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マンホールで意図せずドリフト

「困ったなあ」

「困りましたなあ」


 大陸南部アルジェント公国のとある街。

 ウェッターハーン商会により都市開発が進み、人魚や漁師たちのために水路が張り巡らされたその街にて、海猿系マッチョなカオルさんと大公さんが揃って顔を曇らせていました。


「まさか水路が凍り付くとは」


 その言葉通り、二人の視線の先には表面が凍り付き船が通れなくなった水路の景色。

 これはこれで風情がありますが、街の住人にとっては大問題です。


「海は凍ってないのに何故水路だけ……」

「さあ? 循環せずに分離でもしたんじゃないですか」


 ちなみにこの現象に人魚たちも大困り……かと思いきや、凍った水路の上を滑り回りはしゃいでいます。

 流石は飯につられて呑気に陸の上に上がってきた能天気共です。


「あれ? カオル遊ばないの?」

「仕事したいんですがねぇ俺は」


 そんな能天気筆頭ディレットさんの言葉に苦笑しながら答えるカオルさん。

 しかしさすがのカオルさんも小舟を凍った水面から引きはがして浜辺まで担いで持っていくことは、できないこともありませんが疲れるのでやりたくありません。


「まあこんな寒波年に一度あるかないかなので、明日には溶けるのではないでしょうか」

「じゃあ今日はお休みっすね。よし遊ぶかディレット」

「よし来たー!」


 そう結論しディレットさんをカーリングの石みたいに片手で滑らせながら水路に突撃するカオルさん。

 一度遊ぶと決めたからには全力です。


「……相談したいことがあったのに」


 そしてカオルさんが水路の上に行ってしまい、しかし自分が行くのは恐くてどうしようもできず落ち込む大公閣下。

 今日も異世界は平和です。



「スケートがしたい」


 一方高天原。

 今日も元気に他人に影響されまくってる主神が、元気よく手を上げて弟に宣言しました。


「はいはいスケートですねスケート」


 そして最近おざなりな対応がデフォルトとなりつつあるツクヨミ様。

 でも実は姉に頼られるのが嬉しい安定のシスコンです。


「しかしいきなりスケートですか」

「ふっ。流石の私も学んでるよ。そう都合よく氷の神とかいるわけないってね!」

「いえ、居ますよ」

「居るの!?」


 以前にも述べた通り、冷凍庫の開発される遥か以前から人間は何らかの形で氷を保存しそれを利用していました。

 日本でも天皇の命により氷の神を祀り氷室を備えた神社が建立されています。


「じゃあ琵琶湖凍らせようよ」

「さらっと極大環境破壊宣言しないでください」


 居ると分かった途端遠慮がないアマテラス様につっこむツクヨミ様。

 一見無茶言ってるように見えるアマテラス様ですが、八束水臣津野命やつかみずおみつぬのみことという神様が「国土足りないな。そうだ持って来よう!」と他所から土地引っ張って来てたりと、神様がやることが大雑把なのはある意味仕方ないのです。


「スケートなら田んぼの水でも凍らせればいいでしょう」

「そんな田舎のスケートリンクみたいな」

「田舎でしょうが高天原は」


 ツクヨミ様によるまさかの高天原田舎宣言。

 ちなみに田んぼを凍らせたスケートリンクは実在し、観光の目玉となっていたりもします。


「うー、仕方ない。田んぼで我慢する」

「よろしい。転んだ際にうっかり発熱して氷溶かしたりしないようにしてくださいね」

「私そこまでドジじゃないもん!?」


 ツクヨミ様の注意に憤慨するアマテラス様ですが、フラグがビンビンに立ちまくっています。

 ちなみにうっかり発熱はしませんでしたが、スケートやってると聞きつけたスサノオ様が現れ散々遊んだ後に泣かされ、ツクヨミ様が跳び蹴りくらわせることになりました。

 今日も高天原は平和です。

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