海外出身の猫すらホイホイするこたつ
「ねーこはこたつで丸くなるーでござる」
「別に丸くなってはないですよね」
安達家の居間にて。
日本人ならみんな大好きこたつが設置されるなり即座にその一角を占拠し寝る態勢に入るヤヨイさん。
全力で猫ってます。人としての尊厳とかそんなものはこたつの前では無価値なのです。
「それにしてもこたつ出すの早すぎませんか」
「何をおっしゃる。もう立冬でござるよ。冬の始まりでござるよ」
「暦の上ではじゃないですか。まだそんなに寒くないし、こたつも電源入ってないし。これじゃあただの布団かけただけのテーブルじゃないですか」
「その布団をかけたテーブルの素晴らしさが分からないとは。さては日本人じゃないでござるな?」
「さてはもなにも日本人じゃありませんよ」
真顔で何か言ってるヤヨイさんに同じく真顔でつっこむエルテさん。
というかこの家に安達くん以外に日本人居ません。
「ヤヨイさんの国って日本に結構似てるんですからこたつもあったんじゃないですか?」
「似たようなものはあったでござるが、ど真ん中に火鉢を置くので邪魔な上に小さかったでござるな。とても寝られるものではなかったでござる」
「だからこたつは寝るものじゃないですから」
よくこたつで寝ると風邪をひくと言いますが、実際気付かないうちに脱水症状を起こしたりするので風邪をひきやすくなりますし、風邪どころじゃない症状に追い込まれる可能性もあります。脳梗塞とか心筋梗塞とか。
つまりこたつで寝ると死にます。
「こたつで死ねるなら本望」
「何言ってんですか」
何か言いながら次第にこたつの奥深くへと引きずり込まれていくヤヨイさんとつっこむエルテさん。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「ほらぶちー。こたつだよー」
「……」
自分のそばの布団を持ち上げぶちを誘うアマテラス様と、相変わらずの目つきの悪さでそれを眺めるぶち。
「ほらおいでー……って何でわざわざツクヨミの方に回り込んでから入るの?」
「姉上のそばから入ろうとしたら捕まるからでしょう」
相変わらずつれないぶちにショックを受けるアマテラス様と呆れるツクヨミ様。
猫を飼ってると高確率でこたつの中でステルスしているので、蹴り飛ばさないように注意しましょう。
「そういえば猫ってこたつの中に完全に潜り込んでるけど、体に悪かったりしないの」
「悪いですよ」
「悪いの!?」
あっさりと言うツクヨミ様に驚くアマテラス様。
それを知っていてぶちを入れるとはやはりツクヨミ様は鬼畜……!
「というより人間にだって悪いですよ。体温より暖かいですから気付かないうちに汗をかいて脱水症状を起こしたりしますし、姿勢があまり変えられないから体も痛めます」
「あーそう言われればそうだけど」
「あと頭をつっこまない人間には関係ありませんが赤外線を長時間見ていると失明する危険性もあります」
「ぶちー!? ゲッアウ! ハリアップ!」
「このこたつは温風式だから大丈夫ですよ。というか何故英語」
慌ててぶちをこたつから出そうとするアマテラス様と冷静につっこむツクヨミ様。そしてのんきにツクヨミ様のそばで丸くなっているぶち。
なお長時間のこたつの使用は本当に猫の体に悪いので、外出したり長時間離れる際はちゃんと電源は切っておきましょう。
「ぐぬー。無防備に寝てて羨ましいこんちくしょう」
「だから下手に構うのをやめなさい」
ツクヨミ様のそばで寝ているぶちをこたつ布団に頭を突っ込んだまま悔しそうに見ているアマテラス様と呆れるツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。