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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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自衛隊(変人集団)

 剣道。


 日本を代表する武道の一つですが「礼に始まり礼に終わる」という言葉があるように、相手を倒すことよりも、思いやり尊重し高め合う事を目的とした精神修養を主にしていると言われています。

 ならば剣道は実践的ではないのかというと、そんなことはまったくありません。


 剣道三倍段については説明するまでもありませんが、注目すべきはその剣戟の多様性です。

 剣道では両手を離して竹刀を持ちます。これにより腕を動かさずとも手元を動かすだけで剣先は大きく動き、放たれる斬撃は様々な軌道を描くことになります。

 他の格闘技と異なり剣という一に攻撃が限定されながらも、その一が目視できない速度で無限の軌跡を生み出す。

 とりあえず棒持たせとけば無敵。それが剣道なのです。


「ま、まけたでござる」


 そしてそんな剣道場でへたれてる少女が一人。

 先日失恋した勢いで召喚返しされてきた、猫耳侍なヤヨイさんです。


 防具は着けていません。というか猫耳のせいで面どころか手ぬぐいもかぶれませんでした。

 そのせいで頭から景気のいい音を鳴らす羽目になりましたが、グライオスさんも手加減しているので大丈夫です。

 というか手加減しなかったらヤヨイさんの頭蓋骨が猫耳ごと陥没しています。猫耳付近の骨どうなってんだとかは気にしてはいけません。


「いやはや、若くしかも女の身でありながら良い剣筋をしておるわ。わしの息子もそなたの半分くらい才能があれば良かったのだがな」


 対するグライオスさんも竹刀は持っていますが防具は着けていません。

 危ないから着けろと言われても「めんどい」の一言で終わらせてしまいました。


 因みに安達くんも最初は参加していましたが、安達くんがやっているのは剣道ではなく古式剣術なので防具はあまり使いません。

 つまり冒頭で長々と剣道の説明をしておきながら、誰も剣道やってません。


 最初は関係あるはずだったんです。

 何か気付いたら関係なくなってたんです。

 プロットって大事ですね。


「逆にグライオス殿と安達殿は老体で無茶しすぎでござる。あんな動きをして体を痛めないでござるか?」

「おう。流石に最近は体がこる故に湿布薬とやらを処方されたのだがな、これが中々によく効くのだ」


 どうやら元皇帝は日本に来て健康と引き換えに湿布臭くなったようです。

 そのせいで鼻のいいマカミさんがたまに悶えているのは内緒です。

 因みにリィンベルさんも密かに愛用していたりします。何気に平均年齢が高い安達家なのでした。


「しかし少しは吹っ切れたようであるな。まったく失恋なんぞの勢いで異世界なぞに来おって。この馬鹿娘が」

「馬鹿とは何でござるか!? た、確かに自分でも考えなしだったとは思うところもあるでござるが……。大体グライオス殿だって自分の国をほっぽり出して来てるでござる」

「うーむ、それを言われると痛いのだがな」


 ヤヨイさんからの反撃に、グライオスさんは後頭部をポリポリとかきながら苦笑します。


「わしの息子もいい歳であったしな。むしろわしが隠居していなかったのが問題だったのだ。勇者召喚は明らかに皇帝の権威の失墜を狙ったものだったが、同時にあやつの器量が試される最初の試練だとも思った。

 あやつと勇者がどんな関係となり、帝国がどんな形で存続するかは予想もつかなんだが、一つの節目としては丁度良い。そう思いわしは姿を消そうと決めたのだ」

「……グライオス殿」


 深い色を湛えた目で語るグライオスさん。その言葉にヤヨイさんも言葉を失います。

 しかし真面目に語っといて最大の理由は「皇帝めんどくせぇ」だったりするのですが、本心は本人にしか分からない故に本心なので問題ありません。


「まあ結果的に贅を凝らした宮殿よりも快適な隠居先が手に入ったわけであるしな。この先ただ老いていくだけの身ではあるが、若人の成長の糧にはなれるであろう」

「承知! 胸を借りるでござる!」


 結論。今日も飯が美味いので問題なし。

 今日も日本は平和です。



「……おい、油をとってくれ」

「ちょっと待ってくれ。このサビが頑固で」


 一方自衛隊のとある駐屯地。

 各々に貸与された小銃を分解して手入れしているのは、異世界から来た騎士たちです。


 騎士が自らの剣を手入れするように、自衛隊でも銃は各個人が整備します。

 故に自衛官は自らの銃に愛着を持ち、中には名前まで付ける人もいるそうです。

 むしろ愛護心を持たせるために、名前を付けることを推奨する教官も居るそうです。唸れメギドファイア!


「あ! バネが落ちた!?」

「なにぃ!? 謝れ! バネに謝れ!」

「バネさんごめんなさい! バネさんごめんなさい!」


 うっかりバネを落とした騎士を叱責する教官と、バネに謝りながら腕立て伏せをする騎士。

 自衛隊では日常的な光景です。皆さんも物を大切にし、うっかり傷つけたときは誠意をこめて謝りましょう。


「しかし変則的ではあるが、やはり『剣』というのは戦場には無くてはならないのだな」

「うむ。むしろ納得だな」


 騎士たちがそう言って磨いているのは、銃の先に付ける銃剣です。


 現代の戦争では歩兵も銃が主力であり、近接の白兵戦はまず行われないと思われがちですがそれは違います。

 最近ではイラク戦争においても白兵戦が起きた記録はありますし、自衛隊も敵陣に突撃するときは後方から砲撃を容赦なくぶち込んだ後、銃をぶっぱなしながら銃剣を敵兵に向かって刺突しにかかります。

 砲撃と銃弾から何とか逃れたと思ったら銃剣構えて突っ込んでくる集団。恐ろしいですね。


「引鉄さんごめんなさい! 引鉄さんごめんなさい!」

「というかまた落としたのかあいつは」

「どうやったら引鉄を落とすんだ」


 バネに謝り終わったと思ったら、追加で引鉄にも謝ってる騎士が一人。

 こうして自衛官は日々逞しくなっていくのです。頼もしいですね。


 今日も日本は平和です。


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