そもそも日本米は炒飯に向いていない
ドワーフ王国。
ご存じ食いしん坊なドワーフたちが住む地下王国ですが、何度か説明したように地下にあるためにその食糧自給率はかなり低いものとなっています。
しかし最近はウェッターハーン商会のミィナさんがハッスルしてるおかげで、大陸の中央にあり要所であるドワーフ王国に入ってくる食料の類も増えており、それにつられてドワーフたちもハッスルして働くものだから今までにないくらいに生産性が上がっていたりします。
ウェッターハーン商会による大陸制覇ほぼ完了。
「そういやジュウゾウ。あんた日本に帰るのかい」
――ざわ…。
ドワーフ王国にあるとある飯屋にて。
今日も厨房で手伝いをしていたバーラさんの何気ない一言に、店内にいたドワーフと非番で来ていたメルディアの騎士たちが静まりかえり、一斉にざわつき始めました。
「いえ、帰りませんよ」
――わっ!
ジュウゾウさんの言葉を聞いて一斉に盛り上がるドワーフと騎士たち。
完全に堕ちちゃってるその姿を見てデンケンさんが笑ってるけど目が完全に呆れています。
「いいのかい?」
「別に連絡さえつけば親に心配されるような歳でもありませんしね。それに折角自分の店を持てたっていうのに、ほったらかして帰るわけにもいかないでしょう」
「はー、真面目だねえジュウゾウは」
「そうですか? あ、デンケンさんこれ頼みます」
「はいただいま」
感心しているのか呆れているのか、微妙な顔なバーラさんと出来上がった炒飯をデンケンさんに渡すジュウゾウさん。
元侯爵様だと分かったときには扱いに困っていたようですが、結局聞かなかったことにして普通に対応することにしたようです。
「ああ、でも日本と行き来ができるならミィナさんにさらにお世話になるかもしれませんね」
「あの商人のお嬢ちゃんにかい? どうしてまた」
「いえ。彼女なら日本にあってこちらにない食材や調味料を調達できるのではないかと思いまして」
そう言うジュウゾウさんですが、いくらミィナさんでも国が厳重管理するであろう異世界の門を使って交易を始めるなど……普通にやるな!
「じゃあカレーがさらに完成形に近づくわけだね」
「そうですね」
――ざわっ…。
厨房からの未だカレーは完成には至っていないという言葉を聞き、再びざわつき始めるドワーフ+騎士たち。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「炒飯と焼飯は違うものだと思うの」
「いきなり何言ってんですか」
唐突に炒飯と焼飯の違いを話し出すアマテラス様に、胡乱な目を向けるツクヨミ様。
「いやなんかこう。炒飯の方が洗練されてパラっとしてるイメージあるじゃない?」
「イメージで語っているところ悪いですが、炒飯と焼飯はちゃんと調理方法に違いがありますよ」
「何……だと……」
ツクヨミ様の言葉に驚愕するアマテラス様。
ドヤ顔で違いを説明しようとしたら明確な根拠のある違いを説明され返されました。
「卵を先に炒めてからご飯を投入するのが炒飯で、ご飯を炒めてから卵を投入するのが焼飯だと言われていますね」
「そこに何の違いもありゃしねえだろうが!」
「違いますよ」
勢いとネタで押し切ろうとしたアマテラス様でしたが、今日も冷静沈着百合好きなツクヨミ様に冷静に切り返されました。
なお焼飯の定義については諸説あるので、必ずしもツクヨミ様の言っている通りの違いというわけではありません。
「なんならトヨウケヒメに作ってもらって食べ比べしますか?」
「私にそんな細かな違いが分かるわけないでしょう!」
「正直でよろしい」
自分が違うと言い出したのにツクヨミ様の提案に逆ギレするアマテラス様と納得するツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。