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天ぷら油火災にマヨネーズをぶちこんではいけません

「そういえばカオルは日本に帰らないの?」


 アルジェント公国のとある街にて。

 今日の夕食である天ぷらをはぐはぐと食べながら、ディレットさんが思い出したように言います。

 天ぷらといってもカオルさんに天ぷらの正確なレシピなんて分からないので、卵と水と小麦粉を勘でぶちこんで混ぜたものを衣にしてあげただけです

 細かいことを気にしない二人なので、とりあえず火が通ってて味がついてればOKなので問題ありません。


「ああ。帰ってもなあ。……俺どうせ元々無職だし」

「そうなの?」


 顔に影を落とし自虐的に言うカオルさんと、人魚なので職の重要性が分からず首を傾げるディレットさん。

 一応他の人魚と一緒に漁をしてお金は貰っていますが、ないならないで最悪自給自足で生活できるのであまりお金の大切さは分かっていません。


「都会で時間に追われて生活するよりここの方が性に合ってるしなあ。もうほとんどここに骨埋めるつもりだけど」

「つまり私の後を継いで大公になる決心をしたわけですね」

「……」

「ああ! 痛い! 頭が痛い!?」


 どこからともなくにょきっと生えてきた大公さんの頭を鷲掴み、無言で持ち上げるカオルさん。

 最近オネエとの特訓でレベルアップしており、本気でやったら大公さんの頭が林檎みたいに潰れるので手加減はしています。


「どっから入ってきた!?」

「いやー。美味しいですねこの白身魚の揚げ物」

「いつの間に食った!? ぬらりひょんかアンタ!?」


 痛い痛いと言っていた割に余裕で天ぷら食ってる大公さんにつっこむカオルさん。

 異世界にぬらりひょんが居るかどうかは分かりませんが、大公さんがぬらりひょんの仲間なのは多分間違いないと思われます。


「いや、今回はちょとした報告をですね」

「だったら普通に入ってきてくださいよ」

「ほら、ガルディアのシーナ王女が戻ってきたじゃないですか」

「聞けよ」

「それでメルディアのハインツ王子を早く結婚させたい人たちの興味がシーナ王女に向かって、うちの娘への関心が薄れたわけですよ」

「なるほど」


 状況を説明され納得するカオルさん。

 大公さんの娘というのは皆さんもう忘れているかもしれませんが、ハインツ王子との婚約の話が上がったので大公さんに「うちの娘は次期大公のカオルさんと婚約してるぜ!」とデマ流されたリーザさんです。

 ……リーゼさんだっけ?


 ……こまけぇこたぁいいんだよ!


「つまり俺との婚約の話は――」

「何の障害もなくなりましたね!」




「……あんま調子に乗ってると俺も本気で怒るぞ」

「ごめんなさい! 首はやめて!?」


 流石に堪忍袋の緒が切れたのか、大公さんの首を片手で掴みながら持ち上げるカオルさん。

 一方の大公さん喉を圧迫されてるのに余裕で喋ってたりとまだ意外に余裕があります。


「そこは偽装婚約の必要なくなったから解消するって流れだろ!?」

「そんな!? うちの娘を傷物にして捨てるんですか!?」

「人聞きが悪い!?」


 確かに婚約を解消されたとなればよくない噂が流れるかもしれませんが、そこは大公さん側から婚約を解消しカオルさんに問題があったことにすれば回避できることです。

 つまりただの大公さんの我儘です。


「そんなに拒絶しなくてもいいじゃないですか。うちの娘は私に似ず美人でしょう?」

「中身がアンタそっくりだから疲れそうなんですよ」


 つかみどころのないぬらりひょん系女子。

 一部の人から需要がありそうです。


「まあそう言わずに。婚約から始まる恋もありますよ?」

「おたくの娘さんが始まったら連絡ください」


 訳:二度とくんな


 そうして大公さんを追い出したカオルさんでしたが、戻ってきたらまたディレットさんが河豚みたいに頬を膨らませていたので、音を上げるまで両手でこねくり回しておきました。

 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「流石トヨちゃんの天ぷらはサクサクだね!」

「トヨウケヒメの料理に外れはありませんからね」


 茄子に大葉、ささげや南瓜などの夏野菜の天ぷらを前に大満足な様子のアマテラス様とツクヨミ様。

 ちなみにアマテラス様は天つゆに大根おろしは入れない派。ツクヨミ様は入れる派です。


 ――ファイッ!


「天ぷらはいいよね。大体なんでも天ぷらにすれば美味しく食べられるし」

「何でもは言いすぎだと思いますが」

「だってとり天とか豚天みたいなお肉の天ぷらもあるんだよ。大体あげれば美味しくなるって」

「まあ確かにあげバターなんてものもありますしね」

「なにその冒涜的にカロリー高そうな揚げ物」


 ツクヨミ様から飛び出したまさかの揚げ物に逆に冷静になるアマテラス様。

 バターであげたものではなくバターをあげたあげバターは実在します。


「え? というかバターってあげられるの? 溶けるでしょ?」

「そうですね。一応は冷やして固めたものを使いますが、あげ上がるころには溶けてほとんどが分厚い衣に吸収されます」

「何その暴力的な油の交響曲」


 ちなみにあげバターは皆さん予想通りアメリカで開発されましたが、そのアメリカですら賛否両論を巻き起こしたかなりの問題料理でもあります。

 そして今のところ日本の料理店でバター揚げが出されている店は確認されていません。

 興味がある人は作り方自体は簡単なので自己責任で作りましょう。


「……いや、流石の私もそれはちょっと躊躇う」

「興味津々なら全力で止めてましたよ」


 アマテラス様すら真面目に考えて拒否するあげバターの破壊力。

 今日も高天原は平和です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今更ながらアマテラス様、鶏はご自身の神使のはずなんだけどバクバク食ってますね?
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