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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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魔王様と勇者様

 魔王の居城である魔王城。

 魔王様の趣味のトラップで正面玄関が使えなかったり、中庭に魔王様が趣味で家庭菜園始めちゃってるその城に、魔族の幹部たちが集まっています。

 その理由は――


「では、これより『第八回どうやったら人間と仲良くなれるか会議』を始めます」


 ――なんでやねん。


 魔王様のお言葉に集まった魔族たちが内心でつっこみをいれました。

 口には出しません。出したら関西人な魔王様によるつっこみ返しが来るからです。

 年期の入った魔王様のつっこみは必殺なので、いくら魔族でもくらったらただではすみません。


「……何でだ?」


 つっこみ入りました。

 勇者です。比喩ではなく本当に勇者です。

 癖ッ毛がいかにも勇者な勇者から実に勇者なつっこみが入りました。


「だって平和が一番やん」


 さすが日本人魔王。魔王なのに平和主義です。


 平和主義というより事なかれ主義な気もしますが、日本人は観光先で問題が発生してもクレームつけずに黙って帰っちゃうくらい事なかれなので仕方ありません。

 ちなみに海外の観光業界では、日本人は上客なのに不満があると無言で去り二度と来なくなるので妖精さんと呼ばれていたりします。

 ファンシーですね。


「というか何故俺はこんな会議に参加させられている?」

「だって人間の意見聞きたいのに勇ちゃん以外来てくれんし」

「俺は別に会議に参加しに来たわけではないし誰が勇ちゃんだ!?」


 勇者様の怒濤のつっこみ。

 その恐れを知らない戦士のような振る舞いに魔族たちも思わずアンインストールです。


「納得いかん! そもそも何故魔王様は人間ごときを気にかけるのですか!?」


 ――ちょ、おまっ!?


 空気を読めないサイクロプスさんの言葉に会議室の空気が止まります。


「……」


 対する魔王様、無言のまま笑顔。

 そしてそのまま音もなく机に飛び乗ると、座っているサイクロプスさんの頭を両手で挟みます。


「私は元人間やと何回言うたら覚えるんやこの脳筋〜?」

「いだだだだだ!? 割れる!? 頭が割れる!?」


 そのまま抱き締めるようにサイクロプスさんの頭を締め付ける魔王様。

 ある意味幸せ技です。名付けて魔王ブリーカー。

 死ねぇ!


「魔王を召喚するのはまあ分かる。そんなぽっと出を王様にしてええんかとつっこみたいけど我慢しよう。……でも何で私やねん!?」

「ギニュア!?」


 魔王様が叫ぶと同時にサイクロプスさんの頭が締め上げられて瓢箪みたいになりました。

 人間だったら死んでそうですが、サイクロプスさんの頭の中は筋肉なので問題ありません。


「しかも何で髪赤くなってんねん!? それはまだしも何で角生えてんねん!? 牛か? 牛なんか? なら胸も牛並みになれやコラァ!?」

「……」


 魔王様の怒りが明後日の方向に向かい、サイクロプスさんが動かなくなっています。

 大丈夫。痙攣してるからまだ死んでません。多分。


「あら、魔王様の慎ましい胸も素敵よ?」

「黙れ百合吸血鬼」


 幹部の一人である吸血鬼ミラーカさんのフォローをぶったぎる魔王様。

 吸血鬼の標的は美女と相場が決まっているので百合なのは仕方ありません。

 魔王様が女の子を殴れないのを良いことに、何度も夜這いをかけているのは内緒です。


「まあとにかく、魔族と人間がどうすれば仲良くなれるか私は徹夜で考えた!」

「いや、今は魔王様も夜行性ですよね?」

「私と勇ちゃんが結婚すればええんやない!?」

「誰かこの魔王止めろ!?」


 とち狂った魔王様のお言葉にデュラハンさんのつっこみが冴え渡ります。

 というかもう魔族にまともな人はデュラハンさんしか居ません。

 ミラーカさんの前任であるグラウゼさんの復帰に期待したいところです。


 そしてある意味プロポーズされた勇者様は……。


「……すまない」


 真顔です。マジ拒否です。もう冗談はその胸だけにしろと言わんばかりです。


「……気まずそうに断んなこのボケ殺しぃ!?」


 魔王様逃走。

 どうやら魔王からは逃げられませんが魔王は逃げられるようです。

 理不尽ですね。


「……今のはボケだったのか?」

「……その割りには涙目でしたが」

「そういう事にしときなさい」


 ……今日も魔界は平和です。



 一方日本は安達くんの家。


「朝じゃぞ起きろ」

「吸血鬼に朝起きろとか鬼か貴様」


 ノックも無しにドアを開け放ったリィンベルさんに、布団を全身にかぶり蝸牛状態なグラウゼさんが胡乱な目を向けます。


「シーナが朝食を作ってくれておるのに、まさか食わんつもりか貴様?」

「食事というなら血をよこせ。出来れば乙女の」

「出番じゃぞミィちゃん」

「猫の血はいらん!?」


 グラウゼさんのリクエストに応えお座敷猫のミィちゃん(三毛)を呼ぶリィンベルさん。

 猫原理主義者から鬼と呼ばれかねない非道な所業です。


「くっ、こんな女に隷属する羽目になるとは。それもこれもあの忌まわしい太陽神が!」

「そう言うでない。ほれ、アマテラス様の慈悲じゃ」

「何が……!?」


 リィンベルさんが放り投げ布団の上に落ちたものを見て、グラウゼさんが絶句します。


「これは私の……!」

「『娘さんからのプレゼントは返してあげて』という嘆願が山のようにアマテラス様に届いたらしくての。この国の民とアマテラス様に感謝せいよ」

「……ふん。甘いやつらだな」


 鼻をならし悪態をつくグラウゼさん。

 しかしやはり娘からのプレゼントが戻ってきたのは嬉しいのか、そっと首飾りに手を伸ばし……。


「ギヒャア!?」

「何じゃ!?」


 ……雷にうたれたように痙攣し悲鳴をあげました。


「な、何故……?」

「何が……ああ、なるほど。アマテラス様が預かっていたうちに加護が宿ったようじゃな」

「なっ!?」


 太陽神の加護。

 人間が装備したら一定時間毎に体力が回復しそうですが、吸血鬼なグラウゼさんには継続ダメージにしかなりません。

 ご褒美が一転最悪の嫌がらせに早変わりです。


「……ま、負けるかー!?」


 しかし娘大好きなグラウゼさん。

 首飾りをガシッと掴むと、勢いよく首にかけます。


「ま、負けん……ミラーカ……私はあっ……!」

「……愛じゃの」


 愛ゆえに苦しむグラウゼさんに呆れ……もとい畏怖の目を向けるリィンベルさん。

 今日も日本は平和です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 勇ちゃんって、武器屋◯お姉さんの所のキャラじゃ? 武器屋の◯姉さんの。 ま、まあ、ばれてへんみたいやし、良いんやろか?
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