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ヨーロッパでもタコを食べるとこは食べる

「とったどー!」


 アルジェンド公国にて。

 もう寒くなり始めたというのに相変わらず素潜り漁をしているカオルさんの雄叫びが海原に響き渡ります。


「うーん。あと一回潜ったら帰るか」


 どうやら漁は順調らしく、小舟の上の漁果を見て再び海へと潜るカオルさん。

 そして丁度見かけたタコを一突きにし、すぐさま小舟へと戻ったのですが。


「ほう。人間にしては見事な腕だな」

「……はい?」


 何か居ました。

 いかにもな髭をはやした筋肉モリモリな半裸のおっさんが中腰でカオルさんを覗き込んでいました。

 小舟の上ではなく海の上から。


「……どういったご用件でしょうか?」


 目の前のありえない光景につっこみを入れず下手に出ながら質問する小市民の鑑。

 もう読者の皆さんは大体予想がついているでしょうが、相手の正体を考えたら実に妥当な判断とも言えます。


「いや、うっかり落し物をしてしまってな。まあ面倒だしその内取りに行くかと思っていたらこんなに遅くなってしまってな。ほれ、その鉾だ」

「あー……」


 ぶしゅっと墨を吐いてるタコが刺さっている三叉鉾を指さされ「うわやっべえ」という顔をするカオルさん。

 現行犯で言い逃れ不可能です。


「そのようなものとは知らず勝手に使ってしまい申し訳ありません」

「ハッハッハ。よいよい。見ていて俺も血が騒いだぞ」


 どうやらセーフだったらしく、カオルさんがタコ引っこ抜いて差し出した三叉鉾を笑顔で受け取るおっさん。

 血が騒いだというのは以前に巻き込まれた竜退治のことであって、いつもやっている素潜り漁のことではないと思われます。多分。


「しかし折角拾ってくれたのだ。何か礼をせんとな」

「いえそんなどうぞお気遣いなく」

「おお! これがジャパニーズ慎みというやつだな。気に入った。特別にこの馬をやろう」

「何故馬!?」


 おっさんが手を振ったら突然小舟の上に現れる立派な体躯の白い馬。

 立派過ぎて小舟が若干沈み、当の馬が「え? オレここいたらヤバくない?」と恐る恐るといった感じで足踏みしています。


「ふっ。俺が馬を送るなど特別なことだぞ。自慢しても良いぞ」

「あ、はい。ありがとうございます。街の皆に見せて回ります」

「おお! そうしろそうしろ」


 ドヤ顔なおっさんの言葉に空気を読み礼を言うカオルさんと、カオルさんの肩を上機嫌でバンバン叩くおっさん。

 まるでパワハラに何も言えない部下と自分がパワハラやってるのに気付いていない上司のようです。


「ではさらばだ! 嫁は大事にしろよ!」

「さようならー」


 そう言って満足そうに消えていくおっさんと「俺に嫁はいねえ!?」というつっこみを飲み込み愛想笑いで見送るカオルさん。

 まるで嵐のようなおっさんでした。


「……帰るか」

「ヒヒン」


 一切の思考を放棄したような顔で言うカオルさんと「はよしてくれ」とばかりに返事をする馬。

 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「……ポセイドンだったね」

「……ポセイドンでしたね」


 カオルさんの様子を見ていたアマテラス様とツクヨミ様が、呆れたような顔を見合わせていました。


「いやー海関連で三叉鉾ときたらもしかしてとは思ってたけど、普通落とす? しかも放置する?」

「あちらの神はどうも大雑把ですからね」


 そういうツクヨミ様ですが、大雑把さ加減では日本の神様も大概です。

 というか八百万の神のことを考えたら日本の神様の分類自体が大雑把です。


「しかしあの青年もうまく対応してくれましたね。ポセイドンは海の神だけあり粗暴で横暴な面もあり荒々しい神ですから」

「そうなの?」

「簡単に言えばスサノオです」

「把握」


 粗暴で横暴な神の例に実の弟を出されて納得するアマテラス様。

 実際海繋がりで妥当な例と言えなくもありません。


「何せ気に入らない人間が居たら怪物送り込んで国ごと滅ぼそうとしてきますからね」

「それスサノオより酷くない?」


 流石のスサノオもそこまでしねえと擁護するアマテラス様。

 今日も高天原は平和です。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、スサノオは怪物倒す方だし…あいつひとりでポセイドンとペルセウスの役割担ってんなオイ
[良い点] フラグ回収班無事到着。 やったね♪
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