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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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猫耳モード

 今日も今日とて議員の皆さんが真面目に議論をしている国会。

 真面目です。居眠りしてる人が居たり野次が飛び交ったり、カップラーメンの値段やらTwitterの使用料金などというどうでも良い質問まで飛び出したりしますが真面目です。多分。


「総理。最近巷で総理がシーナさんと交際しているという噂が飛び交っていますが、これが本当ならば問題だという自覚はおありですか?」


 そして今日もまた、どうでも良いようでいて非常にデリケートな問題に野党は容赦なく切り込んできました。


 確かにシーナさんと安達くんがお付き合いをしていたら問題です。

 シーナさんは王族として教育を受けていたため、世の中の酸いも甘いも噛み分けた大人なように見えますが、まだ未成年なのです。

 言うなれば女子校生と中年のカップルです。一緒に町を歩いたらお巡りさんに職務質問を受けかねないくらいに危険です。


 因みにこの質問が行われた同時刻。国会中継を見ていた某王女が持っていたカップを握り潰し、たまたま一緒にテレビを見ていた見習い召喚師が震えあがっていたりしましたが、今は関係ありません。


「内閣総理大臣安達くん」

「そのような事実は一切ありません」


 対する安達くん冷静です。

 実際恋慕はシーナさんからの一方的なものであり、安達くんは娘のつもりで接しているから当然かもしれません。


「私は死んだ妻を愛していますから」


 しかも追い打ちで惚気です。堂々と宣言するその姿は男前のお手本のようです。

 某王女も「アダチさん……」と惚れ直し、某見習いは「シーナ様の思考回路が分からないよぉ……」と涙目になっています。


「で、ですがねえ……」

「あー、取り込み中申し訳ない」

「……はい?」


 しかしなおも食いつこうとした野党議員の言葉を、凛とした少女の声が遮りました。


「アマテラス様に導かれて参ったのだが、ここが日本で間違いないでござろうか?」


 いつの間にか現れた黒髪の少女。

 着ているものは日本人にとって馴染み深い着物に似ていますが、状況からして異世界人で間違いないでしょう。

 男物の着物を着て帯刀した姿は侍そのものですが、整った顔立ちの中で目を引く瞳は青と金のオッドアイ。トドメに長い黒髪の頭頂部には猫の耳が生えていました。



 ――猫耳娘キタ━━(゜∀゜)━━ !!!!

 ――犬耳娘コネ━━('A`)━━!!!!



 某所で再び聖戦が勃発しましたが、本編には関係ないので割愛します。


「ようこそ日本へ。私は内閣総理大臣を務めております安達と申します」


 慣れた様子で少女と相対する安達くんと、両手でT字を作る議長。

 所謂召喚返しタイムです。この瞬間全ての審議はストップし、ややこしい問題は全て安達くんに丸投げされます。


「丁寧な対応痛み入る。拙者はホムラ国の武官の家の娘で、名はヤヨイと申す」


 武士です。見た目だけではなく中身まで武士です。

 オッドアイの猫耳侍娘。もう属性が多すぎてどこに向かっているのか分かりません。


「ヤヨイさん。アマテラス様に導かれたという事は、身近に日本人が召喚され召喚返しに応じたという事でよろしいでしょうか?」

「うむ。拙者こう見えて侍でござる。侍は魔法にも通じた者が多く、拙者も幸い魔力があったため魔法学園へと留学したのでござるが……」

「……? どうなさったのですか?」

「い、いや。そこでカガト……日本人の青年と出会ったでござる」


 話の途中で何やら顔を歪め、猫耳をふにゃりと曲げるヤヨイさん。

 しかし安達くんが不審に思い問いかけると、ハッとしたように顔と猫耳を上げ話を続けます。


「拙者より年上だというのに頼りない青年で、周囲に振り回されてばかりの情けない男でござったが、何事にも真剣に取り組み向上心もあり好感の持てる青年でござった」

「ではその青年も魔法を?」

「うむ。潜在魔力も高く、学園でも将来を有望視されていたでござる」


 まるで我が事のように胸をはり言うヤヨイさん。しかしその猫耳が、再びへにゃりと曲がってしまいます。


「まあそんな男故に女子にもモテたでござるが、拙者はそういった色恋には興味がなかった故友人と接していたのでござる」


 そこまで言うと完全に耳を伏せ、顔に陰りを見せ始めるヤヨイさん。

 あ、これアカンやつや。

 議員たちは大体事情を察しました。


「しかし情というのは分からぬもの。いつの間にか拙者はカガトに恋心を抱くようになり、先日告白したものの一刀両断されてまいった。いやはや、普段の優柔不断の影もなくスッパリとフラれて惚れ直しそうになったでござるよ」


 努めて明るい声で言うヤヨイさんですが、当時の事を思い出したのか耳は完全にへたれ、両目には涙がたまっています。


 ――カガト爆散しろ。


 日本全国から異世界に向けて呪詛が放たれました。


「……お疲れ様でした。どうぞこの新天地で傷を癒してください」

「ぐすっ。ありがたいでござる」


 ついに泣き始めてしまったヤヨイさんを労わるように、優しく頭をなでる安達くん。


 ――安達爆発しろ。


 全国から総理に向かって呪詛が放たれましたが、全て受け流され全国各地でモテない男たちが爆発しました。


 今日も日本は平和です。



「はい……その通りです……ごめんなさあぁい!?」


 一方高天原。

 日本最高神なはずのアマテラス様が、何もない空間に向かって涙目で謝罪しています。


「……兄貴。姉貴は何やってんだアレ?」

「地上から安達総理の祈りという名のお説教が届き反省中です」

「……何でダイレクトに姉貴に届くんだよ」


 アマテラス様が謝っていたのは、まさかの安達くんでした。

 どうやら安達くんとしては、傷心のヤヨイさんの弱みに付け込んだような今回の召喚返しは納得いかないものだったようです。


「神代や異世界の住人ならともかく、現代で生きてるにしちゃ規格外すぎだろ。一体何者だよあのおっさん」

「何らかの加護を受けている様子もありませんしね。私は父上の転生体ではないかと睨んでいますが」

「親父のぉ?」


 半ば確信を持って言うツクヨミ様に、しかしスサノオ様は胡乱な目を向けます。


「何ですか?」

「いや、そりゃないだろ。あのおっさんが親父ならもっとヘタレてるだろ」

「……貴方は自分の父親を何だと」


 マザコン故に父親に厳しいスサノオ様にツクヨミ様は反論しようと思いましたが、ツクヨミ様もどちらかというとイザナミ様寄りなのでできませんでした。

 頼みの綱のアマテラス様は絶賛祈られ中です。今の高天原にイザナギ様の味方はいません。


「まあ転生体と言っても本神ではなく地上の端末みたいなものですから。環境によっていくらでも変わるでしょう」

「兄貴。確信持ってるとこ悪いんだが、それあんま言わない方が良いと思うぞ」

「何故ですか?」

「いや、おふくろの耳に入ったら……」

「……」


 スサノオ様の言葉に、いつも冷静沈着百合好きなツクヨミ様の動きが止まります。

 夫への恨みのとばっちりで人間千人くらい呪っちゃうイザナミ様です。安達くんがその夫の転生体だと確定したら、何をやるか分かりません。


「……まあ案外ただの人間かもしれませんね。前例もありますし」

「……そうだな。前例あるもんな」


 二人が思い浮かべたのは、ドラゴンキラーなマッスルオネエの姿。

 彼が普通の人間なのだから、安達くんもただの人間に違いない。そう思い込むのでした。


 今日も高天原は平和です。


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