽な次男坊です。今は皇帝陛下の命で政務の手伝いなどをしていますが」

「……気楽?」


 それ下手すりゃ領主より面倒くさいんじゃないかと首を傾げるジュウゾウさん。

 実際周囲からやっかみを受けかねない大抜擢なのですが、そんな未来を懸念していたグライオスさんの書状の効果により、下手にちょっかいだしたら前皇帝が舞い戻りかねないと遠巻きにされています。

 実際のところグライオスさんは名前を貸すつもりはあってもそこまで面倒みる気はないのですが、バレなければ問題ありません。


「それで本日はどのようなご用件で」

「かつ丼が食べたくなりまして」

「個人的!?」


 何か仕事で来たのかと思ったら、思いっきり自分の都合で来ただけだったローマンさん。

 あと意外にがっつりしたものを食べたがってるのは、予想通り皇帝陛下のところでこき使われて疲労とストレスがたまっているからです。

 とはいえ疲れすぎてると肉食っても逆効果なので体調とよく相談しましょう。


「あと何か日本から入用なものとかありますか? 知り合いが門を開く魔術を使えるようになったので、ちょっとしたものなら密輸できますよ」

「そんな爽やかな笑顔で!?」


 さらりと言い放つローマンさんに驚愕するジュウゾウさん。

 大丈夫。未だ異世界間の法整備が追いついていない今ならセーフです。


「……なら幾つか調味料と調理器具を頼みたいのですが」

「分かりました。できればなるべく詳しく型番などを」

「型番とな」


 そして驚いたものの誘惑には抗いきれず結局頼んじゃうジュウゾウさん。

 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「かき氷のシロップが実は全部同じ味ってマジ?」

「マジです」


 いちごシロップのかかったかき氷を片手に衝撃を受けているアマテラス様と、マイペースにレモンかき氷食ってるツクヨミ様。

 練乳はお好みでおかけください。


「とはいえ原料が同じと言うだけで香料は別のものが使われていますし、レモンにはレモン果汁が入っていたりと微妙には違いますよ。最近人気の抹茶は抹茶がそのまま入っていますから特に違いは大きそうですね」

「あー匂いって結構大きいもんね」


 ちなみに原料と味が同じというのは皆さんご存知瓶入りのシロップの話であって、同じ会社でも別のシリーズのシロップや他社のものとなれば当然味自体が結構違います。


「最近では店で出ているような専門店のかき氷を自宅でというコンセプトで開発されたシロップもあるそうですよ」

「え、じゃあそっちのシロップ買って来ようよ」

「私はこの定番の嘘くさい味が好きなんですよ」

「そうなの!?」


 いつもだったら自分が言いそうなツクヨミ様の意外な好みに驚くアマテラス様と、最後に残った溶けた氷とシロップの混合液をズゾーっと飲み干すツクヨミ様。

 今日も高天原は平和です。

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