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謎の肉

「今日も元気でごはんがおいしいです!」


 冒頭から謎の肉の丸焼きにかぶりついているのは、ウェッターハーン商会のミィナさんです。

 その小さな体のどこに入っているのかという勢いで、漫画に出てきそうな骨付き肉を頬張っています。


「……君何で魔界に居るのにそんな元気なの」


 一方こちらは肉には手を出さずパンをスープにひたしながら細々と食べているカガトくん。

 流石苦労人だけあって胃の扱いには慎重です。


「え? 私たちって異世界来るときに体の作りから変わってる可能性が高くて丈夫なんですよね?」

「俺は精神状態のことを言ってるんだけど」


 そう言って食堂の窓から厚い雲のかかった空を見上げるカガトくん。

 二人が現在いるのは魔王城近くにある宿の食堂。例によって商談に来たミィナさんの護衛としてカガトくんが駆り出されたわけです。

 カガトくんとしても主であるヴィルヘルミナさんの友人であり、何より同じ日本人であるミィナさんを守るのはやぶさかでもないのですが、正直この子護衛いなくても大丈夫だろと思っているのは内緒です。


「ああ、そういえば人間って太陽の光を長期間浴びないとうつ病になりやすいんでしたっけ。……つまりドワーフの皆さんには常にうつ病の危機が!?」

「ないない」


 陽気で豪快なドワーフたちが一斉にうつ病になっているのを想像し、いやないだろと手を振るカガトくん。

 ただでさえ地下にあって暗いドワーフ王国がさらに暗くなってしまいます。


「それで、今日はまた魔王さんに用事なの?」

「はい。予想よりも飛行系の魔物の皆さんが疲れ知らずに働いてくれるので、労働環境と賃金の見直しを」

「相談に来たんだ」

「終わらせました」

「終わっとんかい!?」


 予想外の言葉に似非関西弁でつっこむカガトくん。

 よく創作での方言が本場と違うとつっこまれることがありますが、吉〇新喜劇だって本場の関西弁とは違うのですから分かりやすさ優先で多少の誇張や違いは仕方ないのです。

 あと魔王様の関西弁が最近むしろ伊予弁に近づいているのですが、伊予弁かそれに近いものを全国区で知ってる人間なんて瀬戸の〇嫁を見たことある人間くらいだから気にしてはいけないのです。


「終わったなら何の用なの。というか勝手に終わらせていいもんなのそれ?」

「いえ、私も最初は現地に派遣されてる魔族の責任者の方と話していたんですが、皆さんちょろ……素直で聞きわけが良すぎるので一応魔王さんの詳細の報告を」

「一応聞いておくけど詐欺ってないよね?」

「そんなわけないじゃないですか」


 下手をすれば再び魔王軍との戦端拓くんじゃないかと戦々恐々としながら聞くカガトくん。

 それに対し心外だとばかりに憤慨するミィナさん。


「商売の最善はお互いが得をすることです。Win-Winの関係というやつですね。だから私が一番に考えることは相手をいかにして満足させるかということです」

「なるほど」

「そうすれば足元が疎かになり交渉が有利に進みます」

「俺の知ってるWin-Winと何か違う」


 花のような笑みで顔面パンチで気を反らしたところに足払いみたいなことを言い放つミィナさんに、やっぱり女子怖えと戦慄するカガトくん。

 そしてやっぱりヴィルヘルミナお嬢様は裏表もないし優しくて最高だなと無駄に忠誠心が上がるわけですが、ヴィルヘルミナさんは見た目に反してお人よしではありますが普通に裏表はありますしどちらかといえば策謀タイプです。

 そうでなければ親の七光りがあるとはいえ、いきなり皇帝陛下の近くに配置されて普通に仕事とかできません。

 本人が幸せそうなので何も問題はありませんが。


「まあそういう意味では魔王さんもちょろいからやりやすいんですけど」

「魔王さん逃げて超逃げてー!」


 ミィナさんが最早言い直しもせずちょろいと言い放つのを聞き、魔王様に逃亡を勧めるカガトくん。

 知らなかったのか? 魔王様は逃げられない。


 今日も魔界は平和です。

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