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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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もふもふ来襲

 国会会期延長。

 理由は様々ですが、基本は今回のように与党が「この法案通したいから延長な」というのに対し、野党が「簡単には通さへんから覚悟しいや」と応じるある意味我侭合戦です。

 審議というのはある意味言葉の総合格闘技なのです。某国では国会中に本当に乱闘が始まったりしますが、深く考えてはいけません。


「何ともなあ、本当に国を思っているのか怪しい輩がおらんか?」

「集団になればそういう者も出てくるじゃろう」


 そしてそんな国会を隅っこで眺める人影が二つ。

 元皇帝なグライオスさんとダークエルフなリィンベルさんです。


 前回の吸血鬼騒動や騎士による人質籠城事件のこともあり、召喚返しに備えてなるべく国会に顔を出すようにしているのです。

 別に二人が居なくても安達くんが何とかしそうですが、それはそれです。


 因みに普段の二人は異世界研究の補助やらアグレッサーやら森林保護のアドバイザー等色々やっています。

 老人だからと言って決してニートでは無いのです。


「ですから、今変化を求めるのはあまりに早急過ぎると……」

「わふっ?」

『……』


 突如国会に響いた空気を漏らすような声に、辺りが沈黙に包まれます。


「……がうっ!」


 犬でした。

 いえ、大きさといい姿といい間違いなく狼です。

 日本の中枢に日本では全滅したはずの狼が突如出現しました。


「がう。わおーん。ぎゃうぎゃう。わん!」


 日本語でおk。

 何か言葉を発しているっぽい狼に、日本人の心が一つになりました。


「む? 言葉は通じると聞いたのだが、人化していないせいか?」


 そしてその思いに応えるように、狼が姿を変え話し始めます。

 狼が姿を変えたのは、二十代前半と思われる青年でした。

 目付きはそれこそ肉食獣のように鋭く力強く、引き締まった体とあいまり隙の無い凛々しさを感じさせます。

 ……頭頂部にもふもふな犬耳が生えていなければ。


 ――犬耳キタ━━(゜∀゜)━━ !!!!

 ――猫耳コネ━━('A`)━━━!!!!


 某所で犬派と猫派の聖戦が始まりましたが、物語には関係ないので割愛します。


「俺は人狼のマカミという。アマテラス様の召喚返しに応じてやって来た」

「私は日本国の内閣総理大臣を務めております安達と申します。召喚返しということは、身近に召喚された日本人が居られたということですか?」

「まあ居ると言えば居るが」


 安達くんの問いに、口に手をあてて何やら考えるマカミさん。

 思考に合わせたようにピコピコ動く犬耳がラブリーです。でも今は関係ないので触ってはいけません。


「一か月ほど前に、草原のど真ん中を着の身着のまま歩いている少女を保護してな。何やら事情があるのは分かったが、最後まで教えてはくれなかった。料理が上手かったので、老若男女に気に入られていたな」


 どうやら今回異世界に迷い込んだ日本人は、人狼の胃袋を掴んでもふもふハーレムを築いているようです。

 もふもふ好きには羨ましい限りです。


「ではその少女の安全は保障されていると?」

「ああ。そしてアマテラス様の言葉を群れの神官が聞いてな。この国に一人来なければならないと聞き、その権利をかけた戦いに勝ち抜き俺がこうして来た」

『はい?』


 マカミさんの言葉に議員たちが首を傾げます。

 何故に知り合いもいない異郷の地にこぞって来たがるのでしょうか。もしかしたらマカミさんもリィンベルさんのような苦労人で、ここでは無いどこかへ旅立ちたかったのでしょうか。


「……この国には『焼肉食べ放題』なる文化があると聞いた」


 ――それは文化じゃない。

 若手議員を初めとした数人がつっこみそうになりましたが、空気を読んで耐えました。


「同時に『働かざる者食うべからず』とも聞いた。良い言葉だ。ならば働こう。こう見えて腕には自信がある。鼻もきくから探し物も得意だ。だから俺に『焼肉食い放題』を!?」


 クール系なお兄さんかと思ったら、ただの食いしん坊さんでした。

 主張にあわせて尻尾がブンブンと勢いよく動いています。まるで餌を前にして待てをされたわんこのようです。


「……議長。焼肉いきましょう」

「うん。飲み放題も忘れんようにね」


 ――行くのかよ!?

 安達くんの言葉に素直に応じる議長とつっこむ議員たち。


 今日も日本は平和です。



 一方高天原。


「わあー、やっぱり可愛いなぁ狼。何で日本のは絶滅しちゃったかなぁ」


 どうやらアマテラス様ももふもふは大好きなようです。

 そんなアマテラス様をツクヨミ様が若干呆れた様子で見ています。


「……まあ狼は姉上の仲間みたいなものですからね。ア○公とか」

「○マ公言うな!?」


 大口の真神など、日本には狼を神格化した神様も居て狼を大神と読みかえる場合もあります。

 もっとも「狼は大神」という言葉の始まりは江戸時代あたりと割と最近だったりするそうですが、細かいことを気にしてはいけません。


 しかし日本で狼が神格化されているのに対し、西洋では狼は「赤ずきんちゃん」に見られるように悪役として描かれる事が多いです。

 これは日本人が農耕民族であり狼が鹿などの害獣を狩ってくれる益獣だったのに対し、西洋では家畜を襲う害獣だったからだと言われています。

 人間のせいで立場をコロコロ変えられて、狼さんたちも大変ですね。


「ツクヨミ。私も焼肉行きたい」

「話を繋げてください」


 いきなりの話題転換にツクヨミ様も思わずつっこみます。

 マカミさんが焼肉を食べているのを見たからでしょうが、その辺りを見ていないツクヨミ様にはただの姉の理不尽です。


「焼肉なら高天原ここでもできるでしょう」

「だってうち鉄板しかないし。炭火の網で焼きたい」

「店に行くなら姉上はお酒飲めませんよ外見的に。この前も成人だと言い張って身分証の提示を求められたでしょう」

「じゃあ炭と網買ってきて」

「我侭言わないでください」


 姉の権力を振りかざすアマテラス様と、冷静に切り返すツクヨミ様。

 今日も高天原は平和です。


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