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ぶっちゃけエイプリルフール面倒臭い

加筆しました。

 エイプリルフール。

 日本語では四月馬鹿と呼ばれ嘘をついてもいい日とされていますが、実はその起源は諸説あるもののハッキリとしておらず、その存在自体がある意味あやふやだったりします。

 ルールについても同様で、よく言われている「嘘をついていいのは午前中だけ」というのも「イギリスやその統治国だけのローカルルール」だとか「そもそもそれが嘘だったんだよ!」などと情報が錯綜しており、非常に面倒くさい風習となっています。


 ちなみに日本には江戸時代にはエイプリルフールは伝わっていたとされていますが、当時の武家社会では嘘をつくことなど言語道断だったのか「不義理の日」とされており、むしろ義理を欠いた相手にそれを詫びる日だったそうです。

 こっちはこっちで面倒くさいな。


「つまりは僕が大活躍する日!」

「反省してねえなこの野郎」


 アスガルドにて相変わらずグレイプニルで縛られてすっころがされたままキリッとした表情で宣言するロキ様と呆れるオーディン様。

 ロキ様が反省とかできるならラグナロクなんて起こりません。


「というかいつまで僕を縛っておくつもりだい? まさかオーディンにはそういう趣味が」

「刺すぞ」

「後ろの穴を? いやごめん。冗談だからグングニル構えないでお尻壊れるぅッ!?」


 つっこみを放棄してグングニルを投擲する態勢に入るオーディン様と流石に慌てるロキ様。

 一度放てば必ず命中する槍なので逆に言えば手加減とか効きません。


「いや、でも本気で今日だけは解放してくれないかな。折角のエイプリルフールに悪戯神の僕が何もしないとか沽券にかかわるよ」

「そんな沽券は捨ててしまえ」

「なんて無体……」

「……? どうした?」


 急に黙り込むロキ様に訝し気な視線を向けるオーディン様。

 見ればロキ様の表情は珍しく真剣なものになっており、額には汗すらかいています。


「……オーディン。大変だ」

「……何事だ?」

「背中がすっごい痒い」

「よし。掻いてやろう」

「やめて! グングニル構えないで!」


 真顔で何か言い始めたロキ様の背中目がけて再びグングニルを構えるすっごい笑顔なオーディン様。

 流石義兄弟だけあり見事な漫才です。


「いや割とマジで我慢できないこの痒さ! かいて! オーディンかいて!」

「まったく。仕方ないやつだなおぬしは」


 打ち上げられた魚のようにのたうち回るロキ様と、仕方ないといった表情でロキ様へと近付くオーディン様。

 そしてその背中へと手を伸ばすと――。


「……」


 ロキ様の両手がいつのまにか自由になっており、代わりにオーディン様の両手がグレイプニルで縛られていました。


「フッ。僕が縄抜けの準備をしていないとでも思ったのか!」

「縄抜けでグレイプニルから脱出できてたまるかあ!?」


 拘束から逃れて両手を広げてポージングするロキ様と、至極ごもっともなつっこみをするオーディン様。

 ごもっともですが実際できてるのだから仕方ありません。


「覚えておくといいオーディン。僕は悪戯のためなら己の限界すら越えるのだと!」

「待たんかこの悪童がァッ!」


 色んな意味で解き放たれて走り出すロキ様と、手を縛られたまま追いかけるオーディン様。

 その後ロキ様はアース神族を何人かだまくらかして満足したところで緊急帰界したトール様にぶん殴られて再び拘束されました。


 今日もアスガルドは平和です。



 一方高天原。


「ツクヨミー! お母さんが怒ってこっちに来るって!」

「嘘乙」

「にゃんと!?」


 アマテラス様が迫真の表情で言うのに、すり寄ってきたぶちの顎下を撫でながらいつも通り胡乱な目で返すツクヨミ様。

 あっさりと嘘認定されたアマテラス様ビックリです。


「何でそんな落ち着いてるの!?」

「本当に母上が来るなら姉上はもっと狼狽えてるでしょう。仮に私だけを怒りに来たのだとしても姉上なら巻き添えが恐くて逃げます」

「ぐう!」


 反論できなかったのでとりあえずぐうの音を出してみるアマテラス様。

 ちなみにぐうの音の「ぐう」というのは息がつまる音であり声に出して「ぐう」というわけではありません。


「大体エイプリルフールなんて分かりやすい時期に嘘をついてもすぐバレるに決まっているじゃありませんか」

「ええ……。その言い方だとツクヨミあえてエイプリルフール外して嘘言うってことに聞こえるけど」

「だからそう言っているのですが?」

「鬼畜!?」


 それの何が悪いんだとばかりに涼しい顔で言うツクヨミ様に驚愕するアマテラス様。

 実は自分の弟凄い性格が悪いんじゃないかと今更気付き始めました。


「それと姉上。後ろにスサノオがいますよ」

「はあ? そんな見え見えの嘘に騙されるわけが……」

「よ! 姉貴!」

「……」


 突然頭上から愚弟の声が聞こえ上へと視線を向け、そのまま体を反らすように後ろを見るアマテラス様。


「……」

「……」


 後ろから覆いかぶさるようにアマテラス様を見下ろしているスサノオ様と、それを見上げるアマテラス様。

 両者無言ながらも片方は徐々に笑みが深くなり、片方は徐々に涙目になっています。


「な、なんでスサノオがいるの!?」

「姉貴をだまくらかしにきた」

「そんな宣言されて騙されるほど私馬鹿じゃないもん!」


 スサノオ様の言葉に憤慨するアマテラス様。

 そのまま怒ったように頬を膨らませていましたが。


「後でおふくろも来るってよ。異世界の門の件がバレてカンカンだったぞ」

「ふん。どうせ嘘でしょ」

「おう。嘘だ。今日はおふくろ他に用事あるから来ないってよ」

「……え? 今日は?」


 あっさりと一部だけ嘘だと言われ、逆に嘘だと信じられない泥沼に見事に落ちました。


「え? スサノオ? どこまで嘘? お母さん今日は来ないって明日は来るの? バレてるの?」

「だから来ないしバレてないって。俺を信じろ!」

「この世でスサノオ程信じられないものないよ!?」

「なんだよー。今日はおふくろは来ないって。なあ兄貴」

「いえ。実は内密に来ると伝えられてまして」

「嘘!?」

「嘘です」


 驚くアマテラス様にあっさりと嘘だと返すツクヨミ様。

 相変わらず胡乱な目をしつつも無表情なので本当なのか嘘なのか分かりません。


「さっき今日は嘘つかないって言ったじゃん!?」

「ええ。だから本当は来ます」

「来るの!?」

「来ないって」

「来ないの!?」


 スサノオ様とツクヨミ様の兄弟の連携に翻弄されるアマテラス様。

 今日も高天原は平和です。

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