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運送業界は割とブラック

「そろそろテコ入れが必要やな」

「いきなり何を言ってるのよ」


 魔王様のおわす魔王城にて。

 いつものように面白トラップに挑んでは沈んでいく冒険者たちを眺めていた魔王様が呟いたのを聞きつっこむミラーカさん。

 トラップ担当のスケルトンさんは「まーた魔王様が阿呆なこと言い出した」と思いつつも口には出さないナイスガイです。


「いや最近各国で魔族が親しまれ始めてるらしくてやね」

「もう魔族の在り方云々いうのも面倒だからスルーするけど、何でそうなったの」

「各国飛び回っとる運送魔族のおかげやね」

「あいつらか」


 ウェッターハーン商会と提携し運送業を始めた魔界ですが、実際に運送している魔族は空を飛べることだけで選ばれ知能が低いものも多いので、餌とかやってるうちにペット感覚になる人間が多かったようです。

 ハーピーやグリフォンのような愛嬌のあるものはともかく、見た目ガーゴイルみたいな悪魔とかが喜んで餌喰ってるのが可愛いか否かはその人のセンスによると思われます。


「子供たちにも大きな鳥さんと親しまれとるらしい」

「いや鳥に見えないやつの方が多いでしょう。どっちかと言えば蝙蝠でしょう」

「そこはシンボルにヤタガラス様使っとるからやない?」

「ああ、あの三本足烏」


 存在そのものが自分の弱点という相手を思い出し忌々しそうな顔をするミラーカさん。

 ちなみにお父さんはその飼い主にこんがり焼かれましたが、ちゃんと生きてる上に何故か猫ブリーダーになっているので問題ありません。


「それでここいらでもっと『魔族恐くないよー』と示すために親善大使でも任命しようと思てな」

「そんな器用な真似できるやつそんなにいないでしょ」

「今のところ最有力候補はデュラハンやな」

「……なんであのむっつりやろうなの?」


 ミラーカさんの言う通り、デュラハンさんは常識的な感性をもった魔族ではありますが見た目は生真面目そうな男で愛想もありません。

 それならまだ自分が内心隠して演技でもしてきた方がうけが良さそうだとミラーカさんは思ったのですが。


「あのとんでも勇者くんの暴走を毎回最小限に抑えてるからフィッツガルドのお偉いさんがたに凄い感謝されとるらしい」

「なるほど」


 理由を聞き納得するミラーカさん。

 地道な努力と言うものは案外誰かが見てくれていて思いもよらぬところで評価されたりするものです。

 デュラハンさんが聞いてもまったく嬉しくないでしょうが。


「でもそれデュラハンのやつまたストレスため込むんじゃない?」

「……うん! やめとこう!」


 以前限界に達したデュラハンさんが無表情に壊れたレコーダーのような状態になったのを思い出し前言撤回する魔王様。

 そこで気遣うくらいならマサトくんの担当から外してあげればいいものですが、前述のようにフィッツガルドからも感謝されてるので迂闊に外せません。

 世知辛いですね。


「というかデュラハン魔族やのに何であんなに人間的な常識人なん?」

「人型の魔族はどうしても人間に近い価値観になりやすいのよ」

「……」

「嘘だーみたいな顔でこっちを見ない」


 そんなミラーカさんですが、最近魔王様のつっこみ役に収まっているので実は常識人なのではないかと言われ始めています。

 でも常識人は同性の上司に毎日夜這いしかけたりしないと思います。


 今日も魔界は平和です。



 一方高天原。


「やったねヤタガラス! 異世界で有名人だよ!」

「カ……カァ」

「人ではないでしょう」


 我が事のように喜ぶアマテラス様と撫でられつつも照れている様子のヤタガラス様。

 そしてつっこみをいれる安定のツクヨミ様。足元ではぶちが退屈そうに欠伸をしています。


「しかし魔族の運送のシンボルにヤタガラスが使われるというのもおかしな話ですね」

「まあまあそこは今更だし細かいことはいいじゃん」

「細かいことを無視して突っ走った結果面倒なことにならなければ私も気にしないんですけどね。といいますかヤタガラスはこれでよかったのですか?」

「カァ」

「健気ですね貴方も」


 何を言ったのかは分かりませんがとりあえず肯定らしいヤタガラス様に感心するツクヨミ様。

 どうやらヤタガラス様が脱走してアマテラス様からツクヨミ様の神使に鞍替えする心配はなくなったようです。


「うんうんヤタガラスは素直だねー。というかぶちは何で当たり前のようにツクヨミの足元でくつろいでるの!?」

「それこそ今更ですか」


 ヤタガラス様のことを褒めたと思ったら、相変わらず自分には懐かないのにツクヨミ様には懐くぶちにキレるアマテラス様と呆れるツクヨミ様。

 今日も高天原は平和です。

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