警備が終わりさあ帰ろうと思ったら何故か駐屯地で餅つきしてて巻き込まれる
「とりゃー」
「……全然割れてないぞ」
ケロス共和国のとある村にて。
手にした木槌で鏡餅を叩くアスカさんとそれを眺めているスクナヒコナ様。
しかしどうやらうまく餅が割れないようです。
「いつもの馬鹿力はどうした?」
「うーん。なんか砕け散っちゃいそうで力加減がよく分からないというか」
「しかたないな。ちょっと貸してみ」
「あ、はい」
「いやチビ神に割れるわけがって割れたー!?」
自分の体より大きい木槌を構えたスクナヒコナ様につっこむサロスくんですが、そのつっこみもむなしく見事にぱこーんと鏡開かれる餅。
一寸法師の原形な神様なめてはいけません。
「というかこれ神様の加護が宿ってるものなのに神様が割っていいんですか?」
「いいんじゃね?」
軽い。
そう思うもなんかもうつっこむのがめんどくなって遠い目をするサロスくん。
日本人と日本神だから仕方ないね。
「そういえば鏡開きって包丁使っちゃ駄目って言われましたけど、何か意味あるんですか?」
「ああ、鏡開きは元々武家の行事ですからね」
割られた鏡餅で作られたお汁粉食べながら言うアスカさんと、同じく食べながら答えるイサオさん。
餅は老人特攻なので小さく噛み切ってから飲み込みましょう。
特につきたてのお餅などは粘りが強く若者でも余裕であの世へ送ってくれます。
……あの時は焦った。
「武士の人たちは具足などの前に餅をお供えしていたそうです。刃物で切るのは切腹を思わせて縁起が悪いというわけですね。」
ちなみに鏡開きは一般的に十一日に行われますが、元は二十日に行われていたものが徳川家光の命日が二十日だったため十一日に移動したとされています。
行事や文化を調べてたら頻繁に名前が出てくる徳川家マジ幕府。
「他にも鏡割りの方も割るのは縁起が悪いということで鏡開きと呼ぶようになったと言われていますね」
「へえー。うちの家普通に鏡割りって言ってました」
なお「鏡餅が全然割れねえ!?」という場合にはしばらく水につけた後に電子レンジでチンすれば手で引きちぎれるようになります。
もはや割っても開いてもねえだろと言われそうですが切らなければセーフです、
「ところでおかわりはありますか?」
「あ、俺も」
「はいはい。ちょっと待ってください」
相変わらずお爺ちゃんなのによく食べるイサオさんと、成長期なのでよく食べるサロスくん。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「神様が何で鏡餅食ってんだってつっこまれても私気にしない」
「そもそも何で鏡餅供えてたんですか」
お汁粉を食べながら予防線をはるアマテラス様にさらに根本的な点を指摘するツクヨミ様。
気分だよ気分。
ちなみに年神様をお迎えするにあたり鏡餅と並んで正月の代名詞な門松ですが、元々あの竹は尖っておらず平だったそうです。
しかし一説には武田信玄に惨敗した徳川家康が「あの野郎ぶっ殺してやる!」という決意を込めてあのように尖ったものを飾るようになったとか。
また徳川か。
「まあいいじゃんお汁粉美味しいし」
「まあお汁粉は確かに美味しいですが」
そうなんだかんだ言いながらもお汁粉はきっちりいただくツクヨミ様。
食べ物を粗末にしてはいけません。
「というかツクヨミってクールぶってるのに実は甘いもの凄い好きだよね」
「その通りですが何か?」
「開き直った!?」
「何か文句あんのかああん?」という感情こもった声で言いながら顔は笑ってるツクヨミ様にビビりつつもつっこむアマテラス様。
今日も高天原は平和です。