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熱すぎる自動販売機の唐揚げ

 自動販売機。

 お金を入れることで自動で商品を購入することができ、飲料水だけでなく様々なものが売られている便利な機械ですが、その起源は古代エジプトにあるとされています。

 硬貨を投入するとその重みで弁が開き聖水が出てくる。

 単純ながらも画期的な装置です。


 日本はその自動販売機が世界でも特に多い国であるとされており、自動販売機を見かけて十数メートル歩けばすぐに次の自動販売機を見かけることすらあるほどです。


 つまり夏場に暑さのあまり冷たいものを飲んでも、歩けばまたすぐに暑くなりそこには新たな自動販売機が。

 販売メーカーの卑劣な罠です。


「……ヤヨイさん。あれフェリータさんですよね」


 そしてそんな自動販売機の前を通りがかる学校帰りのヤヨイさんとエルテさん。


「……」


 そして道路の端っこで干からびかけているフェリータさん。

 よほど余裕がないのか足の変化が解けて魚に戻っています。

 このままでは日本名物人魚のミイラの本物ができてしまいます。


「何故こんなところで行き倒れてるでござるか」

「人魚だから陸上では燃費悪いとかでしょうか」


 目の前で人が倒れてるのに慌てず騒がずとりあえずつっついてみる女子二人。

 一見非道なようにも見えますが、割と日常茶飯事なので仕方ありません。


「……み、みず」

「何というお約束なふりでござろうか。しかし拙者生憎とミミズは持ち合わせてはいないでござる」

「持ち合わせてたら恐いですよ。ミミズは置いといてヤヨイさん水出せませんか? 私自然干渉系の魔術は苦手で」

「拙者精霊系の魔術は得意でござるが、水属性の精霊とは後天的にちと相性が悪く……」

「そんな後天的に精霊と相性が悪くなるはずが……あ」


 魔術適性が後天的に変わるはずがないと言おうとしたエルテさんでしたが、ヤヨイさんが水属性と相性が悪い原因を察して言葉を止めます。

 誰にだって触れられたくない過去はあるのです。

 ……未だ目覚めていない貴様らには分からないだろうがな!


「丁度自動販売機ありますし何か買いましょうか」

「でござるな。後でフェリータ殿に請求するでござる」


 とりあえず目の前の干物のために自動販売機から水分を購入することにした二人。

 エルテさんが見た目に似合わない渋いがま口の小銭入れを取り出し硬貨を投入していきます。


「それにしてもこの自動販売機は便利でござるな。拙者たちの世界にもあればよかったのでござるが」

「私たちの世界だと設置しても強奪されますよね」


 冒頭で日本には自動販売機が多いと書きましたが、その理由の一つは人気のないところなどに設置しても荒らされたり中身を盗まれたりしないからだと言われています。

 日本人ならそれを聞いても「またまた御冗談を」と言いたくなるかもしれませんが、海外の治安の悪いところだと自動販売機を設置したら冗談抜きで破壊されて中身持っていかれます。

 というか比較的治安がいいところでも人目がなければ持っていかれます。

 喫茶店でバッグ席においてトイレに行けるのとか日本くらいなので、海外に行くときは本気で周囲を警戒して気を抜かないようにしましょう。


「フェリータさん飲み物ですよー」

「う……あ……ゴボォ!?」

「フェリータ殿が女子にあるまじき顔と声を!?」


 そうして出てきた商品を仰向けになったフェリータさんに飲ませたエルテさんでしたが、そのフェリータさんが白目むきながら勢いよく口から飲み物を吹き出しました。

 どうやらフェリータさんは人魚ではなくマーライオンだったようです。


「何飲ませたでござるか」

「え、水ですけど……」


 そう言いながら持っていたペットボトルをマジマジとみるエルテさんでしたが、何かに気付くとてへと可愛らしく首を傾けました。


「よく見たら炭酸水でした」

「鬼でござるか」


 疲れてる人に炭酸ダメ。絶対。


「よく振ったら炭酸抜けるでしょうか」

「買い直すという選択肢はないでござるか」

「……み、みず」


 暢気に炭酸水をどうするか悩む二人と、死にかけているように見えてまだ割と余裕があるフェリータさん。

 今日も日本は平和です。

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