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ゲームによっては必中じゃない魔法

「考えは変わりませんか?」

「……はい」


 安達くんの問いに少し間をあけて、マサトくんはらしくもない小さな声で答えました。

 二人が居るのは自動車の後部座席。応答の間にもマサトくんは安達くんに視線を向けることなく、スモークフィルムが貼られた窓をじっと見つめています。


「……本当は期待してた」

「何をです?」

「日本に帰ったらこの力が消えてなくなるんじゃないかって」


 そう言って自分の手のひらを見つめるマサトくん。

 はたから見れば中二病ですがまだシリアスな空気なので笑ってはいけません。


「あっちの世界ならまだ良かった。自分の影響力を自覚しろって言われたけど、だったら最初から呼ぶなって子供みたいに拗ねて我儘に暴れたって良かった。いや良くはないんだろうけど僕自身がそう思う言い訳の材料があった」

「こちらでは違うと?」

「うん。日本は変わってない。世界が変わって僕は変わった。でも日本に戻っても僕は変わったままで。だったら僕はいらない異物でしょ?」

「……」


 安達くんに問いかけているようで、しかし答えは聞く気はなく固まってしまっているらしいマサトくんに安達くんはそっと息をつきます。

 異世界間の連絡役をしてくれているカガトくんに「こいつ能天気なふりして絶対闇深いからカウンセラーとか用意してください」と言われて注意はしていましたが、中々に対処が難しい状態です。

 異世界では色々とはっちゃけて「もうどうにでもなれ~☆」状態だったわけですが、日本に無事に帰ったせいで逆に冷静になり「鬱だ氏のう」状態になってしまっています。


「確かに貴方の力はこちらの世界で一個人が持つには過剰でしょうね」

「でしょう?」

「ですが」


 そこまでいうと安達くんはにっこりと笑い、丁度良く目的地に着いた車内からドアを開けて降り立ちます。


「貴方はまだまだ子供で、そしてまだまだ見えていない『世界』がある」


 そう言って安達くんが指示した先には、ひたすらに広がる草原とそこに佇む幾人かの姿。

 グライオスさんとリィンベルさん。

 安達家の長老二人が片方はわくわくした様子で、片方は呆れた様子で待ち構えていました。


 そしてこの日、自衛隊の演習場の一部が更地になりました。

 今日も日本は平和です。



 一方高天原。


「やりやがったあの野郎ども」

「姉上。口調口調」


 よりにもよって日本で怪獣大戦争が勃発したのを見てキャラ崩れてるアマテラス様と窘めるツクヨミ様。

 少し前に世界が安定してきたねえと呑気してたのに何やってくれてんだあいつらと思うのは仕方ありません。


「まあただ憂さ晴らしに付き合ったようにも見えますが、あの少年を抑えられるという確証が欲しかったのでしょう総理大臣は。内外への説明と少年自身に『お前程度ではまだまだだ』と教えるためにも」

「いや理由は分かるけど何であの元皇帝は魔法とか使えない生身で爆撃状態な戦場走り回れてるの!? あと何で総理まで参戦してしかも渡り合えてるの!?」

「あの総理大臣に常識が通じないのはそれこそ今更でしょう」


 実は安達くんもグライオスさんの稽古に付き合っているせいで地味にレベルが上がり続けています。

 自衛隊最高指揮官は伊達ではありません。


「そのネタ二回目!?」

「誰に言ってるんですか」


 メタなつっこみを入れるアマテラス様と呆れるツクヨミ様。

 今日も高天原は平和です。

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