地元の神輿担いでるのが爺ちゃんばっかり
神輿。
普段神社に居る神様を乗せるとされるいわば移動できる神社であり「わっしょい」の掛け声と共に担ぐのが一般的ですが、中には台車で移動したり担いでも揺らさないものもあったりします。
「お疲れ様でござるローマン殿」
「ああヤヨイさん。ありがとうございます」
ヤヨイさんから水の滴るよく冷えた缶ジュースを渡され、礼を言いながら受け取るローマンさん。
二人が居るのは安達家の近所にある小さな神社の境内。
小さい神社だけあり神輿の担ぎ手が足りないということで、声をかけられた安達家の面々も参加し無事神輿の奉納が終わったところです。
周囲には近所の住人や氏子の人たちが集まり、軽食やお酒などが振る舞われています。
「お疲れの様子でござるが、そんなに重かったのでござるか?」
「いえ、重さ自体はそれほどではないのですが。皆さんが神輿を揺さぶるものだから肩が痛くて」
「なるほど。確かに景気よく揺らしてたでござるな」
神輿を揺らすのは魂振りと呼ばれるもので、激しく揺らすことで神様の霊威を活性化させるためだとされています。
しかし地域によっては荒波や転覆を連想するため揺らさなかったりと様々なので、馴染みのない祭りに参加する際はそのあたりを事前によく調べておきましょう。
また神輿の上に人が乗っているのを見られる地域もありますが、そういった行為が始まったのは戦後になってからとされ未だ否定的な意見も多く、基本的には禁止されているのでテンション上がってやらかさないように注意しましょう。
あと単純に危険なので、東京都などでは迷惑防止条例で神輿に乗ることが禁止されていたりもします。
「そういえば他の面々は何処に?」
「マカミさんは酒を飲まされそうなので逃げました。陛下は逆にあっちで酒盛りやってます」
ローマンさんの指さした先には、ビール片手に男たちと肩を組んで大騒ぎするいい歳こいたおっさんの姿が。
祭りなので羽目を外しても仕方ありません。
「流石というか人を巻き込んで惹きつけるのが上手いでござるなグライオス殿は」
「人たらしというか、振り回されても憎めないというのはある意味厄介ですね」
相変わらずなグライオスさんに呆れるヤヨイさんと苦笑するローマンさん。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「私も神輿担ぎたい」
「大人しく担がれててください」
相変わらず深く考えずに発言するアマテラス様に冷静につっこむツクヨミ様。
神様が神輿担ぐとか意味が分かりません。
「だよねー」
「珍しくすぐ引き下がりましたね」
「いやー。私も流石にこれは立場的にダメだろうなって」
「分かってるなら言わないでくださいよ」
何気に譲ってはならない一線は譲らないアマテラス様。
ちなみに地域によっては神輿を高所から見下ろすのもダメなので気をつけましょう。
「でも子供が乗ってるお神輿もあるよね」
「あくまで子供だけですよ」
先ほど基本的に神輿には乗ってはならないと述べましたが、例外として地域によっては子供を乗せて神輿を担ぐ場合もあります。
これは穢れを知らない子供だからこそであり、乗る際も地面に足がつかないように担がれて移動したりと様々な制約があったりします。
「まあ仮に姉上が神輿を担ぐにしてもサイズ的に子供神輿しか無理でしょうが」
「その喧嘩買った」
冒頭ですぐに思ったものの言わないようにしていたけど結局言ってしまったツクヨミ様と珍しく静かにキレてるアマテラス様。
このままでは喧嘩神輿ではなくただの喧嘩が始まってしまいます。
今日も高天原は平和です。