表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

214/528

卵でとじるのを忘れるな

「……というわけで、あの鉾返す代わりに馬もらったんですけど。俺馬とか乗れないしどうしたもんかと」

「あら。まあ」


 メルディア王国の王宮の食堂にて。

 どうやら以前にここで食べて気に入ったらしいエビドリアをかきこみながら愚痴ってるカオルさんと、愚痴を聞きながらカレーを食べるオネエ。

 そして会話に加わらず食堂のメニューを制覇する勢いで食いまくってるディレットさん。特に海産物を使ったメニューがお気に入りです。


「でも馬をくれるなんて太っ腹な神様ね」

「どこが!?」

「お馬鹿! 馬っていうのは財産の一つに数えられるくらい高価なものなのよ! それこそいらないならミィナちゃんが買い取ってくれるわよ」

「神様のくれた馬とか畏れ多くて売れませんよ」


 馬とか使い道がねえと思いつつも売ることはできない小市民なカオルさん。

 なおポセイドン様特製の馬というだけあり、実は人類の限界を突破しているオネエやカオルさんが走るのよりも速かったりするのですが、それが発覚するのはまた後の話。


「おや? 見ない顔が居るね」

「あら殿下。またプリン食べに来たの?」

「殿下?」


 突然現れた殿下ことハインツ王子を見て首を傾げるカオルさん。

 しかしすぐに誰なのか察して顔が強張ってきます。


「お、お初にお目にかかります。国生さんの後輩でカオルと申します」

「ああ。次期アルジェント大公だね」


 ちょっと待て何を言い広めてんだおっさん!?

 とカオルさんが心の中で叫びましたが、心の中の大公さんは「やっちゃった☆」とてへぺろしていました。

 多分実際に本人に問い詰めても同じ反応をするので、カオルさんによるアルジェント公国大公襲撃事件が起こることは確定しました。


「いやー君のお義父さんから聞いてるよ『私はともかく私の義息子は同じようにはいきませんぞ』といきなり強気になってね」

「いや滅相もない」


 何やってんだあのおっさんと虎の威を借りまくってる大公さんに心の中で文句を言うカオルさん。

 流されまくったせいで「まだ義息子じゃねえしなる予定もねえ!?」という基本的なつっこみすら忘れています。


「ちょっと、私の後輩いじめないでよ殿下」


 しかしここでオネエから救いの手が。

 なんだかんだ言って後輩の面倒見はいい流石のオネエです。


「そうだぞ。いじめるなよ殿下」

「おや。これは参った」


 次いでオネエと並びこの国の最強の一角である団長も現れたので肩をすくめて退くハインツ王子。

 別にハインツ王子もカオルさんを本当に苛めるつもりはないのです。ただ単に最近強気になってる大公さんの意趣返しがしたいだけで。

 これもやっぱり全部大公って奴の仕業なんだ!


「それにしてもカオル。あの鉾無くしたんだって?」

「無くしたというか返したというか」


 どうやらカオルさんのメインウェポンがなくなったのを聞きつけてやってきたらしい団長に、少し顔を反らしながら答えるカオルさん。

 チャンスはここだ。そう考えながら続きを話します。


「それであの鉾がないと俺は一般人に毛が生えた程度の実力しかありませんし、次の大討伐には不参……」

「次の大討伐までに修業が必要だな」


 カオルさんが最後まで言う前に言い切る団長。

 ちなみに大討伐というのは毎年春に行われる竜王山の竜の間引きのことです。


「……嫌だ! 俺は普通の人間なんだー!」

「大丈夫。あと二枚くらい壁を突破すれば私たちと並べるからおまえ」

「何その具体的な数!?」


 自分は一般人だと主張するカオルさんに、間違いなく自分たちと同類だと返しながら首根っこ掴んで引きずっていく団長。

 実際カオルさんが竜相手に無双できたのはポセイドン様の鉾のおかげでもありますが、六割くらいは本人の実力です。


「あれは苛めてるうちに入らないのかい?」

「愛の鞭よ」


 そんな光景を見て呆れながら聞くハインツ王子と平然と返すオネエ。

 そして一連の騒動に一切かかわらずにひたすら飯食ってるディレットさん。

 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「鍋の〆はやっぱりうどんだと思うの」

「いえ雑炊でしょう」


 こたつを挟んで鍋をつついていたアマテラス様とツクヨミ様。

 しかし意見が対立。おたまと箸を持ったまま固まっています。


「何で!? これ水炊きじゃなくて寄せ鍋だよ! 元から味ついてるんだから麺の方が合うよ!」

「寄せ鍋程度なら雑炊にも合いますよ! 麺類が合うのはキムチ鍋や味噌鍋みたいな味が濃い鍋です!」


 ものすごくどうでもいい戦い勃発。

 ちなみにこの場にスサノオ様が居れば拉麺派が乱入することになります。


「それならトヨちゃんに聞いてみようよ! 食に関することならトヨちゃんが最適解だよ!」

「望むところです! トヨウケヒメ! 寄せ鍋のしめは雑炊ですかうどんですか!?」


 アマテラス様の提案にノリトヨウケヒメに問いかけるツクヨミ様。それを聞いたトヨウケヒメ様がひょっこりと顔を出すと――。


「お二人とも。黙って食べなさい」


 質問には答えず目が笑ってない笑顔で一刀両断しました。


『……ごめんなさい』


 それを見て素直に謝る主神とその弟。

 今日も高天原は平和です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらの作品もよろしくお願いします。

スライムが倒せない
 とある田舎の村の少年レオンハルトは「冒険の旅に出たい」という夢を持っている。
そのため手始めに村の近くに出没したスライムで魔物との戦いの経験をつもうとしたのだが……。
コメディーです。
― 新着の感想 ―
鍋の〆はちゃんぽん麵です!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ