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ホットケーキミックスの可能性

「……お菓子作りは計量が命……お菓子作りは計量が命…お菓子作りは計量が」


 いきなり何か呪文みたいにブツブツ呟いているのは、意識高い系エルフの一員だったイネルティアさんです。

 はかりの真ん前で中腰になりながら、プルプル震える手で小麦粉をボールの中に注ぎ込んでいます。


「別にそこ失敗してもいくらでもやり直しきくじゃろうに」


 そしてそんなイネルティアさんを呆れながら見ているリィンベルさん。

 こちらはこちらで割と料理は感覚でやるタイプなので、計量とかいろんな意味で適当です。


 ちなみに今でこそ重要とされている計量ですが、ほんの二世紀ほど前まではお菓子の専門家であるパティシエですら「計量? 何それ?」状態であり、材料の量や調理時間などは各個人の感覚任せであったのが普通だったとされています。

 ある意味職人らしいとも言えますが、そんな感覚頼りなものをより正確に後世に伝えるためにも数字という目安はとても重要だったのです。


「どうですかリィンベル様!」

「可愛いのう」


 計量が終わっただけで顔を輝かせて聞いて来るイネルティアさんに呆れ半分微笑ましさ半分の顔で言うリィンベルさん。

 完全に子供扱いですが、年齢差考えたら仕方ないというか深く考えてはいけません。呪われます。


「ぐぬぬぬぬ。何故お菓子作りを始めるにしても私に指導させないのですか!」

「危ないからだろう」

「ぐふっ!?」


 そしてそんなエルフ二人の微笑ましい料理教室をリビングから眺めながら歯ぎしりするナタンさんと、相変わらず無表情に正論を叩き込むマカミさん。

 短いながらも的確な一言にナタンさん撃沈。


「おまえさん一度懺悔にでも行った方がいいのではないか?」

「ふっ。残念でしたな。神道に懺悔などというシステムは存在しないのです!」

「ああ、それは残念だ」

「残念だな。ナタンが」


 グライオスさんの言葉に胸を張って答えるナタンさんに、呆れるグラウゼさんとマカミさん。

 アマテラス様だってこんな特殊性癖の持ち主に罪の告白されに来ても困ります。

 ちなみに神社への参拝というのは本来神様への感謝が主であり、いきなりお願い事をするのは失礼だとされる場合もあるので気をつけましょう。


「神道では穢れを祓うために水を浴びるのだったか?」

「禊というやつだな。ではナタンを海に放り込んでくればいいわけだな」

「そんなもの禊ではありませんぞ!?」


 グラウゼさんとグライオスさんが淡々と海に投げる計画を立てるのに素で抗議するナタンさん。

 しかし禊と言うと川とか滝でやるイメージがあるかもしれませんが、普通に海でやる場合もあります。

 つまりナタンさんを海に捨てても何の問題もありません。


「二人とも言い過ぎだろう。ナタンだって普段はまともなのだから海に投げるのもやりすぎだ」

「マカミ殿!」


 しかしここである意味安達家で一番真面目なマカミさんから待ったが入ります。

 確かにイネルティアさん関連では読者はもちろん作者すら置いてけぼりなカオスシフトを繰り返すナタンさんですが、普段は真面目に神職資格をとるために勉強していますし、別に料理に変なものを混入したりもしません。

 ただちょっと厳格すぎる前神官時代の戒律のせいで童貞拗らせているだけなのです。


「しかしこいつがやらかしたらわしらまでリィンベルに何らかの仕置きをくらうぞ」

「よし、捨てよう」

「マカミ殿!?」


 しかしグライオスさんに自分にも被害が来ると言われた瞬間あっさり加担するマカミさん。

 そもそもマカミさん自身下戸なせいでいつもは酔っ払い共の後始末をする羽目になることが多いので、何気に不満がたまっているのです。


「男というのはいくつになってもガキじゃのう」


 そしてそんな男連中を見て胡乱な目で漏らすリィンベルさん。

 そりゃ貴方から見れば誰だってガk




 ――今日も日本は平和です。



 一方高天原。


「やっぱり冬はこたつでアイスだよね」


 そう言いながら某雪のような大福を頬張るアマテラス様。

 もちろんみかんもダンボール入りですぐ近くにセットされています。


「ツクヨミ。この子エネルギー無駄遣いしすぎじゃないの」

「はあ。でもまあ寒い地域では冬の方がアイスが売れるのは事実らしいですし」


 そしてアマテラス様の相変わらず緩い姿を見て苦言を呈するミズハノメ様と困ったように擁護に回るツクヨミ様。

 普段は姉に厳しいつっこみを入れているツクヨミ様ですが、他の神からのつっこみが来た場合は流石に追撃はせずに守りに回るようです。


「やっぱりなんだかんだ言ってアマテラスには甘いわねこのお姉ちゃん子は」

「もちろんミズハノメ様のことも敬愛していますよ」

「真顔で何言ってんのアンタ」


 きりっとした顔で何ら恥じ入ることはないとばかりに言うツクヨミ様と若干引いてるミズハノメ様。

 流石のイケメンの口説き文句も一応の姉には通じないようです。


「アンタやっぱりシスコンな上にロリコ……」

「ロリコンではありません」


 ミズハノメ様の疑惑にハッキリと否定の言葉を返すツクヨミ様と「やっぱりシスコンは否定しないんですね」と呆れるトヨウケヒメ様。

 今日も高天原は平和です。

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