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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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異世界オネエ物語4 そして伝説へ…

「伝説の剣?」

「ああ。この王宮の地下に封印されており、選ばれし者が現れる時を待っていると言われている」


 主であるハインツ王子の言葉にオネエは見た目渋く悩みつつ、内心で「胡散臭いわあ」と疑念を持ちました。

 伝説の剣と言えばファンタジーのお約束ですが、そんな重要アイテムがこんな身近に封印されてるのはお手軽すぎます。


 ちなみにカトリックの人に「ヴァチカンの地下には伝説の武器的な聖遺物があるんだよね?」と聞いたら「あるかボケェ!?」怒られたので注意しましょう。

 でも日本では神社や寺に伝説の剣やら英雄の武器が普通に安置されてたりするので、聞いても問題ありません。

 理不尽ですね。


「ユキならば伝説の剣の主になれるのではと私は思うのだ。そなたの手にどんな武器も馴染まぬのは、伝説の剣を手にするためではないのかと」


 そう王子は言いますが、実際はオネエの力がクー・フーリンさんも笑うしかないくらいぶっちぎりなだけです。

 伝説の剣を手にしても、その瞬間伝説を終えて新たな伝説が始まりかねません。


「そこまでおっしゃられるのならば、剣の選定を受けましょう」


 しかしそんな疑念は表に出さず、王子様の前なので紳士としてふるまうオネエ。

 その騎士の模範のような姿に王子様の評価が鰻上りです。


「本当にユキは私には勿体無い騎士だ。そなたがグレイスの伴侶になってくれれば、私も安心できるのだが」


 そして鰻上ったせいで王子からお見合い好きのおばちゃんのような攻撃が誘発されます。

 嫉妬を欠片も見せず恋敵に想い人を勧める王子は男の中の男です。

 でも残念ながら目の前にいるのは男ではなくオネエです。


「誠に遺憾ながら、私は忠義の剣こそ殿下に捧げましたが、剣を預けるは亡き妻のみと定めております。グレイスには私のような女々しいオネエなどよりも相応しい者が居りましょう」


「というか潔く諦めてないでさっさと口説きなさいよヘタレ」という内心はおくびにも出さず、オネエはきっぱりと拒否します。

 オネエにとってグレイスは可愛い妹分なのです。

 そのグレイスがオネエに女らしさについて駄目だしされて日々凹んでいるのは内緒です。


「そうか。ならば私も重ねては言うまい」


 しかしそんな内実を知らない王子の中でオネエはもはや理想の騎士と化しています。

 まったく罪作りなオネエです。



 伝説の剣が封印された広間は竜が守護しており、封印を解き伝説の剣を手にしない限り生き残る術は無い。


「……まあユキには関係の無い話だったな」


 念のため同行したグレイスの目の前には、オネエに頭をぶん殴られてノックアウトされた銀色の竜の姿。

 伝説の剣の使用が前提の番も竜殺しなオネエの前ではチワワも同然です。


「それで、これが伝説の剣ね」


 オネエとグレイスが広間の奥へ行くと、祭壇のようなものの前に台座に刺さった一振りの剣がありました。

 刀身は鏡のように美しく、柄には魔力のこめられた美しい宝石があしらわれています。

 なるほど。伝説と呼ばれるに相応しい剣です。


「なるほど。抜けないな」

「我侭な剣ねぇ。さて、王子様の目利き通り私に抜けるかしら……」


 グレイスが試しに抜こうとしてみましたが、剣はびくともしません。

 それを確認しオネエは剣の柄に手をかけると、全身の筋肉を膨張させ渾身の力を込めます。


「ふぬああああああああ!!」


 地声です。野太いです。オネエが本気モードです。

 そのあまりの男らしさにグレイスも胸を手に当て乙女モードです。


「あ……」


 そしてオネエの覚悟に応えるように小さく何かが砕ける音がして――


「抜けた!?」


 ――伝説の剣はオネエの手の中に納まりました。


 ……刃先に重そうな台座がひっついたまま。


「お約束!?」

「あらやだ。ちょっと離れなさいよもう」


 足を台座にかけて引っ張るオネエですが、剣と台座が分離する気配はありません。

 どうやらオネエは剣には選ばれませんでしたが強引に剣をぶち抜いたようです。

 意地でも台座から離れない剣から「これ以上貴様の好きになってたまるか」という執念すら感じます。


「ってまずいぞユキ! 竜が目を覚ました!」


 そしてそんなこんなしている間に、ノックアウトされていた竜が起き上がります。

 しかしオネエは伝説の剣と格闘中。グレイスは時間を稼ごうと自分の剣を抜きますが、それも徒労に終わります。


「……え?」


 それは一瞬のことでした。

 グレイスが竜に立ち向かう刹那、オネエが飛び出し竜を一閃の下に打ち倒したのです。


 その手には伝説の剣。

 剣を振りぬいたその姿は聖画のような美しさと荘厳さに満ちていました。


 ……刃先に台座が付いていなければ。


「抜けてないし!?」

「ちょっとグレイス凄いわよこれ!? 私が全力で振りぬいても折れないし重さも良い感じだわ!」

「え? あっ、うん。そうか。良かったなユキ」


 呆気にとられるグレイスに対し、初めてまともに扱える武器を手に入れてテンションマックスなオネエ。

 どうやらオネエには台座リミッターが付いた状態でようやく相応なようです。


「でも選ばれなかったからな。ちゃんと元に戻そうな」

「えー、良いじゃないこのまま持っていっても」

「やめてくれ。割と切実に」


 素手で竜を倒す騎士も騎士らしくありませんが、伝説の剣(鈍器)で戦う騎士も大概です。

 一周回って冷静になったグレイスに諭されて、オネエは渋々伝説の剣を元の場所に戻すのでした。


 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「伝説の剣かぁ。ロマンだねえ。私もこうアマテラスの剣的なの作ろうかな」


 定期的にオネエをウォッチングしていたアマテラス様は伝説の剣に興味津々のようです。


「作らなくてもあるでしょう。草薙の剣とか」

「だってあれ地味だし」


 三種の神器の一角がまさかの地味呼ばわりです。

 しかし草薙の剣は一振りで三千町(三千メートル)四方をなぎ払ったともされるので全然地味じゃありません。

 しかも一説にはヤマトタケルさんの手から離れて勝手に薙ぎ払ったそうです。

 何それ恐い。


 ちなみに一度盗まれましたが、勝手に元の位置に戻ったり追い詰められて捨てようとしたら逆に身から離れなくなったりして、盗人を恐怖のズンドコに陥れたりしています。

 ついでにその後盗難対策のため宮中で保管していたら「はよ元の場所戻せや」と時の天皇を祟ったりしています。

 我侭ですね。


「そうだ! あの人異世界に行ったのに何のフォローもしてあげてなかったから、私のお手製の壊れない武器をあげれば……」

「手がつけられなくなるから止めてください」


 気まぐれでオネエにアマテラス様から武器が授けられそうになりましたが、今日も冷静沈着百合好きなツクヨミ様によって阻止されました。


 今日も高天原は平和です。

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