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西洋の神は半裸マッチョという先入観

「おや?」


 もう日付も変わろうかという時刻。

 ベッドに入ったものの寝付くことができず、何か飲もうかとリビングへ降りてきたローマンさんでしたが、先客がいることに気付き不思議そうに声をあげました。


「あら。ローマンさん」

「これはシーナ殿下。お邪魔してしまいましたか?」

「いいえ。少し考え事をしていただけですから」


 そう言って微笑むシーナさんを見て、やはり可憐な方だと思いつつ同時に相変わらず隙が無いと心の中で苦笑するローマンさん。

 一応安達くんの前だと隙だらけになるのですが、普段は案外容赦ないので余計なことは言いませんが。


「しかし考え事ですか」

「ええ。もうすぐこの生活も終わってしまうんだなって」

「ああ。確かに不思議であり名残惜しくもありますね。何せ閣下も他の方々も我々を子供のように扱う」

「あの方たちからすれば私たちなんてまだまだ庇護の必要な子供なのでしょうね」


 安達家にいる面々は色々と残念な部分もありますが、皆一角の人物であり世が世なら英雄と呼ばれていたであろう人たちです。

 国元ではそれなりに立場の人間であるシーナさんやローマンさんすら普通に子ども扱いするのも当然なのかもしれません。

 色々と残念ですが。


「しかし意外でしたね。シーナ殿下は別れの前にもう少しアダチ閣下にアプローチをかけるものだと思っていましたが」

「何か特別なことをする気になれなかっただけですよ。……いえ、どんな結果になろうと、この別れを特別なものにするのが恐かっただけなのでしょうけれど」

「ほう?」


 事もなげに、自分の心境を他人のように分析するシーナさんを見て、やはりこの方は自分とは比べ物にならないくらい覚悟が決まっているのだなと納得するローマンさん。

 同時にもっと我儘に、馬鹿になってもいいんじゃないかなあとある意味馬鹿が極まっている安達家の面々を鑑みて思っちゃったりしていますが。


「結局私の思いは孤独からの依存と父への憧憬を越えるものではありませんでした。そんな微笑ましい思い出で終わるものだから、アダチさんも受け止めてはくれませんでしたしトドメもさしてくれませんでした」

「いやトドメって」


 言いたいことは分かるものの物騒な言い方に呆れるローマンさん。

 というかシーナさんは普段は上品な言葉遣いで分かりづらいですが根は結構好戦的なデンジャープリンセスです。


「しかしなればこそ一度ぶつかってみるべきでは?」

「必要ありません。もう終わることは決まった恋ですから」

「あ……」


 そう言って話は終わりとばかりにリビングから出て行くシーナさんに何も言えず見送るローマンさん。

 引き留めようとした片手を行き場に迷ったようにふらふらとさせ、疲れたようにため息をつきました。


「私を半ば脅して政略結婚の協力とりつけた人とは思えないなあ」


 矛盾している。しかしそれは自身を客観的に見てその思い

すら他人のように利用できる王女としての立場と、恋に恋して拒絶されることを恐れる一人の少女としての立場が複雑に混ざり合っているが故なのだろうと納得するローマンさん。

 そして何だかんだでシーナさんも恋には臆病なところがある自分とそう変わらない歳の女の子なのだと。


「さーて、個人としてのシーナ殿下は諦めているようですが、私への依頼の撤回はされてないですよねえ」


 そういってニヤリと、グライオスさんが見れば「おぬし最近本当にデンケンのやつに似てきたな」と言うであろう笑みを浮かべるローマンさん。

 実行したところで自分にも祖国にも益はない。

 しかし女性に優しくするのはローマンさんにとって呼吸同然の行いですし、何より「家族」のために動くのは当然のことです。


 そう以前の自分なら到底思わなかったであろうことを考えながら、あと数日過ごすのみとなった自室へと戻るローマンさん。

 今日も日本は平和です。



 一方高天原。


「シリアスなお話の終わりにアマテラスが!」

「いやそんな荒れた掲示板みたいなこと言われましても」


 ここから空気が変わりますよと宣言する主神の鑑と呆れるツクヨミ様。

 高天原側のシリアス? ねえよんなもん。


「いやー、ゼウスやオーディンとの話し合いも終わったし万全の状態で心に余裕ありまくりだね。まるで七月中に宿題全部終わらせた夏休みみたいだね」

「夏休みの宿題の意義を考えたらむしろ七月中に全部終わらせてはいけないと思いますが、まあ後にためるよりはマシでしょうね」

「でもオーディンもいきなり協力的になったのはいいけど都合の悪いこと全部ロキに押し付けてない? そりゃロキだってノリでラグナロク起こすよ」

「ノリで世界滅ぼされたらたまりませんよ」


 オーディン様の義兄弟でありながら最終的に巨人族と手を組み敵となったロキ様ですが、そこに至るまではかなりの紆余曲折があり決してノリで裏切ったわけではありません。

 物語後半はともかく前半の悪戯の数々は完全にノリでしたが。


「しかし確かにロキには注意した方がいいかもしれませんね。私が言うまでもなくオーディンならば警戒しているでしょうが」

「そういう悪だくみ好きそうだもんねオーディン。そこまで警戒しなくても今の流れならトリックスター(笑)で終わりそうだけど」

「そんなわけないでしょうと言えないのがある意味恐ろしいですね」


 神々すら逆らえないコメディーのゆるい空気。

 今日も高天原は平和です。

某無双なゲームでゼウス様とオーディン様とスサノオ様コラボしてたけどアマテラス様どこですか

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