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割れ鍋に綴じ蓋

「うーん。やっぱり土産はもう少し減らすべきか?」


 ガルディア王国の王宮の私室にて、何やら荷造りをしている様子の王妃様。

 普通ならそういうことは侍女がやるのでしょうが、今回は侍女の付いてこれない日本への帰還準備なのだからと説得して全部自分でやっています。

 侍女の仕事を取り上げてはいけないのでなるべく頼るようにしてはいますが、元一般人として譲れない一線というものがあるのです。


「で、何で人の部屋で落ち込んでんだおまえは」

「……」


 王妃様が呆れた視線を向けた先には、部屋の角で膝を抱えて座り込んでいる王様の姿が。

 落ち込みすぎてしけってます。このままでは王妃様の部屋の片隅にキノコが自生してしまいます。


「……何故俺は一緒に行っては駄目なんだ」

「あのなあ。色んな手続きやら調査やら検査するから長期滞在になるって言っただろうが。その間私とおまえの両方が国を離れてたら問題が起きた時対処できないだろ」

「フッ、そんな長期間会えなくなるなど死ぬぞ!」

「何を胸張って女々しいこと言ってんだ」


 堂々と王妃様と長期間会えなかったら寂しくて死ぬ発言をする王様と呆れる王妃様。

 言っているのが儚げ美少女とかだったら絵になるのでしょうが、見た目イケメンマッチョな王様が言っても頭の中身が心配にしかなりません。

 というか王妃様が来たばかりの頃は妹が行方不明になって鬱になり職務放棄していたので女々しいのは今更です。


「そうだよ。私が居なくなっても入れ替わりでシーナ王女が帰ってくるだろ。久しぶりに妹と親交を深めればいいんじゃないか?」

「……」


 王妃様の言葉にそのことをすっかり忘れていたのか固まる王様。

 そして――。




「あら? アサヒちゃんいきなり訪ねてくるなんてどうしたの? もうすぐ日本に帰るんだから王様となるべく一緒にいてあげた方がいいんじゃない?」

「国生。旦那がシスコンすぎてキモイ」

「とりあえず落ち着きなさい」


 いきなりやってきたと思ったら死んだ目で旦那の奇行について話し出す王妃様に真顔で返すオネエ。

 ちなみにその後の関係が懸念された王妃様と王女様ですが、普通に仲良くなってむしろ王様の肩身が狭くなったそうです。

 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「やっぱり自分の姉妹に依存しすぎて奥さんないがしろにするのはよくないよね」

「そうですね。王としては有能ですが男としては情けないですね彼は」

「……」


 嫌味を言ったらノーダメージで受け流したツクヨミ様に異星人を見るような目を向けるアマテラス様。

 ツクヨミ様の場合は嫌味に気付いていないのではなく確実に分かった上で流しているのでたちが悪いです。


 ちなみにツクヨミ様がいなくなったらアマテラス様が色んな意味でダメになるのではと思う人もいるかもしれませんが、本来の高天原の参謀役であるオモイカネ様がいるので別にそんなに変わりません。

 むしろオモイカネ様は適度に甘やかしつつも知恵の神故に教育熱心なので少し健全になります。


「真面目な話をすると兄弟間の依存心が強すぎて離婚に至るという話もありますからね。私生活に影響が出るほどだと問題と言えば問題でしょう」

「スルーした後にさらっと他人事のように話題再開する弟が分からない。というか兄弟のせいで離婚?」

「例えば妹が兄大好きすぎて兄嫁に嫉妬して嫌がらせをするとか」

「何それ恐い」

「まあそこで兄の方がきっちり妹を戒めるか縁を切れば大抵は終わりますからね。問題になるのは兄の方も妹に甘くて嫁を守らない場合。要するに共依存で二人の世界を作ってしまっているとマズいわけです」

「ああ、じゃあうちは関係ないね」

「そこでさらりとそう言えてしまう姉上が私は好きです」


 ストレートにそこまでするほど弟可愛くねえと言い放つアマテラス様と何故か嬉しそうなツクヨミ様。

 ツクヨミ様にM疑惑が浮上しました。


「いえ、それくらいの対応でないとスサノオみたいなのはつけあがりますから」

「うん知ってる」


 かつて高天原でスサノオ様やらかしたのを庇ったのに、反省せずにやらかし続けたのを思い出し遠い目でそう答えるアマテラス様。

 今日も高天原は平和です。

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