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焼き茄子の皮が微妙に剥きづらい

 茄子。

 インドが原産で日本には中国を通じて千年ほど前に伝わったとされる野菜ですが、昔は貴重であり江戸時代に入るころまでは庶民の口には滅多に入らなかったとされています。

 煮てよし焼いてよし揚げてよしと様々な料理にあう茄子ですが、体温を下げる効果があるので食べすぎには注意しましょう。

 秋茄子は嫁に食わすなというのは嫁を気遣ったものだという説もあるのです。


「というわけで茄子の天ぷらを作ります」

「どういうわけだ」


 ケロス共和国のとある農村。

 相変わらずフリーダムに農作物を作っているアスカさんが、本日の収穫物を早速食べるべく油の準備を始めています。


「とりゃー!」


 そしてそのわきで菜箸を両手に持って、七輪の上の茄子をひっくり返しながら焼いてるスクナヒコナ様。

 まるで二本の槍を巧みに操り竜へ挑む勇者のような箸捌きです。


「というかその新鮮かつ大量の油どっから持ってきた」

「ふっふっふ。何を隠そうこれは菜種油。菜の花を育てたのにはこういう目的もあったんだよ!」

(あ、嘘だこれ)


 ドヤ顔で言うアスカさんですが、実際そのつもりなら種植えた時点でそれこそドヤ顔で説明するので後付けの理由だと看破するサロスくん。

 周囲が異常な中無駄に冷静なせいで観察眼と推理力が磨かれているようです。


「しかし暑いのに天ぷらとかよくやるな」

「暑いのに炭火のそばで暴れまわってるおまえが言うな」


 焼き上がった茄子をぶっ刺して掲げているスクナヒコナ様につっこむサロスくん。

 焼き茄子は美味しいのでスクナヒコナ様がハッスルするのも仕方ないのです。


「というかおまえそれ全部食うのか?」

「は? 茄子一本くらい余裕だろ」

「いやおま……うん。もういい」


 言ってることはおかしくないけれど、実行するには体積がおかしいスクナヒコナ様につっこもうとして、以前体積と質量無視して米出してきたことを思い出し諦めるサロスくん。

 神様だからね。仕方ないね。


「サロスくん衣なくなる衣ー!」

「あーはいはい」


 一方マイペースに天ぷらあげてたアスカさんの救助要請に応えて衣を作り始めるサロスくん。

 今日も異世界は平和です。



 一方アスガルド。

 オーディン様が座る玉座の前に佇むアマテラス様とゼウス様。そしてその三人の中央に後ろ手に縛られて転がされている一柱の神。


「うん。何この扱い」


 主神三人に囲まれた状態でも見た目余裕そうに笑いながら言う少年。

 まあ大体の人が想像ついてるでしょうが、先日異世界問題の元凶の一柱と判明したロキ様です。


「ロキ。神妙に縄につけ」

「もうついてるんだけど。というか何この紐。さっきから本気で解こうとしてるのにビクともしないんだけど」

「それはグレイプニルだ」

「馬鹿な」


 自分の息子を拘束している紐だと言われ、真顔で驚くロキ様。


「え、でもグレイプニルってもう材料ないから作れないでしょ?」


 グレイプニルはロキ様の息子である魔狼フェンリルを拘束する紐であり、ドワーフの手によってつくられましたが、その材料は猫の足音だの魚の息だのといったもうこの世には存在しないものなので、確かにもう一度作ることは不可能に思えます。


「フェンリルにおまえの親父ふんじばるから少しほどいて持ってくぞと言ったら、大人しく協力してくれたぞ」

「おのれフェンリル」


 まさかの息子の裏切りに恨み節を放つロキ様。

 でも誰も同情しないどころか何人かは確実に指さして「ざまぁ」と笑うある意味自業自得です。

 あと神に災いもたらす狼解放して大丈夫なのかと心配する人もいるでしょうが、このゆるい世界観でわんわんがそんな恐いことするはずないので大丈夫です。

 テュール様の右腕?

 ……嫌な事件だったね。


「で、何か言い訳はあるの?」


 オーディン様とロキ様の漫才もとい話が終わったところで、胡乱な目を向けて言うアマテラス様。

 今回の異世界騒動で一番迷惑被ったのは日本だから怒るのは当然です。

 一話目の時点で女神アマテラス様怒ってなくね? と言われてから二年半越しのタイトル回収です。


「面白そうだからやった。反省はしてない」


 そして安定のロキ様。

 悪友のトール様に割とマジで殴り殺されかけたことがあるのは伊達ではありません。


「……よーし燃えちゃえー!」

「ここでやるな!?」

「ハッハッハ。面白いやつだな」


 反省の色零なロキ様を誅するべく熱を発しながら発光し始めるアマテラス様と焦るオーディン様。

 そしてロキ様の開き直りっぷりに感心しながらもちゃっかり退避するゼウス様。


 その後ヴァルハラ宮殿が光に包まれ主神と悪戯神が焦げましたが、それ以外には特に被害がなかったのでアース神族の面々も深くは気にしなかったそうです。

 今日もアスガルドは平和です。

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